復縁のためのその7
かすかな星の光とともに。
降ってきた星の王子さまのセリフは、俺を切なくさせた。
キツネとの別れの際、自分がキツネと仲良くなっていたことに気が付き、悲しみにくれる王子。
……いや、王子さま。マコに会えたことは俺の人生で一番素敵なことですわ。
俺は王子の言葉に答えたキツネと同様のことを思う。
『黄色く色づく麦畑を見て、王子の美しい金髪を思い出せるなら、仲良くなった事は決して無駄なこと、悪い事ではなかった』
俺は……これから先、マコのことを何回も思い出すんやろう。
そのたびに、マコと過ごした日々を思い浮かべて、幸せやったあの時の気持ちが蘇るんや。
そう。悪いことやない。
いつしか、あたたかい気持ちになれる日がくるんやろう。
マコ、幸せをありがとう、って。
そう、思える時がくるんやろう。
……それまでは、悲しいやろうけど。
悲しい、やろうけど。
悲し……すぎるけど。
ほんま悲しい……
……すぎるけどおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!
あかん、やっぱり、俺あきらめられへん!
お前を手離したくないんやあああ……。
マコ!
お前と絶対に復縁したる!
しつこい言われても、キショイ言われても、ストーカーやと思われても構うかい!
俺はお前以外に居らんのやあああ!
お願いやから、俺とヨリを戻してくれえええええ……!
……決めたぞ。
俺は絶対にお前をもう一度振り向かせたる。
俺は今のままの自分で終わりたくなかった。
マコにこんな男やった、と思われたままで終わりたくない。
以前、ネットで復縁する方法を探してから。
俺はその後、いろんな記事を散々読みあさった。
どのサイトでも、彼女と再びコンタクトをとるまでの間、自分を変えること、己を磨くことを推奨しとった。
そうや、生まれ変わった俺をマコに見てもらうんや。
マコをひたすら失望させとった俺やなく。
オシャレで、マメで、気の利いた、王子様のような俺をな!
これから俺は変わるで!
三十過ぎて今さらやけど、ファッション雑誌買って研究したる。
ジムに行って、腹筋も割れさせたるわい。
ぐっとくるようなメールができるよう、文章力も磨くし。
とれそうな資格も全部とって。今まで趣味につかっとった金はすべて貯金に回したる!
スキヤキDAYなんて構うかい!
せや、家を出て一人暮らしを始めるか! ホンマにホンマに今更やけどな!
マコと別れたときに言われた言葉を思い出し、俺はやるべきことを一つずつ決意した。
『これからは死に場所を探して生きるんやね』
降辺さんの言葉がもう一度聞こえた。
せや。
今までの情けない自分と決裂して、新しい自分に生まれ変わること。
死んでも後悔することのない、マコにとって恥じないいっちょまえの男になることを第一目標にして、これからは生きるんや……!
よし。とりあえず。
俺がすることは。
ほんとのほんとの最初に。
俺がマコに与えた失望を俺は思い出した。
とりあえずはそれか。
俺は膝頭に置いた手を握りしめた。
腹の底から震えがくるのを感じる。
いや、もう、俺には後がない。
決めた。
俺は目をきつく閉じた。
……俺の「死に場所」は。
言うまでもない。
あそこや。




