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第94話 大芸術家と戦乙女

1916年8月1日 イギリス グロスターシャー コッツウォルズ バッツフォード 

バッツフォードにはレデスデール男爵ミットフォード家の邸宅があった。

ミットフォード家は多くの土地を所有していたが、土地の開発失敗したためにあまり裕福とは言えなかった。

しかし、当主のデイビッド-フリーマン=ミッドフォードには浪費癖があり、カナダで金鉱を掘り当てようとして失敗するなどして、資産はますます減っていくばかりだったが、それでも彼の浪費癖は治らなかった。


そんな浪費癖の一つに有為の芸術家に対する支援があった。


「ヒトラー君、本当に行ってしまうのかね。イギリスは良い所だ、君さえ望めばいつまでだって…」

「男爵、気持ちはありがたいですが、戦争の終わりが見えた以上、私はドイツに戻りたいのです。イギリスでは男爵やネヴィンソン先生をはじめ多くの人に助けていただきましたが、それでも、ドイツは私にとってかけがえのない故郷なのです」


引き留めるデイビッドに対し、ミットフォード家から支援を受けていた芸術家であるアドルフ-ヒトラーは、それを断った。


「そう…さみしくなるわね。ヒトラーさん」


デイビッドの妻であるシドニーは悲しそうに言った。彼女はヒトラーと同じく熱狂的なワグネリアンであり、そのためにヒトラーとミッドフォード家は単なる画家とパトロン以上に密接な関係だった。

ヒトラーもまた、ミッドフォード家の人々に本当の家族のように接した。デイビッドの時折起こす癇癪については父アロイスの体罰を思い出して不快な気分になったが、それさえなければ、本当に良い所だと思っていた。


「そうだわ、最後に写真でも撮りませんこと」


ミッドフォード家の7人いる子供たちの中でも一番年上のナンシーが、そういった。


それからはあっという間に、話が進み、ミッドフォード邸の庭でヒトラーとデイビッドを中心に家族が集まり、写真を撮る事になった。


ヒトラーはイギリスに来てからの事を思い出していた。

イギリスに来てから右も左も分からなかったヒトラーの世話をしてくれたのは、師匠のフィリッポ-トンマーゾ-マリネッティが話を通しておいてくれたクリストファー-リチャード-ウィン-ネヴィンソンだった。


マリネッティと親交があり、また、その影響を強く受けていたネヴィンソンはマリネッティの愛弟子であるヒトラーを気に入り、イギリス各地を連れまわした。


また、反ユダヤ主義的なところがあったヒトラーは第一次世界大戦の惨状に心を痛めて、その黒幕として反ユダヤ的な言動をするようになった(しかし、スピノザやモンテーニュを尊敬していたため決してそうだとは認めていない)アメリカ人の詩人エズラ-ウェストン-ルーミス-パウンドとも意気投合した。

パウンドは日本や中国などのアジア圏の詩に影響を受けたイマジズムの中心人物であり、ミッドフォード家ともかかわりがあった。


デイビッドの父であるアルジャーノン-バートラム-フリーマン=ミッドフォードは幕末の日本駐在経験があり、イギリスにおける日本趣味の中心人物でもあったからだ。

ヒトラーはパウンドを通してデイビッドに会い、ヒトラーはミッドフォード家の人々と強いつながりを持つようになった。


パシャりとシャッターが切られた。

するとそれに驚いたのか、鳴き声が響いてきた、まだ2歳にもならない四女ユニティ-ヴァルキリー-ミッドフォードだ。


娘の名前に戦乙女の名をつけるあたりに、シドニーが筋金入りのワグネリアンであることが見て取れた。


それから、しばらくユニティは泣き続け、周りもそれを止めようと動いていたが、やがて、ユニティはヒトラーの顔を見るとなぜか泣き止んだ。ヒトラーはなぜかユニティに懐かれていた。


子供の扱いがあまり得意という訳でもないヒトラーは困りながらもユニティをぎこちなくあやし続けるのだった。

エズラ-パウンドとミッドフォード家の間で関わりがあったというのは創作です。


実際は多分そこまで関わりが無かったはずです。

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