この素敵な世界に祝福あれ!
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──この素敵な世界に祝福あれ!
リーゼのお腹はすっかり大きくなった。
「ジンが準備してくれたこの服もとても使いやすいね」
「うん。リーゼには無事に出産してほしいから」
リーゼにプレゼントしたのはマタニティウェアだ。妊娠したお腹を支える妊娠帯やゆったりとした服をリーゼにプレゼントし、リーゼは気に入ってくれていた。
「そろそろ出産が近いですね」
そんなリーゼを診察したエレオノーラさんはそう告げる。
「本当ですか?」
「ええ。元気にお腹を蹴っていますよ」
「おお」
リーゼはここ最近やはり辛そうにしていたが、出産が近いことに俺とともに喜ぶ。リーゼを地球に連れていけたら産婦人科で赤ちゃんが男の子か女の子が分かるのだが、そこら辺は楽しみにしておくとしよう。
今はリーゼが疲れすぎないように俺も支えないと。
「食欲はどう?」
「お腹は減るねぇ~。しっかしふたり分しっかり食べないと!」
「あはは。そうだね。今のリーゼはふたり分食べないと」
出産が近づくと食欲が増えるそうだが、これは無事にリーゼが出産できる吉兆と考えていいのだろうか?
リーゼが身重な今は料理当番は俺が常に務め、リーゼのために食事を作る。妊婦が食べてはいけない食材や食べたほうがいいなどを調べながらの日々だ。
そして、ついに──。
「ジン……。生まれそう……」
「了解! すぐにエレオノーラさんを呼ぶよ!」
リーゼが産気づき、俺はエレオノーラさんを自宅に呼んだ。エレオノーラさんはてきぱきと出産に向けた準備を進め、それらからリーゼの出産がついに始まった。
「ジン、そばにいて……」
「もちろんだよ。ここにいるから」
俺はリーゼの手を握り、リーゼを励ました。
それからリーゼの苦しい奮闘が始まり、俺も体感時間がひどく長く感じる中で赤ん坊の声が響いた。
「産まれましたよ。女の子です」
「おお!」
エレオノーラさんが取り出した赤ん坊を俺たちに見せ、俺とリーゼは汗びっしょりながら赤ん坊を見て満面の笑顔を浮かべた。
「女の子なら名前はアーデルハイトだね」
「うん。無事に生まれてくれてよかった……」
俺たちは赤ん坊を抱き、一緒に喜びを分かち合った。無事にリーゼは出産を終え、ここに俺たちの子であるアーデルハイトが生まれたのだ。
しかしながら、まだまだこれからが大変なのである。
これからは無事にこのアーデルハイトを育てていかなくてはならない。俺とリーゼの愛の結晶だ。大事に大事に育てていきたい。
「ベビーグッズはいろいろ準備しておいたからふたりでこの子を育てようね」
「ありがとう、ジン」
ベビーベッドやベビー服などをこの日に備えていろいろと準備していた俺。
これからアーデルハイトが不自由なく過ごせるようにしたいものだ。
* * * *
時が経つのは早いもので、リーゼの出産から3年。
アーデルハイトも3歳になった。
「アーデ。お片付けしないとだめでしょう?」
リーゼはアーデルハイト──今はアーデと呼んでいる──が、俺がプレゼントした知育玩具のパズルを散らかし放題にしているのに渋い顔をして注意している。
「はーい」
もうアーデはある程度の言葉は喋るようになったが、その意味を理解しているかは微妙なところ。まだ俺たちの真似っこをしている感はあった。
実際、リーゼの言葉にはいといったものの、おもちゃの片づけはせずにそそくさと家の外に出ようとしている。
「こら、アーデ!」
「はーい!」
リーゼはため息をつき、俺の方を見る。
「ジン。あの小さなモンスターを見ててくれる? 私はこれを片付けるから」
「了解だよ」
俺はアーデを追って外に出る。
村には自動車はなく、たまに自転車が走っているくらいなので危険は少ない。それに村の人がアーデをよく見ていてくれるので、その点でも安心できる子育て環境だった。
「アーデ! どこに行くんだい?」
俺はアーデに追いつき、彼女にそう尋ねる。
「パパのところ!」
「パパはここだよ?」
「ううん」
アーデは首を横に振るととてとてと進んでいく。
「どこに行くんだい? そっちは……」
「パパのところー!」
アーデがそう言って指さすのは──。
「え? アーデ、もしかして扉が見えているのかい?」
「ふっふー!」
アーデが指さしているのは異世界につながる扉に他ならなかった。
これまで俺以外の誰にも認知できなかったそれを、アーデは認知していたのだ。
「パパのところ、いける?」
「ああ。多分ね。ママと相談してからいくかどうか考えよう」
俺はアーデを抱っこするとそう言い、家に向けて戻る。
いやはや。アーデが異世界の扉を認知できるようになるとは。
いずれはアーデが異世界と地球をつなぐようになるのかな?
俺はそう思いながら俺がアーデを抱っこしたまま帰るべき異世界の家に戻り始めたのだった。
俺が異世界に作った居場所は、今では何よりも重要な場所だ。
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本作品はこれにて完結です! お付き合いいただきありがとうございました!




