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070:三馬鹿トリオ、渾身の一撃炸裂

「なんて数の魔獣なんですか!? 百、二百、いや、千ッ!? いや、もっといますよ! こんなの集めた情報にはなかったです!」


 そう叫んだ羊人の(まなこ)には、千をも軽く超えるであろう数の魔獣が担々麺連合軍の行く手を(さえぎ)っていた。


「数がどんなに多くてもたかだか中級クラスの魔獣だ。世界最強の龍人である俺の敵ではない!! くははははっ!!」


「上級クラスの魔獣もチラホラ見えるガオね。元世界最強の獣人であるオレには関係ないガオよ!」


 先ほどスケルトンキングに戦いを譲ったからなのか、龍人と虎人は数千の魔獣を前に燃えていた。

 そしてこの戦いは譲らないとばかりに先頭へと出たのだ。

 そんな時だった――



 ――ドゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!!!



 激しく地面が揺れ、大地が鳴り響いた。


「じ、地震!?」と、羊人とエルフが――担々麺連合軍の面々が驚く中、魔王が冷静さを一切欠かすことなく口を開く。


「震源はここ――妾たちの真下のようじゃな」


 それは正しく、担々麺連合軍がいる真下の地面が津波のようにウネウネと動き出した。


「な、なんだこれは!?」


「じ、地面が動いてるッス!!!!」


「やばそうですよ!!」


 慌てる正義の盗賊団の盗賊頭と下っ端盗賊、そして羊人。

 彼らの前に邪竜が移動し、背を向けた。


『余に乗れ!!!』


 邪竜は正義の盗賊団の二人と羊人を背に乗せて、うねる地面を回避する。

 それと同時に女剣士も動いていた。


「我に掴まれ!」


「はぶばっ!!!」


 女剣士に捕まろうとした女魔術師が逆に荷物を担ぐような体勢で掴まれてしまい、その時の衝撃で変な声が漏れてしまう。

 そんな女魔術師の反対側にはエルフがしっかりと女剣士に掴まっていた。

 女剣士が女魔術師とエルフをうねる地面からまとめて回避させたのだった。


 妖精族の少女とサキュバスは自らに飛行能力や浮遊能力が備わっているため、自力でうねる地面を回避する。


 戦闘経験が豊富な鬼人と龍人と虎人の三人も見事な跳躍を見せて回避。

 いまだに回避できずうねる地面の上に残されている担々麺連合軍は魔王と149体のスケルトンだ。


「「「UUUUUUUUuuuu……」」」


「「「KARAKARAKARAKARA」」」


「スケルトンたちよ! 慌てる必要はないのじゃ!」


 慌てるスケルトンたちを宥めた魔王は、そのスケルトンたちに向かって手をかざした。

 すると――


「「「WOOOOOOOOO!!!」」」


 149体のスケルトンたちが1体も余すことなく浮遊したのだ。

 それをやって見せたのは直前に手のひらをかざしていた魔王だ。


「重力系の闇属性魔法なのじゃ」


 魔王本人もその重力系の闇属性魔法によって浮遊している。

 これで担々麺連合軍の全員が突然発生したうねる地面から回避したことになる。



 ――ドゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!!!



 再び地響きが鳴り響いた。

 地響きの発信源は当然、津波のようにうねる地面からだ。


「この地面……まさか!!!」


 驚きの声を上げたのは魔王。

 うねる地面の正体――それは魔王が想像したものと一致する。

 それは――


「ゴーレムなのじゃ!」


 土人形の魔獣――ゴーレムだった。

 その強さは上級クラスの上の特級クラス。そのさらに上の幻級クラスに属する。

 ゴーレムの最大の特徴は山のような巨体だけではない。魔法を全て無効にする特殊な体と最強の防御力。それに加えて最強の攻撃力も誇る。

 幻級に相応しい魔獣なのだ。


「この数の魔獣、それにここまで大きなゴーレム……魔女め。妾たちを歓迎するにも程があるじゃろ……」


 数千の魔獣とゴーレムを見下ろしながら舌打ちを鳴らす魔王。

 そんな魔王の脳内に邪竜の声が念波によって流れ込む。


『魔王よ。この数の魔獣はさすがに無視できないぞ。どうする?』


「戦うしかないのじゃ。時間はかかるがここで倒しておいた方があとあと面倒ごとも減ると思うのじゃ」


『同意だ。野放しにしていたら王都にも被害が出てしまうだろうからな。それで誰が戦う? いや、もう決まっているか……』


「そのようじゃな」


 魔王と邪竜は同じところを見ていた。

 魔獣が悲鳴を上げながら吹き飛んでいるところを。


「くはははははっ!!! 喰らうがいい! 世界最強の龍神である俺の拳を!!!!」


「オレの爪の斬れ味はどうガオかー!! ガルルルルル!!」


 すでに龍人と虎人が暴れていたのである。

 そしてもう一人、この男も暴れていた。


「ガッハッハッハッハッ!! 魔王様ッ! 俺様の活躍に期待しててくださいッ!! 俺様がこの金棒でゴーレムを粉々に砕いてみせますッ!!! ガッハッハッハッハッ!!!」


 鬼人は金棒を振り回しながら魔獣を一掃しゴーレムに向かっていた。その姿は狂喜乱舞。まるで踊りを楽しんでいるようだ。


「期待しておるぞ! 魔王軍大幹部のおぬしの力を魔獣どもに見せつけるのじゃ!!」


「ハッ!!! お任せくださいッ!!!」


「妾たちは先を急ぐ! 龍人も虎人もここは任せたのじゃ!!」


「くははははははっ!!! 世界最強の龍人である俺に任せてくれ!!」


「すぐに追い付くガオ!! もっと活躍するガオよ!!」


「なんとも頼もしい三馬鹿トリオじゃ!」


 数千の魔獣と幻級クラスの力を誇るゴーレムを鬼人、龍人、虎人の三人――三馬鹿トリオに任せて魔王たちは先を急いだ。


「ゴーレムは俺様が殺るからなッ!! オメェらは魔獣の掃除を任せるぜェ!!」


「なんだと!? 鬼人!! 抜け駆けは許さないぞ! そのゴーレムを倒すのは世界最強の龍人である俺が相応しい!!」


「違うガオ!! ゴーレムを倒すに相応しいのはオレガオ!!! オレが倒して世界最強の座をもう一度ガオ!!!」


 龍人と虎人もゴーレムに向かって走り出した。

 彼らに向かって攻撃を仕掛けていく魔獣たちはことごとく倒されていく。


「くははははははっ!!! まだ世界最強の座を狙っていたのか!!」


「当たり前ガオ!! 隙あればいただくつもりガオ!!」


 会話をしながらでもしっかりと魔獣を倒していく。

 世界最強を自称しているだけの実力は確かにあるのだ。


「それじゃあよォ! ゴーレムを倒したヤツが世界最強でいいんだなァ??」


 鬼人も龍人と虎人の世界最強を賭けた争いに乗ってきた。


「なっ!! 一番近くにいるからってずるいぞ!」


「ずるいガオ! ずるいガオ!!」


「なんとでも言えッ! 世界最強の座はこの俺様、魔王軍大幹部の鬼人の大男がいただくッ! そして魔王様に相応しい男になるのだッ!! ガッハッハッハッハッ!!」


 龍人、虎人、鬼人の三人――三馬鹿トリオは数千の魔獣を確実に減らしていく。


「世界最強の龍人である俺の拳の威力をとくと見るがいい!!」


「空間をも裂いてやるガオ!!」


「全て薙ぎ払ってやるッ!!!!」


 そして、世界最強の座を己のものにするため、ゴーレムに渾身の一撃を仕掛ける。


青龍拳(せいりゅうけん)――!!!!」

白虎爪(びゃっこそう)――!!!!」

赤鬼撃(せっきげき)――!!!!」


 三馬鹿トリオの攻撃が同時に炸裂。最強の防御力を誇るゴーレムに大ダメージを与えた。

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