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14少女漂流記  作者: shiori


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第二十章「霧の街へと」7

 今度は生体ネットワークの研究を続ける稗田博士、つまりは稗田黒江の夫である人物に会いに行くため、再びエレベーターに乗り込み、地上へと三人は向かった。


「あれでも野心家なのよ。本人は上手に隠してるつもりだろうけど、私の目は誤魔化せないから」


 生死を分ける決断をしてしまった以上、重苦しくなる空気の中、羽佐奈はエレベーターの壁にもたれかかったまま口を開いた。先ほどまで会話をしていた飯塚の事を言っている、それは同席していた友梨と司も察することが出来た。


「あの立場を得てやろうとしている事が物騒なものかは後の歴史が判断すること。本人は世の中を良くするために行動しているに過ぎないのでしょうね」


 無感情に等しい表情を浮かべたまま友梨は淡々と思ったことを述べた。

 友梨の言葉通り、どのように民衆が動くかも予測が付かない以上、多くの政治判断は正しい選択であるかの判断をするのは難しい。

 だが、決断が遅れれば遅れるほど、事態が悪化していく事だけは、誰もが分かることだった。


「そうね、いずれにしても日本で革新的な事を始めるのは難しいから、世界と共同してアリスプロジェクトという形で、世直しをする必要があるのよ」


 現状では表沙汰には出来ないことだが、上位種の出現など、討伐困難な事態にも直面する現在のゴーストへの対応の改善に繋がって来るため、長期的な目的でのアリスプロジェクト自体には羽佐奈は賛同している。そのため、協力できることはこれまで協力してきたのだった。


 しかし、今回の件で政府に対してどこまで踏み込んだ働きかけを飯塚は決断するのか、興味深いが羽佐奈にもそれは推測の出来ない未知数なところであった。


 生体ネットワークを研究する地上階まで上がり、そのまま三階にある稗田博士の研究室を三人は(たず)ねた。


「これはこれは……わざわざ私のところにまで来てくれたのですね」


 飯塚と同様、まだ三十代と若い稗田博士は三人が揃ってやって来るのを見ると慌てて歓迎した。

 黒いワイシャツに青いネクタイを白衣の下に着け、眼鏡を掛けた真面目な青年、それが稗田博士を見て最初に目につくイメージだった。


「今日、特にメインで話したかったお相手は稗田博士でしたので、面会をお願いしました」


 羽佐奈がお辞儀をして菓子折りの入った紙袋を手渡す。検問の際にも生真面目な警備員に中身のチェックをされたものだった。

 ちなみに中身は土産屋や百貨店で打っているストロベリーパイで稗田家の人々はこれを好んで食べている。

 稗田博士とはあまり会ったことはなくとも、魔法使いとして才を持ち、強い能力を発揮していた稗田黒江とは羽佐奈は親しかったので、間接的に交流があった。


 夫婦揃ってアリスプロジェクトのメンバーである両名。

 夫である稗田博士は生体ネットワークの研究者で計画にとって重要な中心人物として研究を任せられている。 


 生体ネットワークはやがて人類の導き手になる人工知能を持つアリスのために、人々の生きた記録そのものをビッグデータとして収集してアリスに送る役割を担う。アリスのお告げの正確性を高めるためには生体ネットワークを通じて人々の記憶から集めたビッグデータが必要不可欠なのである。

 そうした理由から、既存の情報に踊らされない生体ネットワークを使った情報収集にプロジェクト側は期待を寄せているのだった。


 一方、稗田黒江は優れた両親の血筋を引き継ぎ、霊体との適応も良好で精神が安定しており、半人半霊の魔法使いとして幼い頃から高い超能力を発揮していた。


 アリスの代行者として魔女の力を受け取ってからは、直接的なゴースト討伐には距離を置くことになったが、以前は羽佐奈と共にゴースト討伐を行ったこともあった。その際は高い干渉力で活躍を果たしており、羽佐奈もいずれ娘たちを自分の力で魔法使いに覚醒させることも可能性の一つとして考えているだけに、凛音を自分の力で魔法使いに覚醒させた黒江に深い関心を持っているのだった。

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