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14少女漂流記  作者: shiori


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第二十一章「クロージングファンタジア」8

「さぁ!! ハロウィンパーティーの始まりだよっ!!」



 上位種のゴースト、浮気静枝が根城にしている洋館を舞台に戦いは始まった。玄関ホールから階段を上った先にある踊り場から両手を広げ歓迎の声を上げる静枝。


 エントランス中央の赤い絨毯の上で険しい表情を浮かべる麻里江。天井にはシャンデリアがあり、ハロウィン仕様の装飾が施された洋館は、幽霊屋敷でありながら掃除が行き届き、豪華で綺麗な様子であった。


 静枝の背後に前回の戦闘同様、禍々しい黒い空間が姿を現す。

 そして、得意げに怪物の腕を出現させると、麻里江の身体目掛けて腕を伸ばした。

 赤黒く血管の浮き出た怪物の腕が迫り、危機が迫ると麻里江はジャンプするような仕草を見せ、天井近くまで身体を浮上させた。怪物の腕は麻里江が立っていた床を、赤い絨毯ごと抉り破壊していた。



「静枝さん……あなたがゴーストなら、私はなおさら負けられないわ。


 もう一度言うわ、千尋を返してちょうだい!!」


 

 千尋を取り戻すまでは帰らない覚悟を力強く口にして、麻里江は反撃を開始した。

 魔力を行使し、何もないところから光の矢を上空に出現させると、迷うことなく怪物の腕に目もくれず光の矢を銃弾のように静枝の身体目掛けて発射した。


 マギカドライブを発動して初めて出来た攻撃方法。だが、一度マギカドライブを開放したおかげで魔術行使に慣れ、マギカドライブ発動なしでも光の矢を自在に出現させ的確にコントロールして発射することが出来るようになっていた。


 ハロウィン衣装に身を包む静枝に連続して迫る光の矢。静枝は動じる様子もなく両腕から伸びる白い刃で光の矢を難なく斬り落として見せた。



「器用に魔術を扱えるようになったようですが、今の麻里江さんでは私には敵いません。無駄な抵抗を続けるなら、あなたの魂も千尋の魂と一緒に添えてあげますよ!」



 ゆっくりしている間もなく、怪物の腕が再び動き出し、麻里江に迫っていく。

 麻里江は意識を集中させ、簡単に腕一本で身体全体を握り潰せるほどに大きい怪物の腕を軽い身のこなしで回避した。それを見て、静枝はもう片方の腕も黒い空間から露出させ麻里江に向けさせる。


 一度でも摑まれば命の保障はない強靭な両腕が麻里江に襲い掛かる。

 

 それに対して麻里江は広いエントランスホールを利用して素早い動きで迫る怪物の腕を振り払っていく。

  

 

「そんな遅い攻撃、当たりはしないわっ!!」



 先ほどまで姉妹神楽を舞っていた疲れを感じさせない身のこなしで回避を続け、合間に光の矢を出現させて反撃を仕掛けていく。


 反撃を受け続けると、静枝の背後にある黒い空間の奥から低く野太い怪物の咆哮が唸りを上げ、ついにその姿を表に現した。


 ”グオオォォォ!!”と大きな振動と共に呻き声を上げ、身の危険を感じさせるほどに四肢を拘束する鎖に繋がれた怪物の姿。


 洋館のエントランスホールでは全身までは出て来ることの出来ないほどの巨体は圧倒的な存在感を感じさせた。



「麻里江さん……あなたが抵抗するから出てきてしまいましたよ。

 

 どうか彼の餌食になってください。随分と長い間焦らされたようですから」


 

 静枝の管理下から離れ、麻里江の身体を狙い迫って来る怪物の巨体。


 徐々に逃げ場を失いつつある麻里江だが、この時を窮地とは見ず、逆にチャンスと判断した。



「本当に醜い化け物の図体をしているのですね。


 でも、この時を待っていました。


 私には待っている実椿のためにも千尋の魂を連れて帰る使命があります。


 だから、今まで魔法使いとして経験してきた全てをもって、本気の一撃でその闇を祓います」


 

 瞳を閉じて、麻里江は巫女装束の中に手を伸ばし、宝石の付いたネックレスを取り出して、祈りを捧げるように両手で握った。


 ―――マギカドライブ起動!!


 心の中で声にした祈りが届き、宝石が輝きを放つと共に増大する魔力で辺りに強烈な風が吹き荒れる。


 長い黒髪を一つに結んだポニーテールが風で揺れる中、目を開いた麻里江は迷うことなく自分の周囲にファイアウォールを展開させ、同時にリング状に光の矢を中空に出現させた。

 

 必殺技であるマギカドライブの発動を見て、眉間にしわを寄せる静枝は怪物に指示を与え、結界を突破しようと両腕を向けさせる。


 輪っかに集中していくフォトンキネシスの凝縮した魔力で光が広がっていく中、怪物の巨大な両腕が結界を破壊しようとグッと力を込めていく。


 必死に結界を維持したまま、照準を向ける麻里江。

 イメージを現界化させ、砲撃の態勢を取っていく。


 そして、チャージを完了させた麻里江は、決死の一撃を黒い空間から顔を出す怪物に向けた。


「その程度の結界、早く壊してしまいなさいっ!!」


 思うように結界を破壊できない事に苛立ち、感情的になって怒気を強く声を荒げる静枝。

 予想外の力を発揮する麻里江に静枝は身動き一つ取ることが出来なかった。



「この一撃に全て込めて、天に還りなさい。

 

 最大出力、ライトニング……ブラスターっっ!!!!」



 フォトンキネシスの力を集束させた砲撃が、麻里江の願いに従い怪物の顔面へと襲い掛かる。


 魔力の限りを尽くした一撃により、周囲は光に包まれていく。


 視界を阻むほどの眩しさに両者ともに状況が見えなくなった。


 そして、徐々に光が収まっていくと、麻里江は次の動作へと移り、静枝目掛けて勢いよく駆け出した。


 静枝は眩しい光に包まれ、背後にあるはずの黒い空間が消えていることに気付くのが遅くなり、麻里江の接近を許した。


 マギカドライブによる必殺の一撃は静枝の召喚した悪魔の如き怪物を祓い、ついに仕留めたのだった。


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