決定・1
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逆切れといわれようが
自業自得といわれようが。
要するに、俺はプライドの生き物だということです
―――――――――――――― 第二章 決定
「いやー、昨日はホント面白いもんが見れた。ね、修平」
俺の前の席に、振り返ってニヤニヤしている慶太。
「うん。女の人に対してあんなに怒鳴る涼介、初めて見た」
俺の机の横に立って、にこやかに笑う修平。
そーだろーよ。
女に対してあれだけ怒鳴ったの、初めてだったよ。
いつもはどうでもいいから、流すのに。
ってか、最初っから話なんて聞いてねぇのに。
ちょっと罪悪感がわいてるんだから、つつくなよ。
両腕に頭を乗せて机に突っ伏したままの格好で、二人の会話を聞く。
頭を上げると、ムカつく笑顔がこっち見てんのが分かるから。
「でも、莉子さんっていい味出してたよね」
何を思い出しているのか、慶太はくすくすと笑いながら手に持ったパンを食べ始める。
「ホントホント、五歳も上なのに大人に見えないっていうか」
修平も笑ってる。
「信じられないよね、あれで二十三歳。外見詐欺でしょ」
外見詐欺ってなんだそれ、初めて聞いた言葉。
顔を上げずに、なんとなく脳内突っ込み。
「涼介放っといて、莉子さんと話して正解だったよね。
まったく意識されてない涼介の存在が面白かったけど」
そう。慶太がいう通り、こいつら先に帰った俺を追いかけもしてこなかった。
プライドずたぼろになった友達より、莉子を選びやがって。
「でも、涼介が落ち込んでないか心配してたじゃん」
修平の言葉に眉が、ぴくりと持ち上がる。
「心……配?」
ゆっくりと頭を持ち上げると、案の定、おちょくるように笑う慶太と無邪気に笑う修平の顔。
「そ、心配。ちゃんと顔を見てあげればよかったわっ……てっ」
我慢できなくなったのか、慶太はそこで噴出して会話が中断。
「きっと怒って帰ったんだ、どうしようって、ずっと気にしてたよ。涼介」
その後を修平が続けて、俺の神経を逆なでする。
「もっと、俺を貶めてねぇか? 莉子のやろう」
そういう時は、そっとしとくのが常套手段だろう!
慶太は笑いながら、視線だけ俺に向けた。
「なんだ、怒っててもちゃんと名前聞いてたんだ」
「目の前にいたから、聞こえたんだよ」
ぶっきらぼうに言い捨てると、食べ終わったパンの袋をビニール袋にしまいこみながら慶太がにやりと笑った。
「でもさ、いたじゃない」
何がいいたいのか分からずに、首を傾げる。
「顔だけを見ない女の人」
「――」
俯き加減で、視線だけで慶太を睨む。
「制服だけ見てる奴のが、厄介だと思うけど?」
「あと、眼鏡も」
よけーな一言を割り込ませる修平を、睨みあげる。
「どっちにしろ、本体が眼中に入ってねぇ」
「あ、やっぱショックだったんだ」
慶太の一言って、ホンキでムカつく。
修平は裏がないけど、こいつは悪意込みで面白がっていうから。
「ショックじゃねぇっての!」
「はいはい」
あしらいやがったっ
頭にきた勢いのまま怒鳴りつけようかと思ったら、慶太の携帯がメールの着信を振動して知らせる。
タイミング悪っ!




