第二十章「霧の街へと」1
舞原市を覆い隠した霧の影響は、あまりにも非科学的で奇妙な現象であることから舞原市の外で暮らす人々にも蔓延していた。
原因不明であることは変わらないまま、日が経過するにつれて深刻な事態である可能性が報道では続けられ、一方でSNSや週刊誌では面白がるような無責任な投稿や真実味の薄い論説、陰謀論で溢れかえった。
科学が発展した現代社会では、原因不明のまま分からないことには不安が広がっていくものだ。
そのせいで現実にある深刻な事態から目を背けて陰謀論が生まれてしまう。
不安を解消したい人々の潜在的な欲求がある限り、それを求める人のために真実を語る嘘の情報は作り出されてしまうのだ。
当然、警察や政府は出来る限りの情報収集を行い、国民の不安を少しでも取り除くために調査を実施していた。
しかし、舞原市内にいる人が帰ってくることが出来ていない現状と同様に、霧が全体を覆う舞原市に入ろうと向かった人々もまた、誰一人として帰ってくることは出来ていなかった。
地上からもヘリコプターを使い、空からも調査が試みられたが、いずれも成果を上げていない。
こういった現状から舞原市に取り残された人々がどれだけいるのか、名簿作成も含めた実態調査をすべきであるという主張まで叫ばれ始めた。
インターネットや携帯電話、その他あらゆる通信機器を使っても連絡を取ることができない状況が続く舞原市。そこで暮らす人々の安否を心配する世論は絶えず強まっており、原因不明の異常気象と発表し続けることにも無理があった。
そのため、何らかの情報を隠蔽しているのではないかと、警察や政府に情報開示を含めた責任論に発展しようとしていた。
原因不明の異変発生から三日目、舞原市へと続く道路は危険であるため封鎖され、混乱は依然として続いていた。




