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14少女漂流記  作者: shiori


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第二十章「霧の街へと」8

「お三方お忙しい中、わざわざありがとうございます。妻や娘と違って、私は滅多に外に出ない生活を送っていて、お恥ずかしい限りです」


 外に出ないと言葉にしたものの、話しぶりは自然で適度に身だしなみも整っている。妻や娘もいることからコミュニケーション能力は十分にあることが伺えた。


 羽佐奈は第一に舞原市に取り残されている稗田黒江とその娘、凛音の話題から入った。


 ”偽りのアリスの真相究明”と”舞原市で活躍している新しい魔法使い”のデータ収集のために四月から舞原市に教師として目的を隠しながら勤めることになった稗田黒江。


 その後、各地で魔法使いを苦しめてきた危険な上位種のゴースト、リリスと遭遇することになった魔法使いと共同でこれを討伐に成功。偽りのアリスの存在も明らかにした。

 そして、確かな成果を上げていた矢先、未曽有の異変に巻き込まれたのだった。

 長い出張にも似た、舞原市での教師生活は長期間続くものではないと計画されていただけに、厄災に巻き込まれたことは不運という他ない。


「三浦さんも監修しているゴーストデートベースによれば、リリスは魔法使いの能力も取り込んでいた厄介な上位種のゴーストで、Aランク相当でしたね。それを妻とその生徒達が討伐したとなると、魔法使いの生徒達もそれぞれBクラス相当はある能力者と言えるでしょう。

 無事であるといいのですけどね……」


 妻や娘と一緒に、魔法使いの生徒達の心配もする稗田博士。博士自身は霊感がなく、生体ネットワークを研究することでしか協力することが出来ないため、助けになれない現状を心苦しく思っているのだった。


「データベースにはついでで協力しているだけの形でありますが、羽佐奈が能力者で唯一のSランクに該当されているのは納得いってないんですよね。数値化された基準自体が曖昧過ぎるように感じて」


「それは他の人が厄介で回してきたゴーストを討伐してきたから……それも友梨の協力があっての事だから、友梨が不満なのは分かるのよね。確かに唯一のSランクだなんて言われても、誇らしくて嬉しい反面、困っちゃうわ」


 淡々とした口調で自身が協力するデータベースのことに触れる友梨とSランクと呼ばれると恥ずかしくなって頬を赤く染めてしまう羽佐奈。

 世界各地に出現したゴーストを危険度別にランク付けしたゴーストデータベースとそれを討伐した能力者は一緒にデータベース化されており、能力者にもランク分けがされている。


 簡単にこのランク分けを解説すると、ゴーストに関してはE~Cランクまでが一般的なゴーストであり、人の住処を脅かすほどに有害化した幽霊を表している。なおCランクには複数のゴーストが合体した厄介な融合体が名を連ねていて、特に優秀な能力者がこの対応に当たっている。

 Bランクからは主に上位種のゴーストをリスト化していて、必ずしも人類に敵対行動を取るものではないが、知性を持ち、擬態などを行う厄介な個体が報告されている。

 Aランク相当になると能力者である魔法使いを喰らい、能力を吸収した最大級に危険なゴーストがこれにあたる。これらの中には方法は不明だが伝説上の悪魔が現界化したと考えられている特殊なケースもあり、リリスはこれに該当するとされている。

 なお、ゴーストは生物の死後に発生する残り香、生きていた頃の原型を留めていない怨念の集合体である。


 能力者の方はゴーストよりも個人の人間に関わることであるため、大雑把なランク分けがされている。その理由は、心霊研究家やエクソシストとして専門的に幽霊に詳しい人が多いが、超能力に長けた人物など分類が様々でゴーストの討伐に一役買っているということ以外、共通点をまとめるのが難しい点にある。


 この中で羽佐奈はSランク、友梨はAランク相当に位置づけられているが、これは二人が都内のゴーストに限らず、他の能力者がお手上げになって助力を求めていた懸案にも対応を行ってきたからである。


 つまり、ランク分けに影響するゴースト討伐はポイント制となっており、討伐したゴーストの脅威が高ければそれだけ多くのポイントを獲得することが出来る。

 今のところ、免許制にもなっておらず、個々の能力を測る試験もなく、誰が優れた能力者であるか、能力者同士の比較などは厳密にされてはいないのだった。

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