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第198話 敵討ちと改革

1921年6月15日 アメリカ合衆国 ワシントンD.C ホワイトハウス


爆殺されたセオドア-ルーズベルトに代わりアメリカ合衆国大統領となったジョン-パーロイ-ミッチェルは主だった閣僚を集めていた。


「新大統領就任おめでとう…などとは言えないな。まったくせっかくメキシコ風邪の猛威が収まり念願の戦艦も進水したというのに…」


ミッチェルに対して副大統領ハイラム-ジョンソンは暗い表情で言った。


ジョンソンだけでは無く集まった閣僚の表情はみな暗かった。何しろ彼らの知るもっとも偉大な大統領であるテディが死んでしまったのだから当然だった。


「しかし、何もしないという訳にはいかない、フォール君、BOIの方はどうかね」

「取りあえず犯人たちの背後関係を洗っていますが…人員が足りません」

「すぐに増員するしかあるまい。そして少なくとも東海岸全域を調べねば」

「…大統領、BOIは司法省の機関です。そういう話はまずこの私を通してくれなければ困りますな。それに東海岸全域の捜査ですと?人員もそうですが、各州の捜査機関との折衝も…」

「マクレイノルズ司法長官、貴方の献身ぶりには敬意を表します。しかしながらこのアメリカの大統領を爆殺したものたちが()()()2()()()()()()()()()()()()()、本気でそう思われているのですか?その者たちには背後に必ず大規模な組織が存在しているはず、であればそれを捜査し逮捕する事こそが貴方方の役割のはずだ」

「…そのような組織があれば、われわれ司法省の方で把握されているはずですが」

「たとえ個人であったとしても、そのそうな反アメリカ的活動はきつく取り締まらなければならないはず。そしてことはまさに急を要する。こうしている間にも奴らはこのホワイトハウスを攻撃する計画を立てているかもしれない」

(ほう、ただの運がいいだけの男かと思ったが意外と話が合いそうじゃないか)

「…確かに大統領の言われる通りですな。失礼しました」


ニューメキシコ州での法曹界での経験を買われ、BOI、アメリカ司法省調査局局長に任じられたアルバート-ベーコン-フォールに対してミッチェルが直接指示した事に対して愛国党政権誕生以来の司法長官だったジェームズ-クラーク-マクレイノルズは不満を示した。


しかし、マクレイノルズは反ユダヤ、反黒人、反移民を信条とする人間である為、アイルランド系の血をひくカトリックであるミッチェルに対しても強く反発していたが個人であっても強く取り締まるという方針に関しては強く賛同しており、反対を直ぐに取り下げた。こうして、この日の決定により、BOIでは人員が臨時に増員され東海岸では多くのイタリア系移民が無政府主義秘密結社の活動を理由に逮捕される事になった。

また、移民たちによる反アメリカ的な活動に対処するためにオハイオ州選出の上院議員であるウォレン-ガメイリアル-ハーディングが中心となったハーディング委員会が設立され、その調査を行なう事になった他、郵便爆弾への対策として郵政省が独自に有する郵便物に関する犯罪行為を対象にした法執行機関、郵便監察局についても郵政長官エドウィン-デンビの要請により大幅な増員が認められた。


これに対し、民主党や共和党などからは反対意見があがったが、国民的人気のあったルーズベルトの爆殺という衝撃的な死はそれだけにアメリカ国民に深い衝撃を与えており多くはルーズベルトの敵討ちとして熱狂とともに歓迎した。政治家以外の文化人や知識人などもこうした反移民熱には警鐘を鳴らしたがそれを素直に受け入れる国民ではなく、逆に批判的な文化人や知識人にたいする虚偽の告発が行なわれる始末だった。

こうした、あまりに苛烈で急すぎる反移民政策はBOIの捜査員の質の低下による誤認逮捕、ハーディング委員会での偽証や自白強要などのちに問題も引き起こす事になったが、それでも当時、多くのアメリカ国民がBOIとハーディング委員会がアメリカの民主主義を守っているのだと信じていた。


そうしたアメリカ国民の意思を受けて、アメリカでの反移民政策はさらにエスカレートし、後には社会主義者などを含む反アメリカ的とみられた人物の国外追放、アジア系移民の全面禁止といったさらに強い政策に打って出る事になる。

こうした強烈な政策を行なったのは愛国党が元々反移民を軸に結成された政党であったのも大きかったが、それ以上に大きかったのは副大統領からの昇格によって大統領の地位を手にしたミッチェルはアイルランド系移民のカトリックというアメリカ大統領としては初めての異色の出自であった為、自身が志す改革を行なう為にも過激なまでの反移民政策を行ない支持を固める必要があったからだった。


一方そうした政策の進展と共にミッチェルを支持する声が高まるにつれて、その出自を元に批判していた民主党や共和党内部ではこの反移民の熱狂の前では不利と感じたものたちが、民主、共和両党の解党と新党設立に向けて動き始める事になる。


そうした動きは民主、共和両党の動きを鈍化させる事につながり、結果的に第3合衆国銀行創設のための法案や社会的問題に対して科学的な視点で分析をおこない解決策を提示する事を目的とし、技術者のハワード-スコット、経済学者のソースティン-ヴェブレン、物理学者のリチャード-トルマンなどが中心となって設立された民間組織であるテクニカル-アライアンスへの連邦政府の公的支援の実施といった、ミッチェルの改革に対応できなかった。しかし、それは愛国党内でも同様であり、ルーズベルトの敵討ちで基盤を固め、国民的英雄となったミッチェルの改革に賛否はあっても声を上げる以外出来ない状況が続く事になる。


邪魔するものたちがおとなしくなったのを見たミッチェルは、テクニカル-アライアンスの面々以外にも連邦政府と州際通商委員会による鉄道各社の国有化ないし大規模な統合を目的とした運動を行なっていた弁護士のグレン-エドワード-プラムやコロンビア大学、マサチューセッツ工科大学、ハーバード大学で教鞭をとっていた著名な政治経済学者であるウィリアム-ゼビナ-リプリーなどの者たちを積極的に登用していった。特にリプリーは白人、特に北方人種の優位を唱える人種学者としての一面もあり、そう言った意味でもミッチェルに強い影響を与える事になる。こうしたミッチェル政権下で登用されたものたちは、のちに専門家の集まりを意味するブレイントラストと呼ばれるようになる。


だが、そのような改革を可能にするのは国民からの支持であることはミッチェルが最もよく分かっており、より強気な対外主義政策と進歩的な国内政策を両立させるべく、試行錯誤を繰り返す事になる。


そのため、反移民政策の実施にとどまらず、旧大陸各国へも批判的な言動繰り返すようになり、特に前政権からの海軍拡張政策を引き継ぐ意思を示したことやアイルランド系という出自もあり、イギリスとの関係は徐々に冷却化する事になる。

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