表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/12

10

「……ポポ、管理室ってのはどこにあるんだ?」

 

 俺の問いに、ポポは短いアームを進行方向へと向けた。

 

「コッチ。……案内、スル」

 

 ポポは浮遊しながら、迷いのない動きで複雑な通路を突き進んでいく。俺はその小さな背中を追って、静まり返った廊下をひた走った。

 

 やがてポポが足を止め、広いホールのような場所へ出ると、そこには見上げるほど巨大な黄金の扉がそびえ立っていた。

 

「……おいおい、デカすぎだろ」

 

 緻密ちみつ幾何学きかがく模様が彫り込まれ、その隙間からは規則的な鼓動のように青い光が漏れ出している。この島を浮かせるエネルギーの源が、この奥にあることを嫌でも分からされた。


「ココ。……一番、大事ナ場所」

 

 ポポが短く告げる。

 俺は一歩踏み出し、冷たい金属の質感を手で確かめた。

 

「……さて。パーティーを組んだ途端に、こいつか」

 

 扉の横には、パスコードの入力画面も、魔法を流し込むためのクリスタルも設置されていない。ただ、鍵穴の代わりに「何かのパーツ」をはめ込むための不自然な窪みが3つ空いているだけだ。

 俺は腰のポーチから使い古したレンチを取り出し、軽く回した。


「おい、これってどうやったら開けれるんだ?」


「テキニトラレタ。トリカエス」


「……敵に取られた?」

 

 俺はポポの言葉を反芻はんすうした。

 この扉を動かすための「鍵」にあたるパーツが、ここにはない。そしてそれは、何者かによって持ち去られたということか。

 

「ポポ、その敵ってのは、さっきの警備ゴーレムたちのことか?」

 

「……イヤ。アノ子タチ、守ルノガ仕事。……パーツ持ッテッタノハ、もっと、ズルイ奴」

 

 ポポのレンズが、怒りに震えるように赤く明滅した。

 案内ドロイドであるポポが「ズルイ」と形容する存在。プログラムされた防衛機構ではなく、明確な意思を持って略奪を行った何かが、この島にはまだ潜んでいるらしい。

 

「なるほどな。そいつをぶちのめしてパーツを奪い返すのが、最初のステップってわけか」

 

 俺は扉の窪みをもう一度指でなぞる。

 窪みは三つ。それぞれ形状が違う。

 

「……で、そいつはどこにいる?」

 

「……ココカラ、一番遠イ、観測塔。……空ノ上デ、光ッテル場所」

 

 ポポがアームで指し示したのは、管理室とは真逆の方向にそびえ立つ、折れかけた巨大な塔だった。

 あそこまで戻るのか。頭の回転は現実のメシで回復したが、移動だけでも骨が折れそうだ。

 

「ま、やるしかないか。パーティーも組んだことだしな」

 

 俺はレンチをポーチに収め、軽く肩を回した。

 『青い基板』を探すための鍵。それを取り戻すための夏休み、大詰めだ。

 

「……と、その前に」

 

 俺はインベントリから、ボロボロになった弐式を取り出し、床に置いた。

 さっきの戦闘で無残にひしゃげ、火花を散らしていた装甲。これまでは魔力不足で応急処置しかできなかったが、今は違う。

 

「ありがたいことに、ここはガラクタの山だからな。……ポポ、悪いけど少し待っててくれ。今の戦力じゃ、その『ズルイ奴』に返り討ちにされそうだ」

 

「……リョーカイ。……クンペイ。ワタシ、手伝ウ」

 

 ポポがアームを器用に使って、周囲に転がっているパーツを次々と集めてくる。

 

 俺は、現実でカップ麺を啜りながら考えていた、あの「効率的な魔力パス」のイメージを指先に宿した。

 

「よし。ただ直すだけじゃ面白くない……。ちょっと『構成』を書き換えてやる」

 

 周囲に散乱する古代のネジ、高密度の魔導回路、そしてゴーレムの残骸。

 それらを材料に、俺はレンチを振るった。

 魔力に頼り切るんじゃない。構造の弱点を見抜き、最適な位置にパーツをめ込む。

 

 カチッ、と。

 パズルが噛み合うような小気味良い音が部屋に響く。


 カンカンカン――


「よしっ、出来たぞ。こいつは『参型』だな!」


○○○

 

【|嵐を喰らう者・参型(ヴォルテックス・イーター・MK-III)】


• 種別: 特殊外装魔道具(唯一品・現場改修型)

• 効果1: 前方からの風圧を「魔力」と「推進力」へ変換する(変換効率を160%に微増)。

• 効果2: パッシブ『最速飛行の持ち主』を検知。最大速度がさらに15%まで開放される。

• 備考: 見た目は以前にも増してパッチワークである。高性能だが、あくまで寄せ集めのジャンク品であり、定期的なネジの締め直しは欠かせない。


○○○

 

「……まあ、こんなもんだろ。あんまり詰め込みすぎても、またどっかがパンクするしな」

 

 俺は参型をレンチで軽く叩き、ボルトの締まり具合を確認した。

 

「ポポ、準備はいいか? ここから塔までは、また風が強くなるぞ」

 

「……準備、完了。……クンペイ、参型、強クナッタ。……ワタシ、信ジル」

 

 ポポが俺の腰のあたりに必死にしがみつく。

 俺は参型の魔力バイパスをゆっくりと開き、浮力を生み出させた。

 

「よし……浮け!」

 

 参型がガタガタと機体を震わせながら、ゆっくりと隠れ家の床を離れる。

 さっきまでの壊れそうな脆さは消え、代わりに粘り強い駆動音が伝わってきた。

 

「行くぞ。……パーツを盗んだ『ズルイ奴』の顔、拝みに行こうぜ」

 

 俺たちは隠れ家の開口部から、再び吹き荒れる天空の嵐の中へと飛び出した。



○○○ SVO攻略掲示板 ○○○


124:名無しのスカイランナー

 おい、今システムログ流れたぞ!

 【ワールドクエスト発動:『創造主を覚醒させよ』】

 これ、全サーバー同時だよな?

 

125:名無しのスカイランナー

 は? ワールドクエスト?

 まだこのゲーム、第12の島ですら、攻略中だよな?

 

126:名無しのスカイランナー

 攻略班とかか?

 大手ギルドが内密に進めてたとか。

 

127:名無しのスカイランナー

 いや、それなら動画サイトかSNSに絶対自慢記事上がるだろ。

 今のところネットに一切投稿されていないぞ。

 完全に未知の単独犯か、隠しクランの仕業だ。

 

128:名無しのスカイランナー

 おいおい、面白くなってきたな。

 この段階でワールドクエスト引きり出す奴がいるなんて。

 

129:名無しのスカイランナー

 『新たなる星』誕生、ってか。

 全プレイヤーのログに名前が載るのが楽しみだぜ。

 

 


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ