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14少女漂流記  作者: shiori


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Tips6「最後の祝祭」6

 避難所で迎える最初の夜は祝祭のようであった。

 

 普段は学生や教師、学校関係者しか訪れることのない学園に生徒の家族などの一般市民も訪れ、避難しなければならない現実に陥りながら賑やかであった。

 明日への希望を失くさないために、気を紛らわすように焚火を囲み、炊き出しをして、花火も打ち上がった。

 

 だが、そんな非日常な光景が続く長い夜が過ぎていく中で、賑やかだった空間も静寂へと近づいていく。

 炊き出しも終わり、黒江は月城先生が差し入れに持ってきた焼きそばを食べ終え、昨日よりもさらに肌寒さを増した夜風を浴びながら、煙草に火を付けた。


 二人が並んでベンチに座ったまま、白い煙が運動場へと向かって流れていく。煙のずっと先の方には未だに茜たちが残り、今の大切な時間を記憶に焼き付けていくように線香花火を楽しんでいた。


 黒江は明日が無事に訪れてくることを願いながら、ずっと気掛かりだった一つのことを思い出し、隣に座る月城先生に話しを切り出した。


「水瀬さんはまだ家から出て来ないのかしら」

「ソウネ、まだ落ち着かないみたいネ。周りに迷惑を掛けたくないから一人でいようとしているってところかしら」


 水瀬ひなつ、保健室によく来ていた眼帯を付けた病弱な少女のことを黒江は忘れてはいなかった。


 この異常が始まって以来、黒江はひなつに会っていない。学園にも通っていないという話も聞いており、心配になってしまうのは当然のことだった。


「どうしているのかしらね……」


 他人事のように呟いてしまう自分に黒江は苛立ちを覚えた。

 頭の中にひなつの柔らかい屈託ない笑顔が蘇ってくる。

 それは束の間に過ごした、保健室のベッドでの思い出だった。


 悲観的な想像をしたいわけではないが、新たな上位種のゴーストと交戦し、地震まで発生したこの異常な状況において、未だ顔を合わせていないことは黒江を不安にさせていた。


「ミス黒江がそんなに心配するなんて珍しいわネ。ちょーと感心したわ」


 月城先生にとっては心配症というほどでもない黒江がひなつにそこまでこだわる理由が分からなかった。


「そうね……その通りなのだけど、あの子は特別な何かを感じ取っている気がするから」


 リリス討伐の時に見せたひなつの秘めた力。それを知っているだけに、黒江はひなつが何を今感じているのか、気がかりになっていたのだった。


「電話も使えない状況となっては無事を確かめるには会いに行くしかないでしょうけど。ミス黒江、避難してくれているといいわネ」


 そう言いながらも、ひなつは家から一歩も出ることなく、この恐怖に怯えているのではないか、そんな嫌な想像が頭に浮かび、黒江は頭にこびり付いた不安を拭えなかった。

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