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41.出発

 起きれば昼過ぎ、軽く食べてどうしようかなぁと思ってた所で誘われてなんて怠惰な一日をすごして次の日にギルドに向かった。

 こういうのも嫌いではないけど普通のデートがしたいですよ。


 ギルドの中は少し人が多くなっている気がした。防衛線を張ってた人たちが戻ってきたのかもしれない。今日はあのミヤビにお熱なうるさい受付嬢は居なかった為、スムーズに丁寧に対応してくれる人の所に行った。


「おはようございます。お待ちしておりました」

「うん、おはよ。人が多いみたいだけど向こうから帰って来た?」

「はい、規模を縮小したのでその分こちらに人が帰ってきました。とはいえ今帰って来てる人たちだけでは南のヘルキャットを倒しに行くのは危険なので見張りの依頼を出してしてもらったり、たまっているこの町周辺の依頼をしてもらっています。昨日の今日ですから休んでる人が多いですけどね」


 いきなりヘルキャットだったので気にもしていなかったが、町中にあまり冒険者がいない状態では周辺での採取や魔物の討伐、細かな雑務などに支障をきたしていたのだろう。

 見たところ後方支援と言う事で実力のない冒険者もかり出されてた感じが見受けられたしな。


「早い所元に戻るといいな。俺達はこれ以上手を出すつもりはないけど」

「あれだけの数を狩られたなら十分すぎる功績です。その事で十分な実力と実績を考慮してお二人を三級にあげることになりました」

「私も三級なんですか?」

「はい、あなた様の回復魔法の能力は十分その資格を持っていると判断されました。一昨日の清算金と一緒に処理しますのでカードを貸していただけますか? それと清算金はリーダーであるユキトさんに一括でしょうか?」

「俺の所に一括で」

「かしこまりました。少々お待ちください」


 今も昔も俺が大本を管理してエリナとミヤビにはお小遣い。二人がそこを譲らないのだから仕方がない。それにしても四級を飛ばして三級って事はそれだけヘルキャットの生息域の拡大がまずい事態になるって考えてたって事かな?

 だけど、ギルドが正確に把握してるのは二百五十匹分だけのはずなんだけど、その程度で上がるものなのだろうか?

 ……この時点で感覚がずれているのかもしれない。


「お待たせしました。おめでとうございます。これで今からお二人は三級になります。これからの依頼や評価で二級への昇級試験のお誘いがあると思いますのでぜひがんばってください。お金はユキトさんのカードへと振り込ませていただきました」

「ありがとう。それで今日はこれからどうすれば?」

「デリックから説明がありますので解体場に案内させていただきます」


 そうして俺達は解体場へ案内された。肉はどうしてるのだろうか? ヘルキャットの干し肉とか保存食あったかな……。などと考えていた。




 解体場ではデリックさんがボーっとしてた。今は仕事がないようだ。だが入ってきたこちらに気が付き走って来た。それほど仕事がほしいのか?


「ようやく来たか! さぁドンドン出してくれ! 暇で暇でしょうがねぇ」

「落ち着いてください。まずは説明をして差し上げないと」

「あぁそうか……。仕方がねぇ説明をするか」

「説明の前に手の空いてる人用にヘルキャット出しますか?」

「ぜひそうしてくれ。このままじゃ給料泥棒って言われちまうからな」


 そういう訳でとりあえず二十匹分出して他の人達には仕事をしていてもらう。その間にデリックさんから説明を受ける事になった。


「とりあえずヘルキャットに関しては今までの値段であるだけ買う事になった」

「依頼の上乗せは一昨日出した分で終わりってことですか?」

「そっちは俺の領分じゃねぇ。アデルカどうなんだ?」

「申し訳ありませんが一昨日の分までになります。あれを受け取った段階で依頼を終えてるという事になっていますので」


 ここで初めてアデルカという名前なのかと知ったが今はそんな事はどうでもいいだろう。終わったというアデルカは事実を淡々と言うというよりは申し訳ないという気持ちが前面に出てるので追及はしないことにした。報酬は十分すぎるほどの金額だったしな。

 ……町を作るならいくらでも金は必要だけど、一気に人を増やすつもりもないしのんびりと家を建てるのも俺の楽しみなのでゆっくりやっていくつもりだ。

 森から木を切りだし、自分で整地して自分で建てる。必要金額は抑えられるよな?


「なんでぇけち臭い」

「最初なんてあの五十匹だけでなんて言うものですからお説教したんですよ。百は他の冒険者にも分けるからといわれていたのでなんとか納得したみたいです」

「ギルマスはけち臭くていけねぇ」

「必要な経費まで削ろうとするのはいただけません」


 はぁとため息をつく職員二名。どうやら色々とお金関係で苦労してるみたいだ。


「それで売るのはいいんですけど大丈夫なんですか?」

「あぁ、商業ギルドが買い取って少しずつ在庫を出していくらしい。それでなくともお前さんらが一気に減らしたからこれからヘルキャットの仕入れができなくなるだろ? ヘルキャットの革は最高級品だ。商業ギルド主導で色々手を打たなきゃ市場全体がぐちゃぐちゃになるって判断らしい」

「肉に関しては?」

「干し肉なんかの保存食にするって話だ。ちと癖があるが酒によく合うぞ」

「そうなんですか」


 さてここで出てきた話の中で聞き逃してはならない言葉が出てきた。ヘルキャット如きが最高級品だと? 革製品でも中の下くらいにしかならないはずのヘルキャットがだ。

 ざっとその上にくる革製品を思い浮かべて思いついた事がある。ほとんどがダンジョンや町から遠く危険な場所にあるのだ。

 あっちではアクセスがいい狩場がいくつもあったが、あれは元々何もなかった所にプレイヤー達でデパートみたいな建物を建ててアクセスをよくしたものだ。


 そう考えればヘルキャットがこの世界の最高級品になるのもわからないではない。色々と考えて行動せねばならないかもしれない。

 商人の相談役がほしい……。ハニエルさんみたいなでっかいところの人だと相談しにくいから行商で色々回ってて情報を持ってる人とか……。無茶な願いだな。


「で、だ。今冷蔵庫に放り込める限界がおそらく五百くらいだが、余裕を見て三百から四百くらいの間にしておいてほしい。それで昼過ぎにまた来て出してくれりゃいい」

「その数持ってると思われてる事に驚けばいいのか。その数ならこいつら持ってるんじゃないか? って思えるそっちの頭を驚けばいいのか……」

「そうですよね……。そんなに持ってるわけないですよね」

「どうだろ。本当に数は数えてないからなぁ」

「否定してくれない事に私は驚きます」


 そんな会話をして解体が終わったり終わりそうな人の所にヘルキャットを追加してから冷蔵庫に入りヘルキャットを積んでいった。

 四百まで良いって言うから四百出してきた。在庫はまだある。皮だけや魔石を取り出しただけってのもたくさんあるのだが、魔石はどうしたのかと聞かれると答えづらいので出さない事にしている。


 魔石を必要とするのは魔道具を作る人と魔道具を使う人だ。冒険者が持ってる魔道具は大抵が自分の魔力だけで動かせるものだった。魔石を使うタイプを持っていたとしても少量しか使わない。

 とりあえず特級になるまでは魔道具を作れる事は内緒にしておく事にしていた。作れる人は国が囲ってる事がほとんどだからだ。

 特級になってもすでに売っているけど売るつもりはあんまりない。自分で作った町で使うくらいなものだ。


 肉はのんびり自分たちで食べればいい。

 皮は……里の様子次第だが加工して使ってもらうのもいいかもしれない。もしくは町を作った後の自警団用にするのもいいか? その辺はミヤビとも相談してみようか。




 けっきょくその日の昼過ぎにもう一度四百追加してもまだあり、次の日に持ち越しとなった。最終的に合計千三百匹ほど無限倉庫の中に入っていた事が判明した。

 最高級品の素材がこれほどボロボロ出て来ては商業ギルドも管理が大変だろうなぁなどと思ったが俺の知った事ではない。

 これで南の山をキレイに出来ればこの町の安全は確保されるだろう。

 そして俺達の手元にやってきたお金は桁が違った。そっとカードの表示を切った。よほど大きな買い物をしない限り確認する必要も無さそうだ。


 ここまで大騒ぎすれば普通お偉いさんが出て来ると思うのだが、そういう事態にはなっていなかった。

 理由をアデルカに聞いてみれば普通に答えてくれた。答えなど知らないと思っていたが、職員ならみんな知ってる事だったようだ。

 理由は簡単でお偉いさんたちは日夜会議を繰り広げているらしい。忙しくて俺達の相手をしてる暇がないそうだ。さらに運び込まれたヘルキャットをどうしていくかでさらに忙しいらしい。


 そして俺達がこの町に戻って来てから一週間後、俺達は町を離れた。

 引き留められはしたけどこれ以上は俺達がいなくても大丈夫だろうし、他の町から応援もきた。俺達がでしゃばって彼らの出番を奪う必要もないしさっさと出て行った。


 虫の相手をするかもしれないような場所に誰が近づくものか!

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