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14少女漂流記  作者: shiori


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Tips6「最後の祝祭」2

 炊き出しをしている運動場には大勢の人が集まっており、夜間の照明代わりにキャンプファイヤーが始まっていた。


 茜はスパイスが香るカレーライスの匂いに釣られ、凛音と月城先生の下を訪れた。


「凛音、ただいま! カレーライス、好評みたいだね」


 茜は艶のある綺麗な黒髪をポニーテールに結び、エプロンを付けて炊き出しをする凛音を真っすぐ見つめ話しかけた。エプロンはパイナップルやイチゴなどの果物がイラストされている水玉模様をしていて、可愛らしいデザインだった。


 夕食時ということもあるが、運動場に集まった避難生活を送る生徒やその家族はカレーライスを食べることで不安を取り除くと事ができているのか、どことなく穏やかな表情を浮かべていた。


「こんな時ですから、協力し合わないと、です。はい、茜先輩、お疲れ様です。どうぞ、お替りもありますから、いっぱい食べてくださいね」


 女神のような笑顔で凛音が湯気の上がるカレーライスの入ったカレー皿を茜に手渡す。

 戦場から帰って来たに等しい茜にとっては凛音の優しさは感涙を覚えるほどで、もし旦那様などと言葉を付け加えようものなら、完全に恋に堕ちてしまいそうなものだった。



「こんな時でも、凛音がしっかりしててくれて助かるよ。さすが先生の娘さんだね」



 茜は素直に凛音のことを褒めた。茜の言葉を聞き凛音はポッと頬を赤く染めた。



「褒められると恥ずかしいですね……皆さんの方が頑張っていますから、これはほんの気持ちです」



 茜は後から追いかけて来た雨音と一緒にテーブルの置かれた椅子に座り、凛音お手製オリジナルカレーライスに舌鼓を打った。


 数種類のカレールーを使い、甘めに作られたカレーライスは口に入れるとさらに食欲をそそる美味しさで、具材は基本となる人参や玉ねぎ、ジャガイモや牛肉に加え、南瓜や茄子、マッシュルームまで入っていて具材たっぷりで触感も楽しい新鮮な味わいに仕上がっていた。


「戦いの後に嬉しいご褒美だね」


 外で食べる新鮮な味に雨音はご満悦の表情で茜に言い、さらに一口カレーライスを頬張った。新鮮な野菜の旨味と甘みの後にやってくるカレールーの刺激的なスパイスが舌を楽しませてくれる。一口食べるたびに、スパイスが組み合わさった抗酸化作用により食欲を促進させてくれる味わいだった。


「うん、全員無事に帰ってくれて、こんなに美味しいカレーライスも食べられて、生きててよかったって感じ」


 茜は笑顔を見せながら言い、しみじみとスパイスの効いた美味しさを噛み締めた。


「私は先に部室に戻って着替えたかったんだけど」

「雨音、それは今更じゃない?」

「茜はもう少し周りの目を気にした方がいいと思うよ。これは誰からどう見ても目立つって」


 魔法戦士の正装に身を包んだままの二人。茜はもはや慣れてしまって気にもしないが、ヒラヒラのコスプレ衣装にしか見えないそれを着て人前で過ごすのは、雨音にとって奇異な目で衆人環視を浴びるに等しかった。


「月城先生ったら、ちょっと目立ち過ぎじゃない?」


 視界に映る、一際目立つ白衣姿の月城先生。


「そうだね、本当先生らしいけど」


 大らかな表情と性格でありながら、保健教諭とは思えないほど大きな胸と大きなお尻に包まれ、老若男女問わず魅了しかねない容姿をしている。


 そんな月城先生が陽気に焼きそばを振舞っているとあれば、人が集まってくるのは自然な流れだった。

 

「いやぁ……本当に凄いよね、何を食べたらあんなに立派な胸に発育するんだろう?」


「何だろうね、遺伝とか偶発的なものじゃないかなって思うけどマジレス過ぎかな。やっぱり神秘なんだよ、あれはダイヤモンドみたいに自然が生み出した神秘と表現するしかないね」


 月城先生は身長も高い分、多くの人の視線が胸に引き寄せられているように見える。もはや胸と会話しているようなアングルである。


 顔よりよく動き、感情を表しているかのような揺れる巨乳。カレーライスを食べながら雨音と茜は、月城先生の方に視線がつい向かい、談笑することになってしまったのだった。

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