表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
264/330

第264話 第2次世界大戦<9>

1938年10月には戦いは新たな局面を迎えることになる。

大日本帝国海軍と大清帝国海軍、そして、イギリス海軍地中海艦隊とフランス海軍、そしてイタリア海軍から抽出された艦隊からなる合同艦隊と、それに支援された日本陸軍と清国陸軍、イギリス陸軍、イギリス領インド帝国陸軍、そしてフランス陸軍のズアーブ兵と呼ばれる北アフリカ出身の兵士たちで構成された陸軍部隊によるアメリカ領フィリピン上陸作戦ジュビリーが発動されたのだった。イギリス領インド帝国陸軍はすでにその多くをオーラリア植民地の防衛に差し向けていたため、どちらかといえば航空兵力のほうが存在感があった。それでもインド陸軍のエドムンド-アイアンサイド大将が上陸作戦の司令官を務めていた。


この作戦の開始以前には大規模な欺瞞作戦であったダイナモが実施された。

このダイナモ作戦は単なる欺瞞作戦ではなくイギリス、フランス両国において懸念されたはいたが、否定され続けていた敵国であるドイツおよびアメリカによる暗号解読がなされているかどうかを確かめるという役割も担っており、オーラリア救援作戦であるジムナストのために準備が行われているが、日本と清国はこれに不満は持っており作戦実施を延期せざるおえない、日本と清国両国による合意がなければオーラリア救援は不可能に近いという悲観的な内容で暗号文を発し続けた。もちろん、ジムナスト作戦とは架空のものであり、イギリス内部においてもオーラリア救援のためにはまずアジア地域の安定が不可欠という認識から、フィリピン攻略を優先すべしという意見が増えていたのだが、それまでイギリスがオーラリア救援に積極的であったことから欺瞞としては最適と考えられた。


その反応はすぐに出始めた。

アメリカは主力である合衆国艦隊をニカラグア運河を通って、太平洋へと回航する準備を整え、加えてワシントンとベルリンの間では大規模な電文のやり取りが行なわれ始めた。

このダイナモの成果を受けてイギリスをはじめとする大協商各国は自らの優位に進んでいると考えていた情報戦において完全に劣位にあったことを理解し愕然とするのだが、暗号をすぐさま変えるということはできず、苦肉の策として音声による通信を活用した。植民地帝国である英仏伊は各植民地の少数民族を利用し、彼らの話す少数言語を使って即席の暗号文を作り上げた。非植民地国家である日清両国も自国内の方言話者を使い同様の方法で通信を行なった。こうした動きにより各地での方言や少数言語を保護されることになる。


こうした単純な解決策に対してアメリカ側は対応することができなかった。アメリカ国内では愛国党は大統領こそ不幸な事件で失っていたが、政党としてみればすでに20年もの長期政権を築き上げており、その政策の中にはアメリカ社会全体に浸透したものも多かった。その一つに英語中心の教育政策があり、第二次世界大戦の開戦後には外国語教育の拡充が推し進められていたものの、フランス語などの大言語はともかく各地の方言までには手が回っていなかったからだった。


こうした背景もあり、アメリカ軍はフィリピン上陸に対して有効な手を打つことができなかった。

まず、イギリス本土より派遣されてきた貴重なヴィッカース-ヴィクトリー爆撃機が自慢の2万2000ポンド爆弾でマニラの要塞群とキャビテ海軍工廠で修理中だったサウスカロライナ級アイオワを破壊した。次にバシー海峡に日本海軍と清国海軍からなる合同艦隊が現れたとの報告が入り、北からの上陸を警戒したアメリカ軍だったが、ヨーロッパとアフリカ、インドから来た兵隊たちは南から上陸したのだった。


大協商軍のミンダナオ島サンボアンガに上陸の報を受けたアメリカ軍はサンボアンガ半島をはじめとするミンダナオ島の多くが高山地帯であったことから、ミンダナオ島で自給的抵抗を続けることは可能と考え、ミンダナオ方面でのゲリラ的抵抗を行ないつつ本国からの救援を待って反撃する方針を打ち出したが、ミンダナオ島の先住民の中でも勢力の大きいモロ族の民意はすでにアメリカから離れていた。


多くがムスリムであるモロ族はキリスト教を前面に押し出した愛国党政権のフィリピン統治策によって、宗教的、文化的弾圧を受け続けていた。


そのためモロ族は肌の色や出身地域、慣習の違いはあっても同じムスリムの兵士が多数従軍する大協商軍に積極的に協力し、アメリカ軍の防衛計画は根底から崩れることになった。


増援を派遣しようにもすでに日本陸軍と清国陸軍がルソン島に上陸していたため、動くこともできなかった。唯一の望みはアメリカ本土からの増援だったが、主力である合衆国艦隊がヤップ島沖海戦にて大協商軍艦隊と痛み分けとなり、さらに増援を乗せた輸送船が日本海軍の潜水艦によって次々と撃沈されたために不可能となり、フィリピン陥落は時間の問題となった。


これに対して、アメリカは同盟国である極東社会主義共和国に対して、日本、清国両国に対する攻勢を実施するように要請し、極東はモンゴル地域への出兵と樺太島への上陸作戦でこれに答えたが、当時、クラスノヤルスクでロシア帝国と激しい攻防戦を繰り広げていた極東にはそれ以上の余力はなく、フィリピン方面での戦闘はアメリカで中間選挙の選挙日であった11月8日にアメリカ極東陸軍、アジア艦隊司令部が脱出したことでフィリピンでの戦闘は終了することになる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ