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第21話「GUN&Roses」

「ミーシャちゃん、クリス君! 頭を下げて!」


 ママの声が響く。


 その直後、耳を塞ぎたくなるような騒音に襲われた。

 バラバラバラバラバラバラッ!


 銃撃音。

 夜の静寂を切り裂く銃撃音と共に、バリンバリンッと窓ガラスが次々と割れていく。照明も壊されて、急に辺りが真っ暗になり。見える光といえば、相向かいのマンションにいる襲撃者の、銃を撃つときにチカチカと光るマズルフラッシュだけ。


「きゃあっ!」


「な、なんだ!?」


 悲鳴と戸惑いの声を上げたのは、私とクリスだ。二人とも情けなく頭を抱えて床に転がっている。


「二人とも大丈夫!? 怪我はない!?」


 そこに鋭く響くママの声。

 未だに降り注ぐ銃弾の雨。そんな中、ママはダイニングテーブルの下を滑りぬけて、私とクリスの元へと近づいてくる。


 バラバラバラバラバラッ!


 食器が割れる音。テーブルやイスが壊れる音。そろそろ買い替えたいと思っていたテレビは倒されて、子供の頃からあるソファーは穴だらけになっているだろう。穏やかな食卓など、すでにどこにもなく。私たちの生活していた空間が、次々と壊されていく。


 だが、それでも黙っていないのが。

 私のママだ。


「なろー、舐めやがって!」


 チッ、と舌打ちをしながら、キッチンの下の棚に滑り込んでいく。


 そして、ばこんっと棚の扉を蹴り壊す。

 蝶番から壊れた棚に手を伸ばして、そこにあるものを引っ張り出す。何を隠しているのか、知っている私はたいして驚かない。


 それに比べて、クリスはさぞかし驚いた顔をしていることだろう。


「ミーシャちゃんっ!」


 ママから放り投げられたのは、ずっしりと重い金属製の銃。

 モデル『M1911』と呼ばれるハンドガン。45口径の銃弾を、7発装填できる。私は教わった通りの手順で、残弾を確認する。マガジンを開放させて、ちゃんと弾が入っているのを見てから、マガジンを戻す。銃のスライドを開放させて、初弾を装填してから、安全装置を解除。


 ボロボロになったダイニングテーブル。その横に伏せながら、隣のマンションに向けて狙いをつける。


 そして。撃鉄を起こして、引き金を絞った。


 バンッ、という銃声が私の手元から響き、放たれた銃弾は暗闇に吸い込まれていく。そのまま、襲撃者がいるであろう場所に目掛けて、二度、三度と引き金を絞る。


 反撃があったことに驚いたのか、向こう側の銃声が止む。


 その隙を見計らってか、ママが取り出したもう一つの銃。ライフルタイプの猟銃を取り出しては、わずかに狙いを定めて撃つ。


 ダンッ、ダンッ!

 次弾を装填する度に薬莢が宙を飛び、辺りに火薬の匂いが充満する。


「このクソ野郎が! 私たちの穏やかな生活を邪魔しやがって! 万死に値する!」


 汚い言葉を吐いているのは、ママだ。

 私よりも慣れた動作で、次々と銃弾を放っていく。


 すると、向こうのマンションから互いを罵りあうような声がかすかに聞こえてきた。きっと、反撃されるなんて考えていなかったのだろう。だが、それでも。あちらさんはやる気のようで、再び向こうからの銃撃が始まった。


 バラバラバラバラバラッ!

 ダンッ、ダンッ!


 もはや銃撃戦の様相となりつつある。敵の銃撃に、私は身を隠して、ママが床を滑らせてくる予備のマガジンをポケットに捻じりこむ。


「ほら、さっさと顔を出しなさい。その眉間にヘッドショットをブチかましてやるから!」


 これも、ママの声だ。

 物陰に隠れながら、手元を見ずにボルトハンドルを引いて排莢している様子など、歴戦の兵士にしか見えない。これで、本当にただの主婦なのだから恐れ入ってしまう。


 私も隙を見て、何とか反撃しようとする。

 だが、向こうの攻撃は止むことはなく、膠着状態になりつつあった。


 そんな時だった。

 どかんっ、我が家の玄関が壊れる音がして、二人の男が入り込んできた。見覚えのある黒服の二人組だった。


「殿下っ! 大丈夫ですか、殿下っ!」


「あの連中。こんな街中でトンプソンのフルオート射撃とか! 常識がないにもほどがあるぜ!」


 クリスの護衛の黒服たちだった。

 今までどこにいたのか、と疑問に思っていたが、実は気づかないうちに近くにいたらしい。

 突然、銃声がして大慌てで駆け付けようとしたけど、この家の玄関をピッキングで開けるのに時間がかかって、最終的には鍵を壊して入ってきた、と。それらのことを早口で説明しながら、黒服の一人はクリスを守るように銃を構える。


 そして、もう一人の黒服。

 暗闇にも関わらずサングラスをつけている黒服は、そのスーツの内側から最新鋭のサブマシンガンを取り出した。それから、ようやくサングラスを外す。


 その瞳は、青く輝いていた。


「悪いが、これも仕事なんでね。ウチの殿下の恋路を邪魔した罪は重いぜ」

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