六十話 そして呪いは融解する
今章ラスト。
リーゼが目を覚ましたのは、数日が経過した日の昼間のことだった。サーリャとランドルとで外を警戒している中、毛布を剥いで、ゆっくりと起き出してきた。
彼女の異変に最初に気が付いたのはランドルだ。
最初は何日も眠っていたリーゼが腹を空かせているのだろうと作り置きをしていた食事を置いたのだが、それも食べずにぼうっと前方を眺めているだけだった。
虚ろにくすんだ桃色の瞳が映すのは、果たして目の前だったのか。光の差さない視線に、意識は籠もっていない。
後からサーリャが戻ってきた時、そうなった状態のリーゼに気が付いて声を掛けると、初めて虚ろだった視線が動いた。
「あれ……サーリャ……?」
その第一声は弱々しく、以前の溌剌さが抜け落ちてしまったかのようで。受け答えもぎこちなく、まともに喋れるようになるまでは更に時間を要した。
こうなる前の時点からリーゼの様子は少しおかしかったのだ。
如何に魔物から与えられた魔力を扱ったところで、本来ならリーゼに敵うはずもない。ギルディアですら自ら戦っては勝てないと言っていたのに、たかだが魔力程度で覆る実力差ではないはずで。
それが、奴隷商人の集団との戦いでボロボロになっていた。
ランドルと逃げていた時には既に力は殆ど残っておらず、サーリャが助けに来なければ確実に死んでいただろう。
弱っていた。
それは恐らく正しい表現ではない。ただ弱っているだけなら、その分だけ休息を挟めば回復する。回復の兆しがなく、弱ったままでいる以上――リーゼが持つ加護の方に異常が発生しているのだと考えるのが自然だ。
ともすればその原因にイデアが浮上するのは、至極当然の帰結であった。
「本当にその神様ってのと話しただけだったのか? 例えば去り際に追い返した時にそれこそ呪われたとかさ」
「そんなことされてたら、流石に気付くとは思いますけど……」
首を横に振るリーゼだが、こうなっていること自体イデアという神が絡んできた直後に発生したのだ。例えイデアが直接にやったことでなくとも、全くの無関係である方が不自然だった。
ひとまず各々が持ち得る情報を共有せんと、リーゼがイデアとの会話内容を伝え直し、ランドルがその後の事を伝え、整合性を三人で確認する。最後にサーリャがリーゼと別れた後の旅路を伝えた。
共有することにより繋がった事の真相――それは決して聞き流していいものではなかったが、ここでの三人の誰かが真実を知っているわけでもなく、だから真実を追求するのは後回しだ。
次にイデアと対面する機会があったならば、本人に問い詰めるしか方法はない。
今しなくてはならない問題は、リーゼが他に何かをされていなかったか、だ。リーゼが感知できない何かがあってたまるかというのは二人共の共通認識ではあるが、イデアが神と名乗る何者か以上の情報が分からないため、リーゼが感知できない細工を植えられていてもおかしくはない。相手をしているのは知能を持った凶悪な魔物の集団を束ねる存在だ。
決して楽観をしてはいけないし、向こうが何らかの手段を使ってリーゼという強力なカードを潰しに来ていると考えるべきだ――ランドルもサーリャもその意見は一致していた。
ともかくリーゼが動けなければ、こちら側から行動を起こすことはできなかった。
することは一つだ。原因が分からないなら、突き止めるかリーゼがこうなってしまった要因を絞ることを第一優先に動かなければならない。
そうしなければ、実際――如何にサーリャが優秀な魔法使いでも、本領を発揮したリーゼのように魔物と戦うことはできないのだから。結局はリーゼの力なくして、魔物には立ち向かえないのだから。
「――ねぇ、サーリャ。私、一つだけ心当たりがある。多分、なんとなくだけど……ううん、きっとそうだと思う」
「心当たりがあるの? 何でもいいから言ってみて、どんな些細なことでもそれが要因になっている可能性もあるから」
リーゼはその返事を聞き、悲しげに笑ってみせた。深く刻まれた目の下の隈から悲壮な姿が見え隠れする。最初から知っていなければ勇者だとはまるで思えない、病気にでも掛かったような弱々しい姿。
彼女は毛布から細い腕を引き抜き、それを自らの左胸に当てて、か細く言った。
「勇者って、何なんだろうね……って。私がそう思ったから。思っちゃったから。勇者ってものを何一つとして信じられなくなったから、そうなったんだよ」
――と。
「……それって」
まさかそんな言葉が飛び出すとは思わず、サーリャは口を開いたまま黙ってしまう。
「私はもう勇者じゃなくなったってことだよ。だって……あの人の話、嘘じゃなかったから。だったら私はずっと――人殺しをしていただけだったんだ」
「――リーゼ、それは違うわ」
「違わないよ。私は魔物だけじゃなくて、悪い人から皆を守るために戦って――殺したこともある。でもそれは、皆を守るためだって信じて、私のしてきたことは正しいことなんだって言い聞かせて戦っていたから、私は勇者で在り続けられた。でも、魔物は――魔物が本当は人だったなら、私は誰も守ってなんかいない」
「リーゼは今まで守るために戦ってきたじゃない。今まで魔物を倒してこなければ、今以上の人が死んでいるのよ」
「そうだけど、でも……違うんだよ。私は、ただ呪われちゃっただけの人達を、何人も何人も殺してきたんだよ。だから、魔物は私に戦うなって言おうとした――」
「魔物は人じゃないわ。いえ。昔は人だったのかもしれないわね。イデアの話が本当だとするなら昔は人だったのでしょうね。でもね、今は違うのよ。あいつらは人を何千何万と殺してる。貪り食って人里を襲って、皆殺しにして、どんどん侵略してきたでしょ。リーゼは何度もその光景を目撃してるでしょ? 私もうんざりするほど見てきたわ――イデアの言葉に騙されないで、魔物は魔物よ。決して人じゃないわ」
ようやく現れた人の言語を操るあの魔物達も、間違いなく魔物だった。高度な知能を取り戻したからこそ人と遜色のない行動をしているだけで――その本質は、魔物だ。とうとう魔物は人間同士に争わせて全滅を謀るまでに凶悪になった。真実がどうであろうと、事実はそうだ。
魔物は人類の破壊者だ。人ではない。
「でも――だって私は――勇者は――人間を、殺してたんだよ。人間を魔物にしたのは、勇者だったんだよ。だったら私が殺すのは、魔物じゃなくて」
――魔法使いだった。
「だから私は……勇者じゃない」
「――リーゼ。言葉の全てが真実とは限らないのよ。リーゼにそう思わせるために、どこか決定的な嘘を混ぜているかもしれないじゃない」
勇者。
リーゼが勇者として存在し続けていくためには自らの強い意志が必要なのだ――とは、リーゼ本人が常々肝に銘じていることだった。そうしなければ、自らを否定した瞬間に加護が失われてしまう。
それは最早呪いの類だ。
自らを縛り、制約を課すことで限定的に力を解放する魔法。リーゼの場合は、勇者という存在を演じることで手に入れられる力だった。
即ち魔物と戦い人を守ること。そうしている内は、その呪いが絶大な力を与え続ける。
――だけれど。
「分かってる……けど。もう、駄目なんだよ……私が勇者を信じられなくなったら」
いくら理屈では分かっていても。
――本人がそう認識してしまえば、そこで終わりなのだ。
呪いは解き放たれた。少女の身体を縛り上げている鎖は崩壊し、囚われていた心が表層に返ってくる。
かつて心と引き替えに力を手にした少女は――力と引き替えに、心を引き戻した。
それが適切な代償だったかどうかは、別にして。
リーゼが寝たきりから健康状態まで立ち直るのには、そこまで日数は掛からない。
加護を受けられず発生していた身体機能の異常は時間経過と共に落ち着きを見せ、普段通りの生活を送れるようになった。
元々が酷使し続けていた肉体に限界が訪れてしまっただけなのだろう。
今までの無茶は勇者だから行えただけであって、その加護無くしては同じだけの負荷を与えた場合に勇者と同じ回復力を得られるはずもなく。
けれど、リーゼの戦闘技能はそこまで衰えてはいなかった。
幼少期より振り続けていた少女の剣はどの師もいない我流の剣だが、無尽蔵の魔力と身体能力に任せて振り回していたわけではなく、長い時を経て研鑽の積まれた技能は身体に刻み込まれている。
前ほどの爆発力は生み出せないものの、自前の肉体強化と我流の剣術でそれなりに戦えるのはランドルとの模擬戦で判明した。
魔力は平均より少し上程度。覚えている魔法は消費が激しく今のリーゼで使用はほぼ不可能なため、実用レベルなのは肉体強化くらいのものだろう。
纏虹神剣を含める勇者の技は使用することすらできず――リーゼは、本当にただの少女に戻っていた。
この事実は何らかの形によって、教会に伝わるだろう。
新しい勇者を生むのはいつになるのか知らないが、しかしすぐに見つかるわけでもあるまい。
その前にリーゼさえ望み、リーゼさえもう一度勇者になると決意したのならば、或いはまた元に戻る可能性もある。
そして戦力面で考えれば、リーゼが勇者へと戻ることは必須事項だった。リーゼという剣がいなければ誰も魔物に牙を立てることはできないし、もし遭遇し戦闘に入ってしまえばサーリャだけでは捌き切れない可能性があるからだ。
されど、仕組みが呪いに近い術式であることも同時に判明した以上、こうなってしまったリーゼに対してサーリャは多くを望むつもりはなかった。
神によって間接的に破戒された機構、勇者。
リーゼがこのまま勇者で在り続けた限り、戦う力を得ながら自らという個が消失するまで戦い続けるそのシステム――そのような破滅的な力を、知ってしまった上で誰が望むのか。
ランドルとの模擬戦でもリーゼは勝利しているし、今でも相応の実力はあるのだ。
普通はそれで十二分、それ以上をただの少女の身で求める必要はない。あんな力は、数十年と研鑽を積み上げた一握りの天才だけが到達できるような到達点だ。
呪いで無理矢理覚醒させるものじゃない。
――頼りきりだったのも事実だけれど。
それで好都合だとも、サーリャは思う。
「リーゼは元々戦う人じゃなかったもの。私が少し、甘過ぎていただけ。今まで沢山守って貰った分、今度は私が何とかしてみせるわよ」
「サーリャ……でも、どう戦うつもりなの? 今までの私でも、あの魔物達とそこまで実力は離れていないんだよ」
「そうね」
親殺しに初めて剣を取った少女が何を想い、どのような覚悟で勇者となったのかなど一度も聞いていないし聞くつもりなどない。
歪なまでに他人のことしか考えていない少女はいつも、平和を願っていたから。彼女が求める平和を実現するために、彼女は戦っていたのだ。
「別に何の根拠も無しに言ってるつもりはないわ。リーゼ、ランドル。どう? これなら魔物とも戦えそうでしょ」
場所はサーリャが空けた地下室の真四角な空間。
リーゼが復帰するまで、サーリャは一人新たな魔法を構築していたのだ。
地面を走り出す幾何学模様。
光の筋が幾重にも広がり、地面だけでなく壁面と天井の全てを覆って、遂には空中にまで手を差し伸べ始める。
そこに込められた魔力量は絶大で、そこに刻まれた術式は綿密に。
「これ、は?」
「魔法陣。竜の魔物が使ってたやつよ。ゼロからイチを作り出すのは難しいけれど――本当、それ以降って簡単よね。やろうと思えば誰でも出来ちゃうもの」
過去にギルディアが発動させた魔法陣媒介の魔法術式。
サーリャはその術式をたった一度、その目に認識するだけで身体に刻んだのだ。
魔法書に記されていた火魔法を全て暗記するかの如く。
ギルディアの魔法陣を魔法書のようにし、彼女は覚える。
それがどのような難度であろうとも、確立された魔法体系であれば――彼女に使えない魔法はない。
それが、魔法学校十二人の首席の一人に君臨する一人の実力で。
こと魔法に関して、サーリャは一握りの天才だった。
「私にチャンスを与えたこと、必ず後悔させてやるわ」
魔法陣に刻まれた術式はサーリャが得意とする火魔法の一つ《ファイア》であった。初歩、初級魔法の一つであるが、《ファイア》の命令がそのまま形になって敷かれた術式は魔法陣の仰々しさに見劣りせず、ただ放つだけの数倍から数十倍までの威力にまで膨れ上がる。
その分だけ詠唱時間が必要となるが、鍛錬次第で短縮も可能となろう。
こんな場所で大規模に敷いた魔法陣を起動してしまえば地下室どころか辺りを爆散させかねないことになるため、サーリャは途中で魔力供給を止め、途中段階まで展開される魔法陣を魔素へと還す。
「す、すげぇけどこれ……」
「ええ、私くらい魔力量がなきゃ無理でしょうね。勿論あなたには無理でしょうし、覚えるまでにも至らないわ」
仮にランドルが今の魔法を放てるとして、一撃に必要な魔力の総量が足りなかった。それに、一撃放って倒れてしまえば何にもならない。
故に、この場で使いこなせるのは魔力量も技術も見合うサーリャだけ。
「海賊が赤剣で戦えるように、私も魔物が使っていた技術をそのまま奪ったの。だから、リーゼだけが戦う必要なんてない。何、奴らに戦う意志がないんだったら、その気になる前に奴らの計画を破壊しちゃえばいいだけよ。簡単な話でしょう?」
「そりゃ、口で言うには簡単だけど」
「魔法は破壊の力よ、そうなんでしょ。だったら破壊するために使えばいいじゃない。きっと最初の魔法使いが破滅したのは――そうしなかったからよ」
サーリャが口にしたのは、魔法の根元について。
かつて存在した魔法使いがもたらした本来の魔法、その根本。
魔法の末に起きた結末を、彼女は鼻で笑って吹き飛ばす。
「魔物は、真実を探っていた私だけには追ってきている。何にもしないなら私は牢獄の中で死ぬだけよ。でも抗うことはできるでしょ。今まで自分が頑張ってきた結果を自分で否定して死ぬなんて真っ平御免だわ、死ぬならやりきって悔いのないように死ぬ――そんな御伽の魔法使いの戯言なんて、知ったこっちゃないわよ」
還る魔素が儚い輝きを見せて消え行き、やがて地下室は魔力灯の小さな明かりだけを残して静けさを取り戻す。
――ばきり、硬い石が割れる音がしたのは、丁度この時だった。
「せ……船長からの、連絡だ」
誰よりもそれに過敏に反応したのはランドル。
懐から取り出した箱の中、魔石が粉々に砕け散っているのを見て確信する。
誤作動ではない。向こうからの明確な意志で魔石が割られ、連絡が通されたのだ。
果たしてレーデは見つかったのか。
それとも、ランドル達を呼び戻さなければならないような緊急事態があったのか――。
「っ、まさか、レーデさんが?」
「そこまで分からないけど、多分何かしらの手掛かりは見つかったんだと思う」
「……良かった」
そう呟いたリーゼの顔が複雑な色を帯びていたことには、誰も気が付かない。
「ただ、今となっては戻るのが難ね。私じゃ二人連れて空飛ぶなんて芸当できないわよ」
「ああ、そうだな。というか途中で魔物に見つかっちまう。やっぱ、トンネルの修復が先か……?」
サーリャは不敵な笑みを浮かべ、言った。
「それじゃ、別の道から行く?」
「いや、別の道って、それは」
港へと渡るトンネル以外の道程は、一つしかない。
今は道であって道ではない山道。即ち山越えだ。
「っは、今更普通の魔物に遅れを取るわけないでしょうが。近付いてくる奴は全部最小限の抵抗でどうにでもなるわ。奴らから身を隠しながら進むって意味でも、山越えは最適でしょ」
サーリャが迂闊に町や人道を歩けば、どこかで察したギルディアなどがやってくるだろう。逆に絶対に人が訪れない位置から通ろうとすれば、やってこない。
ギルディアが北と中央を繋ぐトンネルを破壊したのはそのため。
人間が山越え出来ないと分かっているからこそ行った行為であり、裏を返せば――野良の魔物が蔓延る山の中は、ある種安全であるということだった。
「嘘だろ……? マジで進むってのか? 自殺行為だろ、正気じゃねぇって」
「自殺行為じゃないし私は正気よ。悪かったわね、転移魔法まで盗めれば良かったんだけど……流石にそこまでの模倣は無理だったわ」
「いやそういうこと言ってるんじゃなくて――」
「何よ私が信じらんないっての? 第一他に手段なんてあるわけ? ないでしょちょっとは考えなさいよ、悠長にトンネルなんて直してる暇ないわ、山越え如きで死ぬようならそれまでよ」
「マジかよ……分かった、仕方ない。準備するよ」
平気で山を飛び越えようとするリーゼもリーゼ、堂々と山越え宣言をするサーリャもサーリャだ。
普通の域を出ないところのランドルは頭を抱えるものの、この旅で嫌に適応していった対応力が常識を勝った。
かくして、三人は港町へ戻ることとなる。
勇者の力を失ったリーゼ。魔物の正体を知ったランドル。合流したサーリャ。
果たして魔石による報せは吉報か、それとも。
世界は大きく動く。
黒幕の差し金で、魔物の働きで、人はこの先必ず争いを起こす。
最初に待ち構えている北と小国の戦争は、起これば必ずや大損害を互いにもたらす。
その戦争を事前に止めなければ今まで保っていた均衡は崩れ、連鎖的に戦は引き起こされるだろう。
そうなってしまえば手遅れだ。
無事に港町へと到着した三人は、ゴーストタウンと化す港町の惨状に愕然としていた。
「何よこれ……」
眉をしかめるサーリャ然り。
「――誰もいないって、どういうことだよ」
狼狽するランドル然り。
「また、襲われたんじゃ」
心配するリーゼ然り。
その時点で、レーデの生存の良い報せでないことは確かであったが、港町の住人は消え去ったわけではなかった。
港町の端に停泊する船から光が放たれ、それが三人を捉えるのと時を同じくして船長の姿が甲板に現れた。
「残念だけど悪い報せの方だ。緊急事態ってやつだよ」
港町はレッドシックルの拠点だ。
戦闘訓練を積む海賊達が守っている町に船がある限り、常に強固な要塞と変わらぬ防御力を誇る。
しかし、前回魔物の襲撃によって大打撃を受け町は機能を衰えさせていた。加えてリーゼ達がいなくなった後も散発的に魔物の襲撃に遭い復興もままならず、とうとう海賊達は一つの決意を固める。
港を捨て、全員が北大陸に避難するということ。
何もずっとではない。大元の原因が絶たれるまでは北大陸に身を寄せ、安全を確保してから再び港に戻って復興を再開する算段は立てていた。
その目処が立たない現状、無期限放棄に変わりはないが、戦闘の度に住人を死の危険に晒すよりはマシだとの判断だった。住民分の船内居住区はあるため、多少不便であっても同意してくれたそうだ。
この時点で住民は船内に避難し終え、後はランドル達の帰還待ちだったらしい。
三人は向こうでの報告とサーリャの紹介を行い、今後の対策を練る。
当面は戦争を未然に防ぐことを目標とするが、具体的にどこまで経過しているのかが判明するまでは下手には動けない。
その辺りは北に渡った後にサーリャが魔法学校へ向かい、事前に話を付けておくつもりだ。
要は戦争をしないようにとお願いする内容になるが、主戦力になるであろう面子が現在そこに居るかどうかは定かではない。
三人も船に乗り込み、全ての船を引き連れて北大陸へと出航する。
未だレーデの情報は、一つも見つかっていなかった。




