52:これ以上バレたら人権がなくなっちゃうだろ!
しかし、サフィストはハッとした。
選べるはずがない。
うんざりと眉を寄せているアルストには、答える気配がなかった。
その理由を、サフィストは知っている。
「だめだ、ふたりとも! 勝負がつかないよ!」
「は? 何それ、どういうこと?」
「ちょっとー、いきなり割り込まないでくれる?」
サフィストが声を上げると、
二人分の冷たい視線が突き刺さった。
しかし、サフィストは引かない。
「アルストは選べないんだよ!」
「サフィスト、やめなさい」
「いや、なんで!? もう、これ以上長引くと面倒だから言うよ!」
「やめてくださいって」
アルストは射抜くような鋭いまなざしでサフィストを睨みつけたが、
美女と美少女(暫定)にしがみつかれている状態では、あまりにも締りがない。
「ちょっと、やだ。実はオトコの方がいいってこと?」
だったらなびかないわよね、と。
つぶやいたテトラが自分の胸に押し付けているアルストの腕を見た。
されるがまま、全くの無抵抗であるアルストには何の反応もない。
「だったら僕が選べるじゃん! 何なの、おっさんがいいとか? 老け専ってこと?」
不満たらたらなイルディアは、それでもアルストから離れようとはしない。
妖艶なタイプの美女と、愛らしい華奢な美少女――もとい美少年。
どちらもタイプ自体は異なるが──ついでに性別も異なるが──大変麗しい容姿を持っていることは確か。
そのどちらも選べない理由。
「アルスト、どっちかっていうとロリ顔の巨乳派だからさ!」
サフィストの言葉に、イルディアもテトラも揃って目を見開いた。
「待って! それってロリが好きってこと? 小さな女の子?」
「ロリとロリ顔は違うんだよ、女神様」
サフィストは今にも噛み付きそうなアルストの視線から、
必死に顔をそむけながら女神に軽く説明してみせた。
「やだっ、それでアタシに脈なしなの? いいのよ、胸だけ見ていれば」
テトラが更に胸を押し付ける。
布越しとはいえ、完全に密着状態だ。しかし、アルストはスンとしている。
「魔族ってプライドも何もないわけ?」
イルディアの苛立ちは止まらないが、アルストも相当苛立っていた。
「それか、クールビューティタイプのぺったん派だから!!」
再びサフィストが声を上げた。
そんなピンポイントな好みなのかと、女神と魔族が顔を見合わせてしまう。
「ちなみにサフィストは、お色気系のお姉さまタイプが好みです」
急にアルストが声を出したのは、もちろん反撃のためだった。
ビクッとサフィストの肩が跳ねる。
「それと清楚可憐な大人しいタイプや中性的な美しい顔立ちも好みますので、割と幅広いかと思います」
「あああああっ、アルストッ!」
「何でした? ああ、そうそう。昼は淑女で夜は――」
「やめてやめてやめて、それ以上は! はずかしいから!」
悲鳴を上げながら崩れ落ちたサフィストに対して、
イルディアから何ともいえない憐憫じみた視線が向けられた。
「ごめんなさいもう言いませんお願いしますやめてください!」
自分から言い出した割には打たれ弱いサフィストは、
あまりの羞恥に顔から地面にめりこんでしまいそうなほどになっている。
ここまでいえば、更に進んで暴露しようとは思うまい。
アルストは自分の傷を最小限に留めるためであれば、爆弾をしかけることなど何の抵抗もなかった。
保身第一である。
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