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第28話 現状確認

1909年1月20日 大日本帝国 東京

第一次世界大戦が終結し、年が明けた1月20日、閣議が開かれていた。


「では、現状を確認しよう。末松君」

「はい、国内では右派を中心に未だに講和反対の声が強く、国民も不満を強めています。進歩党もこれを利用するつもりらしく他党との連携を進めているとのことです。国内治安を預かる内務省としてはこれらの動きに注意するとともに府県廃置法案に基づく再編を進めていく予定です」


内閣総理大臣の伊藤博文の問いに対して内務大臣の末松謙澄が応じた。末松は伊藤の娘婿であり伊藤からの信頼も厚かった。

府県廃置法案とは既存の沖縄と北海道を除く府県を統合し28道府県にまで数を削減する事を目的とした法案であり伊藤内閣で成立していたが、第一次世界大戦への参戦によって延期されていた。


「星君、国外の情勢はどうか」

「はい、総理」


伊藤は次に外務大臣兼拓殖務大臣星亨に意見を求めた。拓殖務大臣とは、国外移民と将来的な植民地の監督を目的に新設された拓殖務省の長である。

大戦中には戦後の植民地獲得への期待もあって規模が拡大されたが、結局、大戦終結後に植民地を得る事ができなかったため、現在の主な業務は移民政策に留まっていた。


「まずは欧州ですが、フランス、ドイツ、ロシア、オーストリア=ハンガリーは軒並み国内の混乱の収拾におわれています。フランスでは左右両派の政治勢力による政権転覆を狙う動きが活発化しています。ドイツではプロテスタントの北部とカトリックの南部の戦中よりの対立が依然として継続、ロシアでは革命運動が各地で激化、オーストリア=ハンガリーでは諸民族による独立運動により、特にボヘミア地域では独立派によるテロ事件が立て続けに起きています。オランダとベルギーでは大きな混乱はありませんがどちらも国内の復興に追われています」

「なるほど、無事なのは未参戦のイギリスとイタリアだけか」

「やはり、"例の件"は考え直した方が良いのでは、自国の治安も守れないようでは」

「いやアメリカとの関係を考えれば、やはり無理にでもした方が良い」


伊藤は、騒がしくなる中で、静粛にするように告げてから星に続きを述べるように促した。


「そのアメリカですが、昨年の大統領選挙ではご存知の通り共和党のタフト氏が大統領となりました。ルーズベルト前大統領の国際平和組織構想により、共和党内部でも混乱が広がっている中でのブライアン候補の敗北に民主党内では責任追及の声が上がっています」

「対外政策としてはどうなのだ」

「タフト大統領はドル外交を掲げており、経済的優位を活かした対外進出政策を取る構えです。欧州、特に大戦中に本国が主導権を握る形で保護貿易へやや傾いたイギリスとの緊張は避けられないでしょう」

「アジアについてはどうか」

「オスマン帝国、ペルシア王国では何れも国会開設などの改革を求める動きが激化しており、各地で保守派と改革派の衝突が起こっているとのことです。大清帝国は新黒旗軍の蜂起もあり、列強諸国から厳しい視線にさらされています。ただし、アメリカ領フィリピン、オランダ領東インド、イギリス領インドなどでは新黒旗軍の影響を受けて一部で自治または独立を求める運動が起こっています」

「星君、外務大臣ではなく拓殖務大臣としての立場で聞くが"例の件"は可能か」

「フランス、オランダ両国の十分な協力があれば可能かと。しかしながら、いざという時我が国が独自に必要な行動が取れる事が望ましいと思われます」

「そうか、陸海軍両大臣に伺うが、そのような準備は出来ているのか」


伊藤の問いに対し陸軍大臣の桂太郎と海軍大臣の山本権兵衛が答えた。


「陸軍としては欧州大戦で猛威振るった機関銃をはじめとする新兵器の導入を始めています。フランス軍が使用した戦車についても何輌か購入するつもりです。またフランスから技師を招いて航空機を試験する予定ですが、そのための縮軍を行なっているので短期戦はともかく長期戦は現状不可能です」

「海軍としてはヘルゴラント海戦で爆沈した薩摩の代艦を入手する予定です。国内建造も視野に入れていますが、現在、清国が戦艦の国産化を進めており、それに対抗する必要もあって早期の入手が望まれており、恐らくは輸入となる予定です。現在そのために旧式艦の退役を進めており、艦隊を派遣するとなると厳しいでしょうな」

「となれば、やはりフランス、オランダの協力は不可欠か…星君、両国に対し充分な根回しをするように」

「はい、総理」


こうして、閣議は終了し、大日本帝国は未来に向かって動き始めた。だが、世界の混乱はまだまだ始まったばかりだった。









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