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14少女漂流記  作者: shiori


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第二十三章「凛翔学園防衛戦」5

 閃光が迸り、風が吹き抜ける。そして、茜と雨音の視界を明るいミントのような緑色のワンピースを着た、白く美しい肌をしたブラウンカラーの髪を靡かせる女性が一瞬、彼女たちのそばを横切った。


 夢か幻のように見えた、刹那の一瞬。目の前に迫っていたシャドウが断末魔を上げ次々と天に召され消え去っていく。



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 おしゃれな服装に身を包んだ、一度通り抜けた麗しき女性がふわりと優しい香りを乗せて近づき、声を掛けるため優美に目の前に戻って来る。

 背中を向けたまま顔だけを二人の方に向ける女性のその姿には大人の色気が漂っていて、澄んだ声で潤いのある唇を開き話しかけてくれる。

 この状況下で明るく励まそうとしてくれている姿に、茜と雨音はとても強い女性であることを感じ取った。

 


赤津(あかつ)羽佐奈(はさな)さん。どうやってここまで……」



 凛音の手を引き校舎の中に入っていた黒江は颯爽と現れた救世主の姿が目に入った。信じられないほど突然過ぎることに一気に周りの雑音が気にならなくなり、窓に手を当て赤津羽佐奈(あかつはさな)で見間違いないことを確かめた。


 黒江は知っていた、赤津羽佐奈(あかつはさな)がとても優秀な超能力を持っていることを。ゴースト退治に誰よりも長けていることを。

 


 驚きはこれで終わりではなかった。


 赤津羽佐奈(あかつはさな)と共に現れた三浦友梨(みうらゆり)によって茜と雨音を包むように球体の結界が現れ二人を守護すると共に、同行する玉姫と協力してシャドウの動きを封じ始めたのだ。


 友梨と玉姫、少女の動きとは違う、冷静な二人の迷いない連携により動きが鈍くなり、絶好の的となったシャドウを羽佐奈は迷うことなく次々と光を纏う剣で消滅させていく。


 優雅に(まい)を踊るように、(うた)を歌うように、心地いいほどに躍動する羽佐奈の疾風迅雷(しっぷうじんらい)の働きでシャドウは消滅していき、瞬く間に茜たちは危機を脱していく。


 瞬きすることも忘れるほど、これまで経験したことない常軌を逸した動きに、茜と雨音はシャドウが目の前からいなくなるまで呆然として声も出せなかった。



「随分、統率は取れているようだけど、私の敵ではないわね」


 

 手を貸す必要のない、むしろ痛手を負った自分達では邪魔にしかないほどに、到底及ばない強さで圧倒していき、シャドウを一掃した羽佐奈。


 羽佐奈を知る者にとっては当然の結果だが、初めて見るものにとってもその実力は目に入れたことのない凄みに満ちていた。

 


 気が付けば体育館の前に集まった魔法使い達。

 意識を失いかけていた茜はあまりに圧倒的な美しい戦いぶりに惚れ惚れすると目が覚めていき、見知らぬ女性二人と共に玉姫の姿があることに気付いた。


「玉姫先輩っ!!」痛みで身体は上手に動いてくれないが、傷ついた瞳で玉姫の姿を目にした茜が名前を呼ぶ。すると、球体をした結界が解かれすぐに玉姫は心配そうに茜に駆け寄った。


「ごめんね遅くなって。二人を案内するのに時間がかかって……」


 ハンカチを取り出し、左目から流れる血を抑える玉姫。  


「そんなことないです。命を救われました」


 先輩である玉姫の優しさに触れようやく安堵の表情に落ち着いた茜。

 その横で雨音はまだ落胆の表情から変わることが出来ないでいた。


 そうしている内に避難所の方まで手塚巡査がやってきた。

 そして、今の非現実的な戦闘風景を見ていたあまり、気になって顔を覗かせる避難所の人々に声を掛け、その場から動かないよう声を上げてくれた。


 ゴーストを初めて目にした人々の驚きようは様々だが、それを退治していく超能力を駆使する魔法使いの姿もこれまでの常識を覆すものだった。


 桜沢小学校のように大勢の犠牲者の発生は免れたため、大きな混乱まではいかないが、まだ全てのシャドウを倒し終えていないこの状況、まだ最悪の事態を避けられただけに過ぎなかった。


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