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第二章三節 懐かしき母校の嫌な雰囲気


結局、あれからマンションからは出ていなかった。

感染者は血を求めて生存者のいるほうへ流れていて少なかった。

慎太郎がメガネを磨きながら

「この近くに避難所があるらしいな」

「そうなのか?残り食料はどのくらいだっけ?」

田中が台所の冷蔵庫へと向かっていった。

水道は停止したが電気供給は続いているので冷蔵庫は使えた。


「絶望的な量だ…節食しても二日って所だ。」

「そうか…」

「なら避難所に行ってみましょうよ」

佐藤さんが明るい声を出したが逆に霧人は顔をしかめた。

避難所ってことはなんか偏狭なイメージしか持っていない。

何日かあとに来た人にはサービスを供給しないような。

下手すればこっちが喰われかねないようなイメージがある。


しかし、このグループ的には避難所に行くほうがよいかのように傾き始めていた。

霧人としては全体の和は乱しくないと考えた。

先日の勝手な行動その他etcによって今回は黙って従うことにした。

―――まさか、こんなの俺の偏見だしな……


出発はイレギュラー対策のため、朝の日の出と同時に出発。

移動方法は避難所へ吸血鬼を連れて行かないように徒歩。

各自、リュックに自分のための水、食料を携行。

治療するための品はある程度の知識があるという常盤義姉と佐藤さんに慎太郎の三人が持つ。




避難所は小学校。

このマンションから僅か2Kmに位置する。

藤岡第一小学校。

霧人はそこに行くのは先ほどの理由とは別にもう一つの理由で行くことを躊躇われた。

―――そこって俺の母校じゃねーか…




――― 霧人の小学時代 ―――


一年生

夏休みの次の日。

将来の夢の発表。

教卓に立って発表しているのは霧人。

「僕の将来の将来の夢はナマケモノになることです。

理由は働かなくてもいいからです。」





―――小学生からニート宣言って…俺はどうなってんだ。いや、まて

俺が卒業したのは約9年前だ。

それぐらい経ってりゃ、あの時の先生は誰一人としていないだろう。

霧人は祈った。


黒田が腕を組みながら歩き

「まさかアンタが知ってるなんてね…」

「ああ、俺の母校なんだぜ」

「まぁまぁそうだったの」

義姉が言う。そういえば話してなかった。



「そこそこ広い学校でな。俺が入ったときは創立3年ってとこだったかな」

「うちの学校は築何十年かでボロボロだったよ」

沼田が腰に差した木刀の柄に手を掛けながら言う。

「そうだったんだー」

田中は適当な相槌を打つだけであった。

学校に近づくと吸血鬼が激増した。


「こっちはけが人なんだ!どけ!バカヤロー!」

警棒を振り回しながら霧人は来た吸血鬼を殴り倒す。

音を立てずに移動すればよかったのだがうっかり沼田が腰に差した木刀を電柱にぶつけてしまったのだ。

「義姉さん、何やってんだ!?」

義姉は一番後ろで戦わずに缶コーヒーを飲んでいた。

「頭が疲れた」

何言ってんだ!?この人!!!


「ま、冗談はここら辺で…」

義姉はリュックから瓶を取り出して吸血鬼に投げつけた。

すると吸血鬼が燃え上がった。

「ね、義姉さん?」

「沙織ファイヤーってね」

笑顔を浮かべながら同じ瓶をもう二つ取り出し投げる。

吸血鬼は目が見えていないので勝手に互いにぶつかり合って引火させあっていた。

「なぁ、あやめ。俺、ゲームやめるよ」

「視力が悪くなってもああはならないと思うわよ?」

あやめは冷静に霧人にツッコむ。


すると大きな破裂音が響いた。

知らない人が黒い筒を持って構えていた。

そこからは煙が出ていた。

―――猟銃か!?

霧人は自分しか知らない武器、警官から取った拳銃に手を伸ばそうとするがやめた。

その人はこっちに来るように手を振って叫んだ

「こっちだ!避難所はこっちだ!」

霧人たちは迷わずにその人のほうへと駆け寄った


「お前、噛まれてないよな?」

銃を霧人に男は向けた。

「えっと…たぶん…ワーっまった!噛まれてない噛まれてない」

わざとらしく体中に触れる霧人に向かって銃を突きつける。

別に身体に銃口を密着させてきているので逆に奪う術を知らないわけでもないが練習なしで本番はしたくなかった。


「こっちだ」

男はたぶん手製だと思われる発煙弾を道にばら撒くとついてくるように言った。

「信用できるの?」

「知るか」

ひそひそと話しかけてきた相沢を一蹴する。

というかひそひそ話というのは人間にとって聞きやすい音の波長だからしい。

ようはめっさ聞こえやすいらしい気を付けたほうがいい。


校舎が見えてきた。

懐かしい桜が大量に表の道に植えられていた。

ま、この季節では雪に埋もれているのだが。

懐かしき校門をくぐり校内へと入った。


「感想は?」

高木が桜の枝を霧人に向けながら言う。

「小さいな」

過去に行った場所が思ったよりも小さいことはよくあることだろう。

敷地の境目には大型車などを持ってきて塀にしていた。

花壇には作物を植えていた。

完全に長期間、保つための体制を敷いていた。

「これは、予想以上に視線が痛い」

辺りから視線が俺らに向かってきている。


ひそひそ話で「あいつら、感染者じゃね?」「あの男の視線いやらしーわ」

などという嫌な会話がバンバン俺の耳に入ってきた。

―――だから、ひそひそ話は聞こえやすいんだって


「モテなさそうね(笑)」

この場でモテなさそうなのは…女子陣は一応二流、一流の集まりだし、慎太郎は頭よさげでモテそうだし。

となるとここでモテないのは田中と俺ぐらいだろ。

となると…


「誰じゃぁぁああ今の奴!!!」

田中と霧人は振り返って指を指す。

しかし、黒田にぶたれる。

「急に何わめいてんのよ」

「だってぇだってぇ…」


「キモッ」


この呟きで田中も一緒になって叫ぶ。

「誰だ!今の奴!出てこいやぁ!」


「すみません、とりあえずコッチに来てくれ」

さっきの銃を持った男が言う。

中は空き教室であった。


「ここの教室は空いてるから自由に使ってくれ。外出の際は言ってくれ」

「いいのか?」

「だから空き教室だといったろ 常盤霧人君」

「…?何で名前しってるんだ?」

銃を持った男は銃を肩にかけると笑いかけていった。


「俺は中村だよ。覚えてないか?」


―――やばいな。見事に忘れてる。誰だっけ…中村?しらねーよ!

   だが庇ってやろうか。かわいそうだし

「ああ、ナカムラ君か。いやー、なつかしいな」

「お前、覚えてないだろ」

中村はそう言うと教室から出て行った。


「中村ってことは血縁者とかってことはないかな」

佐藤さんが呟いた。

またしても暗い雰囲気となってしまった。

慎太郎は机に腰を掛けると言う

「霧人、明日はどうする?」

「明日は食料集めと武器収集だ」

「武器?」

「ああ、ここも長くは持たないだろう。さっきのヒソヒソ話してた中で追い出そうなんて言ってるやつもいたんだ」

「冷静さを失っても聞いてたのね…」

「それで近くにあるのか?食料が集まりそうなところは?」

「ああ、そこは大丈夫。少量を集めていこう。」

霧人はここら辺の道を思い出そうと頭を捻る。

するとドアをノックする音が聞こえた。


霧人は身構えた。

さっきの連中のように霧人たちを歓迎していない連中かと思ったからだ。

しかし、入ってきたのは女性であった。

歳は20代くらい?10代後半にも見えなくもない。


「君ね。さっき来たのは…身体を見せてもらえるかしら?」

霧人は口をポカンと開けていた。

―――待て。霧人、落ち着くんだ。顔をチェックだ。

顔は悪くはなかった。

タイプはかわいいタイプというよりは美人さんタイプだな。

これだけで俺は十分だ!


「いや、待て俺…早まるな!」

「何を言ってるのかしら?」

女性は引いたような顔をしていた。

「え?いや、ああ、治療ですか」

治療の道具を持っていたのを見て霧人は判断した。

苦笑いをしながら頭を掻いて霧人は思う。

―――男子高校生は嫌だな


「うっわ、凄い傷ね…明日は絶対安静よ」

「いや、けど明日は散策に…」

「駄目よ。あなたはもう私の患者なんだから」

霧人の傷の様子を見ながら女性は言った。

「坂本よ。よろしくね」

「こちらこそ」

霧人は坂本と握手をした。


「君たちには説明しないといけないことがあるの…」

「よぉ、元気かい。新しくやってきた方たち」

金髪の男が入ってきた根性と書かれたダサいTシャツを着ていた。

その時、坂本さんがビクッとしたのを霧人は見過ごさなかった。

「ちょっと、坂本ちゃんを借りるねー」

強引に男は坂本さんを連れ去っていった。

腰にホルスターをつけていて、ナイフを二本、携行していた。

それも大型ナイフだ。

「追うか?」

慎太郎は神妙な顔つきで言ったが霧人は首を横に振った。

「立場を悪くするようなことはするな」

「けどあの感じは明らかに嫌な感じだったわよ」

あやめがそう言うが

「下手に動いて、事態を進行させてしまうのは危険よ」

「あの連中がどんな人間でここがどのような状況下はいずれ分かるわ」

義姉こと沙織がそう言った。

沙織は教室の端っこでPCのキーボードを叩いていた。


「ま、待ちましょうや。決めつけるのはよくないさ」

霧人はもうあいつらは女性をゲヘゲヘ的なことをしていると決め付けていた。

それとは別なこと言ったのは今すぐに動きたくなかったからだ。


「今は休みましょうや」


ここにいる全員は疲れている。

肉体的かつ精神的にもだからこその休息である。


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