最終話 それが勇気というのなら…
「た、確かに。でもあの時は本当に人がいるだなんて思っていなかったので、心臓が止まったんじゃないかってくらいびっくりしたんですから!」
「っフ、確かに。あん時の顔は今でも思い出せるくらいマジの驚き顔だったわ。」
あれ、そういえばまたいつの間にか普通に話してる。
「でも…こうやって今普通に話せてよかったわ!…って、っフなんでそんな驚いてんの。」
「い、いやだって…」
だって今ちょうど同じことを考えていたから…。
「前にさって言ってもお正月くらいの話なんだけど、草華が寂しくなるんじゃないかって言ったけど、普通に俺の方が寂しかったわ、当たり前ってマジでないんだな!めっちゃ思い知らされたわー。」
ぬわっ、ま、またしても顔が赤くなることを平然と…もうなんて反応すればいいか分からなくなってきた。
「っフ、そういえばあの発表祭…普通に泣きそうだったんだけど。俺なんか勉強できないし、サッカー出来なくなればなんも残ってないような人間がこんなに感謝されることがあるんかって思ったわ!だから終わった後、涙目になってないか怖くなって人影に隠れてたし、連絡もしようと思ったんだけどなんか照れ臭くなちゃって伝えられなくてって…なんかすまん俺結構最低なことしたかも。てか、そんな草華が思うほど俺なんもしてないからね!変わろうと頑張ったのは草華自身。俺はなんもしてない。むしろ俺の方が草華の言葉一つ一つにたくさん救われた。むしろ俺が感謝伝えなきゃいけない立場なのに、胸が苦しくなるくらい感謝されるとはな…。」
違う、そんなことない。先輩…立花先輩は私にたくさん勇気と変える機会をくれた…。
「俺さ、めっちゃ好きな漫画があるんよ。」
「え、…急に何の話ですか!」
「そん中の俺の好きなキャラの好きな言葉っていうかシーンなんだけど…」
無視かい!せっかくいい感じだったのに…
「『僕はあなたを救うためのモノもそして動ける体ももうありません。でもまだあなたの力になりたいと思ってしまう自分がいる。もしあなたを今救えるものが…それが勇気というのなら…もしそれであなたをまだ救えるのなら喜んでお渡しします。だから絶対に生きてください。』ってやつでさ…」
そんな詳しくセリフ暗記してるって相当好きなんだ…ってあれ、どこかで聞いたことのある言葉だ。
「彼は自分を犠牲にしてまで、全力で応援するかっこいいやつなんだけど、何より自分の存在が誰かの影響力になってるのがまじでかっこいいって思えたんだよね。前に草華がスポーツ選手の他になりたいもの聞いたじゃん?実はこのキャラになりたかった。俺も俺の何かで少しでも誰かの影響力になりたかった。流石に言うの恥ずかしいし黙ってたんだけど、まぁ卒業だし?って感じで黙ってたことを正直に今日は伝えようと思う…二シシッ!あ、久しぶりに質問しあお!…って草華?聞いてる?まぁ流石にアニメのキャラになりたいだなんて引くよな…。」
嘘…トゥビボ…じゃん。私が声優を目指すきっかけになった漫画が好きだったんだ。
あぁ、もう、何で今その話をするの。ずっと隠してたのに、見ないふりしてたのに…もっと立花先輩と話したい…そんな欲の詰まった気持ちが溢れてしまいそうになる。もっとセリフ練習も、その後にある謎の質問タイムも、そしてこの漫画の話もそれが難しいなら世間話だってなんだって…とにかくもっと…もっと今までみたいに話したい。でも分かってる、もう先輩とは普通に会えない。一歳という年の違いでこんなにも悔しく、辛い気持ちになるなんて知らなかった。いや先輩に会わなかったら、そもそも何もかもわからないまま、気づかないまま、そして何も変わらないまま高校生活が終わっていただろう。高校だけじゃない…きっと大学へ行けても、そして大人になってまでも…。先輩は、私を何もかもを変える勇気をくれたんだ。
「なれてますよ…。」
「ん?」
「なれてます!立花先輩は、先輩のなりたかったドラトスになれてます!私は立花先輩に勇気という大きなものをもらいました…本当に…。感謝しても…しきれないくらい…先輩の言葉1つ1つが私を変えるきっかけを作ってくれたんです…。だから…何もしてないだなんて言わないで…だって、だって…」
あれ、さっきまで話せてたのに…上手く言葉がまとまらない。今日で最後なのに。感謝をちゃんと伝えたいのに。
様々な思いがうまれ、散らかっていく私の心の中。整理して、気持ちを伝えたいけど何から選べばいいのか分からない。ただただ心という部屋が散らかっていく一方だった。
「ッフ、珍しくセリフみたいに感情込めまくってんじゃん!」
「冗談やめて下さい!セリフ以外に感情的になることくらいあるんです!!うぅ…」
「ちょっ…わかったから泣くなって。ごめんごめん。」
先輩の前で泣きたくなかったのに。最後だから笑顔で話して、笑顔でさようならを言ってそれから…。さらに感情がうまれ心の部屋が散らかっていく中、私の頭が何度か重くなるのを感じた。
「やめて下さい、髪の毛崩れます。」
「ッフ、今日はやけに感情が忙しいなぁ…。でも今日は正直にはなるけど言うことは聞いてやんない!最後だしな。最後くらい先輩のやりたいことをやらせなさい!」
「なんですか、それ!そんな上だからとか関係な…って先輩?」
「…そっか…なれてたんか…俺…。」
ん、今先輩なんて言ったんだろう。聞こえなか…って、あれ
「な、何で先輩泣いてるんですか!?」
「あれ、うわっ、本当だわ。卒業式泣かなかったのに…。うわ~草華のせいだな、これ。でも言い遅れたけど俺こそ草華に出会えたことに感謝してる。自分の狭かった考えを広げてもらったし、それに夢まで叶えさせてもらえたし。今度はサッカー選手って夢、海外で叶えてくるわ!」
「え、海外留学するんですか?」
「あ、そか。そういえば言ってなかったな。大学の入学式参加してすぐ出発になった。」
入学してすぐ…そっか、これから先もっと先輩はすごい人、誰かに影響を与える人になっていくんだ。じゃあもしここで別れを告げれば先輩とは完全に会えなくなるんだ。…でもここまで支えてもらった以上自分が今度は応援する側になりたい。先輩の邪魔にはなりたくない。
「そ、そうなんですね…。頑張って下さい!」
「何だよー。止めたりとかしてくれないわけ?」
「止めて欲しいんですか?せっかくのチャンス。それに止めるのは私じゃない誰かにしてもらってください。私は今まで応援していただいた以上に、立花先輩のこと応援したいので!」
「ッフ、ありがとな!でも草華ももう自分に負けずに頑張るんだぞ。自分の人生なんだ、誰がなんて言おうと自分の思う人生を歩んだ方がいいと思うんだよね。人生一度きりしかないのに、誰かのレールの上をただひたすら歩くだなんて誰のために生きてるのか分かんなくなるだろ?まぁ考えは人それぞれだと思うけど、俺はそう思う。だから最初っから諦めず小さいことから積み木のようにコツコツ積み上げていけばいいって思うんだよね。」
先輩のこういう人生に対する考え方が好きだ。毎回この言葉が私の人生に光をくれる。
「先輩に負けないよう私も声優の道を歩…いや、走り続けます!」
「歩くんじゃなくて、走るんだ…フフ」
「はい、じゃないと追いつかないんで!」
「なるほど、じゃあ、俺は追いつかれないようにしなきゃな。」
「ちょっ、何でですか!んじゃあ、早歩きでお願いします!」
あぁ、この時間が続けばいい。でももう終わりが近づいていることは分かってる。先輩もそう思わさせないように気遣っているように感じる。だけどね、先輩…空気で分かっちゃうよ。先輩の優しい笑顔の片隅に困っているような表情があることを見たくなくても見えてしまう。もう、この会話も…そして立花先輩と会うことも終わってしまうんだなって思いたくなくても、思わされてしまう。
先輩、先輩は、これを言ったらどう思いますか。でももうどうせ最後。最後になってしまうならもうどう思われてもいい。私も先輩のように今日だけは、この時間だけは後悔のない正直な自分でありたい。
「もっと先輩とこうして会って話したかったです。最初はなんか学校の人気者っぽいし、どんな人だろうって色んな想像しちゃって、警戒心丸出しだったんですけど、全然警戒するべき人じゃなくて。強そうにしてて、本当は人一倍考える優しい人だし、何でもこなしそうに見えて、でも本当は人一倍努力してる人だし。そんな先輩が本当に凄いなって頑張るってこういうことなんだなって憧れでした。でも本当は先輩とこうして会えなくなるのは寂しいけど、でもさっきも言った通り先輩の邪魔したくありません。だから…」
「いや…けど。」
「え?ごめんなさい、聞き取れなくて…」
「いや、邪魔してるなんて思ってない、というより思ったことないよ。それに…」
そっか、邪魔ではなかった、よかった。私は最後まで先輩の…立花先輩の友達としていられたんだ。それならよかっ…
「草華、俺はこれで草華と会うの最後にする気はないけど。だって俺、草華の…」
この後の立花先輩の言葉で私の頬は、一気に炎がついたかのようなそんな今まで以上の赤面になったのだった。
(『それが勇気というのなら…』おわり。)
「それが勇気というのなら…」最後までお読みいただき有難うございました^^
次回、特別話として草華と立花先輩との二人のその後についての投稿でこの作品は幕を閉じます!
どうしても夢を追いかけている二人の夢を追いかけ続けた結果(表現がややこしいくすみません(苦笑))がどうなったのか想像を文字にしたかったので、かかせてください!(笑)
そして、そこでまた改めて読者の皆様へ感謝のお言葉を綴らせていただきたいです^^
最後の特別話までお付き合いいただけたら幸いです!
よろしくお願いします!⛄




