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結婚式に向けて

……………………


 ──結婚式に向けて



 俺はまず何をおいてもリーゼに正式にプロポーズするために指輪を買いに向かった。


 俺が選んだのはやはりダイヤの指輪。少し古典的ながら、ダイヤの指輪で結婚を申し出ることに憧れていたのだ。


 それに今の俺は15億円の持ち主。愛する人への贈り物でケチになる必要もない。


 俺はリーゼのために指輪を購入したのちに、他に何か必要なものを考える。市内の繁華街を見渡していると花屋を見つけた。


「花束をプレゼントというのも……ロマンチックかも」


 俺はそう思って定番の小さなバラの花束を購入したのだった。


 これらをもっていざ異世界へ……!


「……さあ、リーゼに告白するんだ。必ず……」


 俺はそう覚悟を決めてリーゼの小屋の方に向かう。


「リ、リーゼ。話があるんだけど」


「うん!」


 リーゼの方は俺が何を言い出すのかを分かっている顔だった。目を輝かせ、わくわくした様子で俺の方を見ている。


「リーゼ。俺と結婚してほしい!」


 俺はばさりとバラの花束を差しだして、そう言った。ついに言ったのだ。


「もちろんだよ。結婚しよう、ジン!」


 リーゼは満面の笑みでそう返事をしてくれた。


「ありがとう、リーゼ。これで本当に結婚できるね!」


「うんうん! こんなに綺麗な花束まで用意してくれてありがとう!」


 リーゼは俺が手渡したバラの花束を受け取り、その香りを嗅いだ。とても嬉しそうなリーゼの姿を見て、俺はとても安堵していた。そして、この愛する人と結婚できることに最高の喜びを感じていた。


「よーし! じゃあ、アルノルト様に結婚について報告しに行こう!」


「そうだね。結婚式の相談もしないと」


 リーゼがそう言い、俺も頷き、リーゼとともに城に向かった。


 城について応接間に案内されるとアルノルトさんとニナさんがやってきた。


「今日はどうしたんだい、ジン君、リーゼロッテ君?」


「はい。報告したいことがありまして……」


 俺はアルノルトさんの問いに照れながらも話し出す。


「自分とリーゼは結婚することにしたんです」


「まあ、本当ですか?」


「ええ。告白ももう済ませていて。あとは結婚式を挙げるだけなんですよ」


 ニナさんが驚くのに俺はそう後頭部を掻きながら話した。


「そうか、そうか。なら、結婚式は私も手伝おう。証人が必要なのだろう? 私が喜んで引き受けるよ」


「ありがとうございます、アルノルト様」


「それで、具体的にいつ頃式を挙げるつもりだい?」


「そうですね。まだ準備に時間がかかりそうなので、3週後にはと思います」


「分かった。では、その予定でやろう。改めておめでとう、ジン君、リーゼロッテ君」


 アルノルトさんとニナさんに祝福されて、俺たちは結婚式の準備を始めた。


 まず準備すべきはリーゼのための白のドレスだ。リーゼにはちゃんとしたウェディングドレスを準備したい。


 そんなときにクリストフさんが村を訪れた。


「クリストフさん。お願いがあるのですが、いいでしょうか?」


「ええ。ジンさん、なんでしょうか?」


 珍しく俺からお願いを申し出るのに、クリストフさんが興味深そうに聞く。


「実は自分とりーぜはこの度結婚することになりまして、ウェディングドレスが必要なんですよ」


「おお。それはおめでとうございます! しかし、ウェディングドレスですか。フリーデンベルクでならば準備できると思いますが」


「それならフリーデンベルクでドレスを作りたいと思います。お店を紹介してもらうことは可能でしょうか?」


「もちろんです。任せてください。紹介状を書きますよ」


 クリストフさんはそう請け負ってくれ、すぐに紹介状を準備してくれた。


「この紹介状を持っていけば、すぐに対応してくれるはずです。改めておめでとうございます」


「ありがとうございます。すぐに作りに行ってきますね」


 俺はそれから久しぶりにリーゼとともにフリーデンベルクに向かう。


 フリーデンベルクでは一応宿を取り、それからウェディングドレスを作ってくれる仕立て屋さんに向かった。


「いらっしゃいませ」


 結構お高いお店なのか、上品そうな感じの店員さんが出迎えてくれた。


「こんにちは。クリストフさんに紹介されてきました。こちらの紹介状をどうぞ」


「拝見します」


 店員さんはそれから紹介状を開いて確認する。


「確かに拝見しました。ウェディングドレスを作られたいとか?」


「はい。お願いできますか?」


「もちろんです。お任せください。まずは採寸から始めましょう」


 リーゼは採寸のために店の奥に向かい、俺はリーゼのドレスができるまで待つことに。どんなドレスになるのかと俺たちはわくわくしていた。


 それから採寸が終わり、まずはドレスの見本を見ることに。


「こちらが最近の流行のものです」


 そのドレスは地球のウェディングドレスと比べるとシンプルだが、かわいらしいものだった。リーゼもすぐに気に入ったようで笑みを浮かべている。


「これがいいよ、ジン!」


「よーし。じゃあ、これに決まりだね。あとはリーゼのサイズにあわせて作ってもらうだけだ。出来上がるのが楽しみだよ」


「そうだね~! 私も楽しみ!」


 俺とリーゼはドレスができる間、フリーデンベルクに滞在することになり、その間に招待したいお客さんに手紙を出すことにした。


 テレジアさんやユリウスさん、来れるか分からないけどゲオルグさんにも手紙を出した。それからウルリケさんは直接誘いに行くことに。


「リーゼ。結婚するんだね。羨ましいなぁ……」


 ヴォルフ商会のフリーデンベルク支店ではウルリケさんがそんなことを言っている。


「えへへ。結婚式には来てくれる?」


「もちろん。友達として祝わせてもらうよ!」


 ウルリケさんはそう言ってリーゼと一緒に笑いあった。


「最近、支店の方はどうですか?」


「ええ。順調ですよ。やはり売り上げの大半はノートやボールペン、それにコーヒーなどですが他の商品もクリストフさんがあちこちに営業してくださっていて」


「ほうほう。それは何よりです」


「それから王都からもお客さんが来たりしていて、王都に店を出す予定はないのかとよく尋ねられますね」


「王都ですか……」


「まだ予定はありませんか?」


「残念ですがありませんね……」


 王都まで手を広げるのは時期早々に思われる。まだフリーデンベルク支店を回すだけで人員も物流もあっぷあっぷなのに王都まで店を出すのは、流石に無謀としか思えなかったからだ。


「そうですか。ですが、大丈夫ですよ。いい品にはお客さんも遠くからやってくるとクリストフさんも言っていましたから」


 ウルリケさんはそう言ってくれていた。


「では、改めて結婚おめでとうございます、ジンさん、リーゼ。結婚式には必ず伺いますね」


「はい!」


 俺たちはウルリケさんを誘う終えると宿に戻った。


 ウェディングドレスはもう少しで完成だそうだ。


……………………

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