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14少女漂流記  作者: shiori


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第二十四章「舞い降りた救世主」3

 羽佐奈と玉姫、それに友梨も加えた三人は一時的に神社へ身を寄せる人々から感謝と歓迎を受けることになった。


 神社に暮らす望月家の神主も娘の麻里江から人を呪い、時に命までも奪うゴーストの存在は聞かされていたが、この目で実際に目の当たりにするのは初めての事だった。


 その禍々しさや恐怖感はとても刺激的だったようで、自分達では退治できないと分かると、一層偶然にも訪れた三人への感謝の気持ちは大きいものになった。


 昼下がりの時間、そろそろ旅疲れを感じ始めていた二人は玉姫から街の現状を聞くため、縁側に並んで座り、好意で貰った限られた物資である茶菓子に舌鼓を打ちながら話しをした。


「本当に……街の外から来たんですか?」


 当然、玉姫は街の外からやってきた羽佐奈と友梨の二人に驚かされた。

 実力を最初に示されてしまったために、信じるしかなかったが、それでも信じられない気持ちだった。


「ここまで無事に来ることが出来たのは友梨の高性能なファイアウォールのおかげですけどね。


 さすがに突破するのは容易なものではなかったので、二人で来るのがやっとでしたが、残念なことにこれまで街の状況を確かめ、救助のために向かった人達は一人も帰ってきていませんでした。


 ですから、心得のある私たちでここまでやって来たというわけです」


 お互いゴーストの存在を知る超能力者であることを理解できたこともあり、会話はテンポよく進んだ。


「そうでしたか……こちらから外に出ようとした人も一人残らず帰って来れていませんので、条件は同じなんですね。


 二人がとても優秀な魔法使いだとはっきり分かりました。それも、まさか赤津羽佐奈さんが魔法使いだなんて……」


 玉姫はドラマ出演や報道バラエティーのコメンテーターなどをする赤津羽佐奈のことを当然、著名人であるため知っていた。

 それは、特別ファンでもなく子役時代のことまで知っているわけではなかったが、探偵事務所で働く活動的な女性で写真集まで出している美人であることは知っていたのだった。


「うふふっ……私の事、知っていてくれる人に会えて嬉しいわ。

 もちろん、あなたのように勇敢なこの街の魔法使いが無事であることもだけど。

 やっぱり……この異変の元凶はゴーストなのかしら?」


 羽佐奈は自分の知っている人に出会うことは出来て嬉しくなりながら、さらに話を続けた。


「それはまだ……はっきりとは誰も分かっていないと思います。


 でも、この街にも上位種のゴーストを倒すほどの優秀な魔法使いがいますので予測は立てています。

 恐らくこれほどの規模を引き起こしていることから、上位種のゴーストの仕業であると考えられています。

 

 目的が何かは分かりませんが、しかし、人を憎んでいるんじゃないかと思います。既に多く人が犠牲になって亡くなっていますので」


 これまで多くの人が亡くなっていく姿を若くして目の当たりにしてきた玉姫は、どうしようもなく苦しい気持ちになりながら言葉を続けた。


「そう……それは辛いわね。早くこの街を結界から解放しないと」


 話しを聞いた羽佐奈は敵の強大さを感じた。

 この異変の原因を作った犯人が分かっていない以上、簡単にはいかないと羽佐奈も友梨も理解した。


「それはそうと、あなたは稗田黒江さんはご存じないかしら? アリスプロジェクトのメンバーの一人で魔法使いなのだけど」


 羽佐奈はここまでで舞原市の現状が分かってきたところで、黒江の事を聞いた。玉姫は黒江の名前が飛び出したことで身体をビクっとさせるほど驚かされたが、返事を返した。


「アリスプロジェクトというのは存じ上げないですけど、稗田黒江さんなら知っています。今年の四月から私の母校で教師をしていますので。

 その方なんですよ、優秀な魔法使いのチームを率いているのは」


 玉姫は確かな繋がりを感じ取り、目の前にいる初めて会った羽佐奈が救世主になるかもしれないと、ようやく確信へと変わりつつあった。


「ありがとう、私の思っている人に間違いないわ。

 まだ無事なら会いに行きたいわ、きっと力になれると思うから」


 眩しい笑顔を浮かべて、ドラマのセリフを口にするように麗しく話す羽佐奈。

 絶望しかなかった状況に一筋の希望が舞い降りた。そんな風に玉姫は感じ、胸が熱くなった。


「そうですか。分かりました、私が責任を持って案内します。

 凛翔学園にいらっしゃいますので」


 息を吹き返したように明るい声で玉姫は言った。

 絶対にこの人を黒江の下まで連れて行かなければと思った。


「看護師なんでしょ? 大丈夫なの?」


 凛翔学園という単語が飛び出し、間違いないと確信した羽佐奈は何とも清純な雰囲気の漂わせる薄ピンク色の制服に身を包んだ看護師の玉姫に聞いた。


「大丈夫です。私は魔法使いですから。特別に必要となれば自由な行動が出来ますので」


「あら、理解のある職場で働いているのね」


「まぁ、院長が超能力者を引き取った、なかなかに訳ありな方なので」


「ふふふっ……それは大変興味深いわね」


 多くの超能力を持った魔法使いの実在を感じ、羽佐奈はさらに気持ちが高ぶり、この舞原市に興味が湧いた。


 互いにゴーストと戦ってきた者同士、打ち解けるのは早かった。

 友梨はいつものように誰とでも仲良くなってしまう羽佐奈のコミュニケーション能力の高さを信頼して、口を挟むことなく任せた。それが、いつものお決まりのパターンにもなっていた。


 縁側で三人並んだひと時の癒しの時間。

 茶菓子にと置かれた三色団子とみたらし団子、それに冷たい煎茶を飲み、英気を養うと三人は立ち上がって稗田黒江の待つ、凛翔学園へと向かうことになったのだった。

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