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第133話 上陸作戦

1917年11月17日 オスマン帝国 アイドゥン州 アイドゥン 沖合


アイドゥン沖合には多数の艦艇が集結していた。中に兵士たちを満載した輸送船、オスマン海軍の中では一番の脅威である潜水艦の活動を封じ込めようと警戒にあたっている駆逐艦、各国海軍が威信をかけて作り上げた巨大な戦艦と、従者のように付き従う巡洋艦などその種類も様々だった。


国籍、艦種、艦の大きさ、武装、どれをとってもバラバラで統一感のない艦隊だったが、その目的ははっきりしていた。アナトリア、レヴァント、メソポタミアなどで弾圧されるキリスト教徒を助けるという、使命の下に一つに纏まっていた。


そうした艦隊の中に一隻の戦艦の姿があった。戦艦フッド、15インチ3連装砲を3基備えた排水量4万トン超、速力24ノットの戦艦であり、本格的な3連装砲塔の採用はロイヤルネイビーでは初めての事だった。


ロイヤルネイビーの提督たちから艦名がとられた事から提督(アドミラル)級とも呼ばれるフッド級は、バルカン戦争で活躍した14インチ連装砲を4基備えたイタリア海軍のコンテ-ディ-カブール級やその対抗馬として生まれた14.5インチ4連装砲を前後に2基備えたフランス海軍のプロヴァンス級、そして、ドイツ海軍の新鋭戦艦、15インチ連装砲を4基装備したバイエルン級に対抗するための艦だった。


一番艦フッドの他にロドニー、アンソン、ハウが建艦されたが、アメリカ合衆国のグレート-ホワイト-フリート構想がハウの竣工と同時に発表されたため、以降は建造されず、守護聖人級という新たな艦が建造される事になった。とはいえそれらの新型戦艦はまだ建造が始まったばかりであり、現状ではフッドこそがロイヤルネイビーの最新にして最強の艦だった。


「艦長、トルコ人の様子はどうかね?」

「…特に目立った様子は見られませんな。欺瞞作戦が成功したのでしょう」

「まあ、あれだけ派手な工作をしていればな…例の場所は何と言ったかな」

「たしか、ガリポリ…だったかと、それにしても比較的古い駆逐艦とはいえヌビアンの乗員たちには酷い役回りをさせてしまいましたな」

「艦長、その事はあまり口にしない方がいいぞ」

「たしかにそうですな…」


艦長、アルフレッド-ダドリー-ピックマン-ロジャーズ-パウンド大佐の返答を聞いたイギリス地中海艦隊エーゲ海戦隊司令ホーレス-ランバート-アレキサンダー-フッド少将は、作戦に集中したまえといった。


フッドはその名で分かる通り、戦艦フッドの艦名の由来となったサミュエル-フッド提督の曾孫にあたる人物だった。ロイヤルネイビー内部でささやかれている噂によれば、戦艦フッドのエーゲ海戦隊への配備と同時期のフッドの司令就任は、フッド提督の子孫がその名を冠した戦艦であるフッドで敵を吹き飛ばすという、話題作りにおこなわれたものであり、対オスマン戦争においては海軍の出番が少ないことが分かっていたロイヤルネイビーの上層部によって企画されたものだったという。


ちなみパウンドが話していたヌビアンとはロイヤルネイビーのF級駆逐艦ヌビアンの事で、ヌビアンはイスタンブール近郊のゲリポリ(ガリポリ)への上陸作戦の事偵察の為として派遣されてオスマン海軍の潜水艦に雷撃され艦首を破損しそのまま座礁していたのだが、これは上陸場所をアイドゥンではなくゲリポリであるとオスマン側に誤解される為に実行させた欺瞞作戦だった。この欺瞞作戦は徹底しており、ヌビアンの艦内には偽のゲリポリ上陸作戦の作戦計画書まで置かれていたという。


ちなみに同様の作戦でイスケンデルン(アレクサンドレッタ)付近を航行していた同じくF級駆逐艦のズールーも攻撃を受け、こちらは何とか逃げ切ったが艦尾を破損している。戦後、ヌビアンとズールーはそれぞれ、残った艦尾と艦首を繋ぎ合わせて、その名もズビアンという新たな駆逐艦に生まれ変わったのだが、それはまた別の話である。






「流石はイギリスの艦だな」

「…中将、我がドイツとて練度で劣るわけでは…」

「少佐、別に諸君らのことを劣っていると考えているわけでは無いよ」

「はあ」


そう言って微笑んだドイツ地中海艦隊司令であり、アイドゥン上陸作戦に参加する最高位の将官であった事からアイドゥン上陸作戦における支援艦隊司令官となっていたドイツ帝国海軍のフランツ-リッター-フォン-ヒッパー中将に対し、参謀であるエーリヒ-レーダー少佐は余り納得していない様子でそう言った。


1863年にヴァイルハイム-イン-オーバーバイエルンというバイエルン王国の山奥の町に生まれたヒッパーは18の時にドイツ帝国海軍に志願し、やがて優秀な砲術士官として知られるようになり、1908年の第二次ヘルゴラント海戦においては、当時、艦長を務めていたシャルンホルスト級装甲巡洋艦グナイゼナウが大日本帝国海軍遣欧艦隊の装甲巡洋艦日進を撃沈するなどの戦果を挙げた。この戦果によってヒッパーは騎士(リッター)に叙されている。


ヒッパーが旗艦とするバイエルンはドイツ帝国海軍の最新鋭の戦艦の一隻であり、ロイヤルネイビーの守護聖人級への対抗馬として計画中のL級と仮称されている戦艦が存在しない現在ではドイツ帝国海軍で最強の戦艦だった。


「さて、時間か…艦長、砲撃開始だ」

「はい、中将」


ヒッパーの命令に対し、艦長であるリヒャルト-アッカーマン大佐は応じた。

バイエルンの砲撃と時を同じくして、フッド以下の各艦が砲撃を開始した。連合軍とオスマン帝国軍との最初の戦いとなるアイドゥン上陸作戦の始まりだった。

当世界のアドミラル級は速力を下げて、装甲を強化したJ3級巡洋戦艦と言った感じです。


フッド少将は史実ではユトランド海戦で第3巡洋戦艦戦隊を率いて、ヒッパー直卒のリュッツオウ及びデアフリンガーと交戦、旗艦だったインヴィンシブルと運命を共にしました。


リヒャルト-アッカーマン大佐は史実ではオスマン帝国に譲渡されたゲーベン(ヤウズ)の艦長で、第一次世界大戦では主に黒海でロシアの黒海艦隊と戦っていました。

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