十七話 リーゼとサーリャの過去
魔物が消えて以降。
目立った危険が降り掛かることも、新たな魔物が出現することもなかった。
後処理のほとんどはリーゼとサーリャが済ませていた。
村に巣くっていた核はリーゼによる剣の一撃で破壊され、既に出現してしまっていたい魔物はサーリャの火魔法で残らず駆逐。燃え盛る火はサーリャが自分で水魔法を使って消していた。
その間、俺は考えるだけで目眩がしそうな情報を整理することに神経を費やしていたため、後処理を終えたリーゼとサーリャに声を掛けられるまで彼女達の接近に気付くことができなかった。
二人共々俺の様子の変化には気付いていたか、リーゼが若干ばかり心配そうな声色で俺を呼ぶ。
俺はなるべく軽い返事をし、それまでしていた思考を一旦頭の隅に追いやることにした。
「とりあえず終わったわ。事態が完全に解決しなかったのには懸念があるけど、今は一時の平穏に感謝をしましょう」
サーリャは魔法で一応の修復を終えた村を一度眺め、そんなことを言う。
修復された後の村は、当初の火災現場が思い起こされない程度には綺麗になっている。壊れた物全てを修復するのは不可能らしいが、あれだけの数の魔物に侵略されてこの程度の被害に留めることが出来たのなら上出来であろう。
「で。さっきリーゼと話していて色々思うところがあったんだけど。ちょっと、話させて貰える?」
「俺がお前とか? そりゃお前は訊きたいことだらけだろうが、俺は特にない」
「まぁまぁ、レーデさんそんなこと言わずに! 仲良くしましょうよ」
「悪いんだけど、リーゼには席を外して貰うわ」
「えっ……何で!?」
「何でもよ。分かった? 盗み聞きは許さないからね」
とてつもなく残念そうな表情になったリーゼは、泣きそうな目で俺を見つめてくる。
「リーゼを外さないと出来ない話、ねぇ」
レーデさん!? とリーゼが叫ぶのが聞こえてくるが、俺はサーリャから視線を外さないまま少しだけ考え、口を開く。
「いいだろう。悪いがリーゼ、少し遠くへ行っていてくれ。そう長く時間は取らん」
「レーデさんまで……っ? 酷いです……いいですよー……向こう行ってますから……行けばいいんですよね……」
とぼとぼと遠くへ歩いて行くリーゼを見送り、俺は改めてサーリャへと向き直った。
「何だ」
「色々訊きたいことあるんだけど、まず――どうしてリーゼに『レーデ』という名前で呼ばれているわけ?」
俺を睨んでいた彼女が、最初に訊いてきたのは。
以前、リーゼに決めさせたその名について、だった。
――何年も前に、話は遡る。
俺ではない“レーデ”という名の男が、まだ生存していた頃の話だ。
当時。
ラーグレス・リーゼには確かに家族というものが存在していた。
本人は否定するような言葉を放っていたが――今よりも更にリーゼが幼かった時代には確かに、ラーグレス・レーデという三歳年上の兄がいた。両親共に健在で、彼女は小さな農村の長女として生まれ四人で暮らしていたという。
リーゼの家庭は、言葉にも出来ないほど劣悪な環境だったらしい。
それでも敢えて説明をするとなれば、父親も母親も子供を農作業の道具と同じように扱っていたようだ。
――お前らは産んでくれた親の、奴隷だ――と。
それが親が子に告げた言葉で、どこにでもある小さな村に生まれた子供であったリーゼと兄のレーデはその言葉通り奴隷のように朝から晩まで働かされていた。
しかし父親も母親も同じように働いていて、三食の食事にありつくことが出来るので文句も言えず、世間を知らない子供二人はその生活が当たり前だと思いながら、一生懸命親の元で働いていた。が、両親共々暴力を平気で振るう人間であったため、二人は毎日のように生傷を作っていたという。
理由は様々で、失態を働いた時は勿論、両親のストレスが溜まった時の解消道具にされていたことも珍しくない。
時は過ぎ、ある日を堺にレーデは父親と共に出稼ぎに出るようになった。
リーゼは母親と一緒にこれまで通りの農作業をこなし、同時に装飾品などの道具も作り始めた。
農作業は一通り覚えたリーゼであったが、新しく始めた作業は勝手が分からず、そこでも際限のない暴力が振るわれていた。
そんなリーゼのことをサーリャが知ったのは、彼女が魔法修行の過程で長らく宿泊していた町でのこと。
出稼ぎに町へと訪れていたレーデと知り合い、口伝いに聞いたことがその始まりである。
レーデはよく町に働きに来る普通の少年であった。色んなところで力仕事をしているのをサーリャはよく見掛けていた。
初めてレーデと接触したのは、見掛けるようになってから数十日も経過したある日の夜。
レーデは道ばたで倒れていたのだ。
着古した衣類は使い潰した雑巾のようにぼろぼろで、痣や切り傷だらけの生々しい傷が全身に入っている。
サーリャは意識もなく地面に突っ伏していたレーデに回復魔法を何度か掛け、意識が戻るまでと自分の宿に連れ帰って看病をした。
「……ここ、は、どこですか」
そう口を開き、寝惚け眼で布団から半身を起こしたレーデの存在は希薄で、少し触れるだけでばらばらと砕けてしまいそうな様相であった。
その邂逅をきっかけに、サーリャはレーデと会うと時々言葉を交わしたりするようになり、次第に長々と会話をするようにもなっていく。
レーデはサーリャと同じ年頃の癖して寡黙な少年であったが、自分にだけは心を開いてくれていたのか次第に彼からも話してくれるようになる。
しかしサーリャはレーデが色々とぼかしながら楽しげに話す日常に、心が痛むこととなった。
彼が話す内容は大抵や家族と暮らす日常のことで、妹を残していること悔やんでいるのが会話の節々から見え隠れしている様子があった。
彼は両親のことについては話さなかったが、その口振りからサーリャはすぐに異変に気が付いたという。
所々にぼかしを入れなければ話せないような――しかし話の種が家族関係しかないような、そういう家庭なのだと。
だが、レーデのような状況の環境はそう少ないわけではない。
程度はあれど、この廃れた時代では子供が宝ではなく道具といった扱いがされることは、確かにあるのだ。
働き手となる道具が欲しいが奴隷を買う金がないから子供を産み、小さな頃から洗脳のように働かせる。そんなのは当たり前。
しかし誰もそのことを咎めない。そういう、時代。
そしてサーリャも心が痛むだけ痛み、レーデから大量の話を聞くだけ聞いて――何も、できなかった。
魔法使いとしては若輩だが、当時もサーリャにはそれなりの力はあった。
それなのに、何もしてあげなかったのだ。手助けの一つさえ――。
と。
「ここまでで何か、感じるところは」
そこで言葉を区切ったサーリャは、真剣な瞳で俺を眺めている。
俺が顔色の一つも変えないのが原因だったのか、サーリャはわずかに眉をひそめて言った。それに対しての俺の返答は酷く平淡なものであっただろう。
「ない」
「……そう。普通ならここまで聞く前に、私を糾弾なりするでしょうに」
「お前を? 何故そんなことをしなければならん」
「それ、敢えて言わせようとしてるわけ?」
「知らん」
感慨もなく放った一言は、サーリャの心を抉ったらしい。見て分かるほど顔を歪め、サーリャは静かに息を吐いて精神を落ち着けると。
「あの子を奴隷として売ったのは、私よ?」
「だが志願したのはリーゼだろう。お前に信用がないのは確かだが、俺にはそう関係のないことだ」
「っ……なんで、そこまで知ってるの? ああもう、そうじゃなくて……そう。いいわ、続きを話すわ。そうしたらあんた、その名で呼ばれる理由を教えなさいよね」
「別にいいが、大した理由じゃないとだけは言っておく」
リーゼの過去など滅多に聞けるものではない。
折角だから聞いてやるとして、その対価に支払う情報が俺とリーゼの短いやり取りだとすれば、こいつはどう思うのだろうな。
それにしても、レーデか。
最初から意味のない単語や組み合わせではないと思っていたが、まさか実の兄とはな。
思うところがないとは言わない。が、そのことを考えるのは、最後まで聞いてからでいいだろう。
俺が黙するのを確認し、サーリャはその続きを話し始めた。
まるで俺に話すためではなく、自分の行いを再確認させるかのように、静かに、淡々と。
「そう、私はレーデと話をするだけだった。毎日、そうやって――」
毎日のように、サーリャはレーデと会話をしていた。
レーデの仕事が忙しかったり、またはサーリャの修行の時間の関係上会わない日も会ったが。
会ったとしても、長時間の会話に興じるわけではない。
そしてサーリャもレーデも一度も待ち合わせなどしたことはなかったそうだ。
廃れた広場の一角で毎日たまたま顔を突き合わせ、たまたま歓談をして二人の帰路に着くだけ。意図して足を運ぶ回数は増えても、決して口約束を交わすことはない。
そういう関係であった。
レーデの異変は、その更に数十日を経てから起こった。
広場の端に座っているレーデの様子が、どこかおかしいのだ。一見普段と変わりはないはずなのに、どこか重々しい。
それでもレーデは、しばらくの内は何も話すことはなかった。それが、更に数十日の間続いた。
そして、いつも通り魔法の修行を終え、夕方自然と広場に向かったサーリャが目撃したのは、最初に邂逅した時と同じくぼろぼろの格好になった、レーデ。
けれど決定的に違うのが一つ。全身が血塗れになっていて、誰かに暴行を受けていたと一目で分かる深い傷だ。
駆け寄ったサーリャにレーデが僅かに顔を上げ、涙でぐしゃぐしゃの顔で初めてその心情を吐いたそうだ。
それまで黙っていたのが決壊したように、彼の痛々しい思いの乗せられた言葉が、サーリャに深々と突き刺さる。
「サーリャさん。お願いが、あります」
その言葉は今まで彼に何もしてあげなかったサーリャにとっては、胸に刺さると同時に、ある意味救われた言葉でもあった。
傷付いたレーデを宿屋に運び、出来うる限りの治療を施した上でベッドに寝かせ、それからレーデのお願いと事情を詳細まで聞いた。
彼の両親のこと。彼が奴隷のように扱われていること。妹も同じように扱われていること。
そして。
レーデの妹であり、自分達の子供であるリーゼを奴隷として売り飛ばそうと、両親がひそひそと話していたことを彼は聞いてしまったそうだ。
「頑張って働くから売らないでくれ」と土下座までして頼み込んだレーデを、父親は笑いながら殴り飛ばしたそうだ。
その全てをレーデがサーリャに伝えた。その上でリーゼを助けて下さいと、彼は頼んできた。
「分かったわ」
その頃は火魔法も未熟でそれ以外の魔法はあまり使えなかったサーリャだが、彼からの頼みに応えるため、実力行使で両親と二人を引き裂くと心に誓う。
恐らく両親から解放されれば、彼らは二人で生きていける――そうでなければ自分が彼らの傍に居てやるのもいいと本気で思って、サーリャはレーデを宿に泊めた。
その日はゆっくりと休ませ、次の日にレーデの村へ向かうといった段取りを決めて、サーリャもレーデも就寝する。
ほとんど同じような歳のレーデと宿を共にするのにサーリャは些かの抵抗があったものの、自分の身に何も起こらないことはサーリャも理解していた。
今までのやり取りで、レーデのことを信頼十分に信頼し、またレーデがどう考えているかなどお見通しのつもりで。
サーリャは次の日に備え、深い眠りに落ちる。
だが、次の日。サーリャが起きると貸し与えたベッドにレーデの姿はどこにもなかった。
その日以降、レーデを見掛けることは終ぞなかったという。
「……後日談。といっても一年くらい後になっちゃって、私はレーデとの記憶もそれなりに薄れていたわ。それで、魔法使いとしてもそれなりには強くなって、旅の途中に寄ったある村でレーデの話を聞いたわ」
眉間を右手で押さえ、目を瞑った彼女は首を横に振りながら言う。
「偶然、レーデのことを知る機会があって、思い出した私は興味本位に調べたわ。それで、どうなったと思う? 両親に殺されて、もうこの世にはいないって。これがレーデのお話。リーゼもレーデの話はほとんどしてくれないけど、兄として慕っていたレーデの話よ」
「……なるほど。それじゃリーゼは何故生きている? お前はどこであいつと知り合った? その話を聞く限り――」
「両親を殺したのは、他でもないリーゼよ。その後村から失踪したらしいけど私も詳しくは知らない。私がよく知っているリーゼってのは、勇者になった後のリーゼ。だから、その前はレーデの話でしか知らない。私は全く別の関係ない事情で、たまたまリーゼ本人と知り合ってるだけだから」
ふむ。
リーゼが触れて欲しくないと言った過去はこれだな。人を殺したことは二度あるとは言っていた覚えもあるが、その内の一つがこれか。
俺は溜め息一つ、懐から煙草を取り出そうと――サーリャがいることを一瞬忘れていた自分に気付き、途中で懐に押し込んだ。
「私はね、あの子がどうして自ら奴隷になるだなんて言ったのか、分からないのよ……。どうしてそんな過去を持ちながら、そんな提案を私にしたのか。全然分からない」
「そう思うのなら断れば良かったんじゃないのか?」
「……――断ったわよ! 断らなかったわけがないじゃない! でも笑顔で言うの。私なら平気だからって、あの顔で、元気な声で、まるでちょっと外へ出掛けるだけのような軽々しさで……私は結局、あの子をダシにして村を救った。私の村は救えたけど、私はリーゼを助けなかった。私はレーデを助けなかったっていうのに、私だけが救われたのよ」
自嘲気味に呟き、だからこそ、と閉じかけた言葉を続ける。
「それで、あの子を救出する算段を整え、いざ救出しに行こうと思ったら奴隷市場ごと消滅したって情報聞いて、まさかって思った。私はあの子がやったんだって思ったわ」
発露した感情を抑えきれないらしく、サーリャは半ば俺に掴み掛かるようにして吐露する。
実際にはリーゼもやったが、主犯は俺である。
そのことはリーゼが喋ってもおかしくはないな。あれについて特に隠すべき記憶などないだろうし。
「そして助ける前に、大量の魔物が現れて私はそっちの処理で八方塞がりになった。それでこうして魔物を叩いて、リオン村まで来て――そしたらこんな場所にリーゼを買ったって言うあんたが現れて、そのリーゼはあんたのことをレーデだなんて呼んで出てくるわけ――訳が、分からないわよ」
俺は押し黙る。
サーリャは俺の裾を強く掴んだまま、言葉を閉ざす。これで言いたいことは終わりなのだろう。
彼女に対しての返答を持ちあわせていなかった俺は、代わりに対価としての返答をすることにした。
「……俺は名前がなくてな。だからリーゼに俺の名前を考えてみるかと言ったところ、『レーデ』になったというだけの話だ。俺には兄が存在したこと自体が初耳だよ」
「あんたが実の兄でどこかで生きていたんだったら、それが一番良かったんでしょうけど……そうでしょうね――って何その理由? 本当に、それだけなの?」
「ああ。そもそも、お前の知っている通り俺はリーゼを購入しただけの赤の他人だ。むしろ俺がリーゼに聞きたいくらいだ」
「……ふざけないで」
本当に訊くつもりなど更々なかったのだが、俺を睨んで低い声で呟いたサーリャは「大体ね」と言って話をすぐ切り替えた。
「聞いたわよ。あんた、教会から派遣されたって?」
「それがどうした」
「っは、嘘吐くんじゃないわよ」
答えてもいない内に言い切り、サーリャは怪訝そうに首を傾げる。
「一体何のためにそう言ったのかは私の知るところじゃないけれど、教会ってのはあんたが思っているほど情に厚い組織じゃないわ。信仰する連中集めて色々やってるだけの、少しだけ関わった私がドン引きするほど腸の黒い連中だったわよ」
「……それはそうだが、俺は」
「教会が欲しいのは勇者を顕現させた事実であって、リーゼじゃない。だからあんたのようにヘンテコな人間が現れることは絶対に無いし、そもそも魔力も扱えずに魔石で補ってる人間が教会の関係者なわけないじゃない。さっきの武器だってどこぞの辺境の技術か知らないけど、どんだけ物騒なのよ」
矢継ぎ早に続けられた指摘に、俺は言葉に詰まってしまった。俺は教会についての詳しい知識は持ち合わせていない。
ここで下手な言い訳を重ねたとしても、また別な指摘を受けるだけだろう。
「あんた、どうしてリーゼを買ったわけ? さっきのヘタクソな誤魔化しをしなきゃならない理由が裏に絶対あるんでしょうけど」
「……さぁな」
「はぁ? 私のことも知ってるってほどだからリーゼの接近をかなり許しているようだけど、何? そんな顔してリーゼのこと好きなの? 少女性愛でもあるのかしら?」
「何故そうなる」
顔のどうこうのはさておき、全く見当外れの解答をしてくれたサーリャへ否定すれば彼女はややわざとらしく俺から距離を取りやがった。
勘違いも程々にして欲しいがな。俺が何も話していないこの状況では、どう見られても仕方がない。
「……俺は旅の連れにと戦力を欲していただけだ。それ以外に、理由はない」
「へぇ。それで教会の名を騙ってリーゼをうまいこと抱き込もうとしたわけね? 奴隷の契約なんて出来ないものねぇ? 確かにリーゼは強力な戦力ではあるけど、本当にそれだけの理由だってんなら考えが甘いわよ」
「……そのようだな」
俺の言うことは大体聞いているが、悪事に対しての反応がな。
安全な道を通る代わりに、凄まじい遠回りをさせられているような気分である。
「あの子は単純だけど、簡単ってわけじゃない。じゃ、そんなあんたに良いこと教えてあげるわ。とりあえず、小細工抜きでリーゼに向き合って、正面から本当の事を話しなさい。そうすれば、あの子は必ず答えてくれるわよ」
「何故それを俺に話すんだ。その理由はなんだ?」
彼女が俺に助言をする義理など、どこにもないはずだが。
「曲がりなりにも、あんたがリーゼからの信頼を受けてるからに決まってるでしょ。それは私には無いものだから、その分リーゼと仲良くしてあげてってこと……別に他意はないわよ」
「俺への感情は別にして、リーゼはお前にも信頼を置いている気がするが?」
サーリャは俺のその返しを鼻で笑い、そっぽを向く。
青色の髪が風に揺られ、丁度その横顔を隠した。
「馬鹿言わないで。私はあの子に信頼されているんじゃなくて……私は、あの子にとっては守られる存在なだけよ」
話は終わりだと言わんばかりに、サーリャはそのままリーゼが歩いていった方へ身体を向ける。
しかし思い出したように一度だけこちらを顔だけ振り向き、
「リーゼだって、あんたが嘘を重ねてることくらい気付いてるわよ。ただあんたがそう言ってるから、あんたの言葉を真っ直ぐに信じているだけ」
眉根を寄せて吐き捨て、サーリャはそのままリーゼを呼びに行ってしまった。
「……ふぅ」
俺はその場に立ち尽くしたまま、空を仰ぐ。
改めて煙草を取り出し、口にくわえて火を灯した。




