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3月という幕が開け始めたころ

発表祭を終え日はすすみ、3月という幕が開け始めたころ、学校は今年度のラスト行事である卒業式モードへと徐々に染まりつつあった。

そのため今までセリフ練習として使っていた教室も、もの置き場のようなかたちで使われているため学校内でのセリフ練習は最近できていない。

家でセリフ練習をすることも今では可能だが、やはりどこかやりにくさを感じてしまって家ではやらないようにしている。その代わりアニメ鑑賞をしたり、自分のできる範囲で声優について、声の出し方についてなどを勉強している。


立花先輩とは、発表祭以降も連絡を取り合っていない。

まぁ、連絡をしないと言ってもカップルではないし?そこまで気にすることでもないだろう。

ただ以前までは当たり前のように連絡を取り合っていたからだろうか。

少し違和感というか…寂しさというか…心の中にぽつっと穴が開いたような変な気分ではある。


卒業式に在校生である私たちは参加しない。

参加できるとしたら、卒業生が退場する時の花道を作る時だけ。


このまま連絡のない日々が続いて、先輩も卒業。そして会うこともなくなるんだろうなぁ。

卒業式当日は、午前中で学校が終わり速やかに帰宅せよという学年主任の命令だ。

今更ながら、学年が違うということでこんなにも会うことが難しいことを知った。

正直、ちゃんと直接お礼とお別れを言いたかった気持ちはある。だけどそれはかなわないで終わるのだろう。発表祭で、向き合ってではないけどしっかりと気持ちを伝えられてよかった…と思う。


そんな感情というモノが散らかった状態の心を胸に隠しながら、私は明日行われる卒業式の準備を行っていた。

準備と言っても3、4人で1グループを作られ主に卒業式で使われるであろう場所全ての掃除。

3年生教室前の廊下、階段、3年生の下駄箱、体育館、体育館前などなど、ほぼ学校全体を大掃除していると言っていいほどの1、2年生だけの最初のイベント。

まだ、自分の心の中の掃除も終わってないのに…。

ダブルキングの卒業ということもあり、そのファンたちはダブルキングの卒業を受け入れたくない気持ちと気持ちよく卒業してほしいという感情の名前が付けにくい複雑な思いを胸に熱心に掃除を行っていた。


私が掃除している3年生の廊下は、以前までのにぎわっていた廊下とはまるで違っていた。誰も通らない静まり返った廊下。どこか寂しさも感じられるようだった。ほうきをはいたところで、出てくるゴミも少なかった。


「やっぱ、3年の教室は窓から見える景色いいよなー。今度は俺らがこの教室かぁー。」


そう言いながら窓の外を見詰める同じクラスの内田くんが入った教室は、立花先輩のクラスだった。

廊下からその教室を見るとまるでスポットライトのように夕日の光が窓から差し込んでいた。

教室の中に入ると本当に、窓という正方形で型どられた1つの枠から見える景色は、とてもきれいだった。

この教室に何度か来たことがあるのに、こんなきれいな景色は知らない。

立花先輩はよくこの景色を見ていたんだろうか。いや、夜空とかそういった自然の景色を見ることが好きな立花先輩は、きっと見ていたはずだ。


「一緒に見なくてもいいから教えては欲しかったな…。」


「ん?薄雪なんか今言った?」

「あ、ううん!い、いや、きれいだなぁって…思って…。」

「ほんとそれな!いいなー、ってどうせ俺らが今度使うんだし今度はいつでも見れるのか!楽しみだわ~」


今度はいつでも見れる…か。もう明日が終われば先輩たちはいない。いやここずっとそうだったけど、なんか完全に会えなくなることの実感がわかない。

なんだろう…この寂しい気持ち。


私は窓からの景色を見ながらまた1つ心という部屋に片づけなくてはいけない感情が増えたことを感じた。



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