お爺ちゃんになってから湊に出会えても俺は仲良くなれる自信はある(笑)
【ガラガラ〜】
「あ、お疲れ様です。すみません、遅くなりました。」
「お、来た来た〜。全然大丈夫。
学園祭の話し合いっしょ。」
「はい、クラスの出し物について話し合ってて。中々決まらなくて…。先輩のクラスは決まったんですか?」
「俺らはもう3年目だよ?もう余裕!余裕!
秒速で決まったよね。あ、今日俺もセリフやる〜。」
「びょ、秒速…。あ、有難うございます。
え〜とここから今回はお願いします。」
「終わった〜。喉疲れた〜。」
「掛け合い、有難うございました。」
「おう!やっぱ意外と楽しいよな、これ。
しかもさ、やっぱり俺結構上手くない?」
「はい、そう思います。」(棒読み)
「だってさぁこのセリフもだけど…」
あ、始まった…。今日は何十分続くんだろう。
いっそのこと、このまま静かに帰ってみようかな。いやそれがいい、我ながらいい考えを思いついたかもしれない。
「おーい!聞いてる?絶対帰ろうとか思ってたでしょ。それに嘘でもいいからセリフん時みたいにもっと感情込めてそう思うって言ってほしいんだけど〜。」
げっ、バレてたか。くっ…帰るかどうか迷わずに素直に行動に移せばよかった…。悔しいが、次回に活かそう。
「も〜、俺はこの後の時間が楽しみなのに〜。」
「か、帰りませんよ!
さ、おしゃべりタイム始めましょ、先輩。」
「おっし、そーこなくちゃ。じゃあ兄弟はいるの?」
本当にこの人は私よりも年上なのだろうか。
「下に弟が2人います。…って1ヵ月も経ってこの質問って何か変な感じですね(笑)先輩はいるんですか?」
「いや俺も思った(笑)まぁ、細かいことは気にせずにいこーぜ!んーとね、俺は兄貴が1人いる。」
あ、お兄さんいるんだ。しっかりしてるし、下にいると思ってたけど、確かに甘え上手だもんな…。
「にしても、2人か〜。俺がいうのも何だけど、大変そうだな。何歳離れてるの?」
「7歳差と12歳差です。あまり喧嘩とかはしないんですけど、両親が共働きなので幼稚園にお迎えに行ったりとかはしてました。」
「あ、そうなんだ。フッ、お姉ちゃんしてんだ、意外だわ(笑)」
い、意外って…!
「だって俺には結構冷たいっていうか、何か壁あんじゃん?」
「いや、冷たいって…。え、ていうか私今、気持ちを口にしてないのに…!?」
「フッ、顔に書いてあんの〜。意外とか失礼だなーって。お姉ちゃんってもっとこう、にこにこで話聞いてくれたり、お嬢様な雰囲気を醸し出してるイメージだからさ、俺。」
「い、いやどんなイメージ持ってるんですか(笑)
それは流石にドラマや漫画の見過ぎです(笑)」
それにしても最近気持ちを読んだかのように言葉が返ってくることが多く本当にびっくりしている。本当はこの人は、スポーツ選手とかじゃなくて、魔法使いを目指してるんじゃないかと疑いたくなるほどに。
「そーいや、草華はアニメとか観んの?あ、でもセリフの練習するくらいだもんな、アニメ観るか!」
「アニメ観てるだなんて見た目に似合わないですよね…。」(ボソッ)
「ん??」
「あ、いや何でも無いです。あ、えーと映像作品の鑑賞は好きですよ。先輩はテレビとか観るんですか?何かずっとスポーツやってるイメージあります。」
「いや、俺どんなイメージよ(笑)俺だって観るよ。何なら好きだよ。ドラマも、アニメもバラエティーとかも。あーでもスポーツ観戦系のはあんまし観ないかもな。」
「え、逆にですか?」
「だってやりたくなっちゃうじゃん?観てると無性にやりたくなっちゃうんだもん。だから観ないようにしてる。でも勉強ができる側の兄貴や湊には『何でそれでスポーツが出来てんのか意味がわからない』ってよく言われるけどね(笑)」
お兄さんは頭脳派なんだ。
それに湊…あ、蒼乃先輩のことか。
「蒼乃先輩と本当に仲良いですよね。」
「そうだね、ん〜もう15年くらいの付き合いなんじゃかな。幼稚園の頃からだし。家族ぐるみってやつ。」
「15年…。すごく長いですね。」
「確かに数字にしたら長いけど、俺は別に仲の良さって数字じゃないと思うんよね。いくつになっても本当に仲のいい人には出会えると思ってる。それが仮におじちゃんとかもうお爺ちゃんとかになったとしても。俺はその出会いが運良く早かったってだけ。まぁもしまだ俺が湊に出会ってなくて、お爺ちゃんになってから湊に出会えても俺は仲良くなれる自信はある(笑)多分湊もそうだと思うよ(笑)」
「すんごい自信…。でも何でそんなに蒼乃先輩のこと信じれるんですか?そんなの蒼乃先輩、本人に聞かないと分からないじゃないですか。」
「確かに、何でかって聞かれると上手く伝えられないけど…でもそう思う。まぁ湊のやつ、絶対俺のこと好きじゃん?(笑)めっちゃ伝わってくるもん、俺に対する愛が(笑)」
立花先輩は本当に凄いくらい蒼乃先輩のことを信じている。多分蒼乃先輩も。
でも立花先輩と一緒にいたいと思う蒼乃先輩の気持ちは、どこか私にも分かる気がする。それが恋愛感情であるかないかは置いといて、本当にそう思う。
立花先輩といると気持ちが明るくなったり、どこか突き進んでいこうと思える。まるで自分が明るい人間へと変わったかのような…。蒼乃先輩にも立花先輩をそう思わせるようなそんな力を持っているのだろう。
私には無い、そういう力も、互いを高め合う友達も。当たり前だ。何も無い人間が立花先輩達のような関係を作れるはずがないのだから。
好きを好きと言えず、自分の好きなもので、友達をそしてその周りの関係さえも壊した私が…。
「あ、もうこんな時間か。ウッシ帰るか!今日もありがとな!」
「そうですね。こちらこそ有難うございました。」
【ガラガラ〜】
「あ、まだ早いかもだけど学園祭のスケジュール分かり次第教えて!俺のクラスに遊びに来てよ、絶対!ちゃんと草華のクラスにも遊びに行くからさ〜。」
「考えておきます。」
「うわっ(笑)何だよ、それ〜(笑)
先輩の最後の学園祭だぞ?
お願いくらい聞いてくれたっていいじゃんか〜。」
【パシャっ】
「は、何あれ…。」




