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14少女漂流記  作者: shiori


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第十七章「内藤医院奪還作戦」9

 素早い動きで鋭く尖った爪を向けるヴァンパイアに対し、得意とする神速の如き速度で回り込み、空中から回転しながら不可視の剣で切りかかっていく。


 痛覚すら失われているのか、傷を負ってもまるで怯むことのないヴァンパイア。茜は一度立ち止まっては攻撃のチャンスを与えてしまいかねないと、次々に背後を取って疾風の如く立ち向かっていく。


「そうですか……茜先輩。これが先輩達の戦いなんですね。

 分かりました、早く消火活動をしないと病院が焼かれてしまいます。

 ですから……千尋は鬼になります。どうか、茜先輩、そのまま足止めをよろしくお願いします」


 決意を声に出しながらゆっくりと小柄な千尋が燃え盛る部屋の中へと入っていく。

 

 そして、茜が戦闘を続けヴァンパイアのゴーストを引き付けている隙に、鬼のお面をどこからともなく取り出すと、狐のお面を外し、そのまま鬼のお面を被って、ネックレスチェーンの先にある宝石に手を伸ばした。



「どうか茜先輩……見ていてください。これが千尋の本気です。


 マギカドライブ起動っ!!! 宝石の魔力よ!! この願いに応えてっ!!」



 シンプルな千尋の呼び声と共に、手のひらで握るターコイズの宝石がグリーンからブルーの輝きを燦然と解き放つ。


 そして、強い魔力の波動が光を迸らせ、千尋の周囲に強い風圧を巻き起こしていく。


 炎の勢いすらも消し去ろうとする強大な威力で超越していくマギカドライブによる魔力行使。


 宝石に込めた願いを胸に、千尋は想像だにしない金色の棍棒を召喚した。

 千尋の身体よりも大きな棍棒、それは魔力の塊であり、物質ですらなかった。



「茜先輩っ!! はあぁぁぁぁぁぁぁ!!! これで終わってっ!!


 浄化の一撃を解き放ってっ!! セイントブラスター!!!」



 必殺の一撃に賭ける千尋の声を聴いた茜がヴァンパイアから距離を取る。


 そして、もはや回避する場所もないほどに解き放たれた魔力によって大きく肥大化していく棍棒を千尋は沸き上がってくる魔力で操作して、ヴァンパイアの肉体にぶつけた。


 渾身の力でヴァンパイアの横腹に襲い掛かる金色の巨大な棍棒。

 気付いた時には回避のしようもなく、防御の隙も与えなかった。

 魔力の塊である千尋の願いは、ヴァンパイアの魂ごと天に向かって成仏させていく。


 激しく点滅を繰り返し、光に包まれていく室内。燃え盛る炎もその勢いを失い、強大な魔力の中で瞬く間に消火されていった。


 雑音の如く響く断末魔と同時にヴァンパイアは消し去り、通常の数倍以上の魔力を一度に放出したことでそのまま意識を失う千尋。

 光が消え、炎が消え、ゴーストが消えた室内で、魔力を使い果たした千尋はその場に倒れた。


「千尋っ!!」悲鳴のような大きな声を出し、千尋に駆け寄る茜。そして、意識を失っただけで生命活動は維持していることを確かめると、茜は安堵してはっと大きく息を吐いた。


「もう……初陣でこんな無茶をするなんて、麻里江が見たら発狂しちゃうよ……でも、ありがとう。かっこよかったよ、千尋」


 静かに鼓動を続ける千尋に茜は安心すると、穏やかな表情になってゴーストを倒してヒーローになった千尋の雄姿を称えた。

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