私ね、最初は喜奈のことを友達だなんて思ってなかった。
やばい。口が勝手に…
「ほ、ほら。私この見た目だし、アニメとか漫画とか?なんか見なさそうじゃん?それに部活が運動部ってのもあるし、まさか声優目指してるだなんて誰も思わないよね(苦笑)」
どうしよう、こんなこと言うつもりじゃ…
「あぁ、なんでだろう。一番見た目とか、雰囲気とか?そういうので決められるの嫌なのに。今…自分がやってる。ッフ、馬鹿だよね。想像で自分自身を傷つけてるとか。深い穴をもっと深くしてるとか。」
視界がぼやけていく。もう目の前にいたはずの喜奈の顔が見えなくなってきている。
「素敵な人たちに出会えて、その人たちに背中を押してもらえて、お母さんにも声優になる事を認めてもらえて…それがもう、本当に!…本当に嬉しくて…。声優学校に通うことはかなわなくても、やっぱり嬉しくて。でもその嬉しさに浸りたい…そんな理由で自分の過去や自分自身と向き合うことを避けてた。これから声優を目指すっていうのに…ッハハ、自分と向き合わないとか最悪だ。」
あぁ、何言ってるんだろう、私。でもどうしよう、口の動きが止まらない。
【ぎゅっ】
「喜、喜奈!?」
い、いきなりハグって。それにく、首取れると思うくらいのスピードすぎて。いろんな意味でびっくりした。
「バカ草華!どんだけ自分を…草華を傷つければ気が済むの!どんだけ…どんだけ考えこめば気が済むの!どんだけ私の心を苦しめれば気が済むのよ!もう、今まで友達にバカとか言った事ないのに、初めて言っちゃたよ、もー!」
喜奈…泣いてる?ハグで喜奈の顔が見えないけど私の肩が濡れているのは分かる。
「喜奈急にこんなこと言って…ごめん。それにいつもこんな話で泣かせてごめん。」
いつもなら、すぐに終わるはずのハグが今日は少し長かった。そして肩が、制服が濡れていくのが分かる。ハグのおかげで我に返ると、人通りが少ないことに気づいた。というかここはもともと人気のない道だ。いつもこの道は、ゆっくり話したい時に通る道として使うあまり学校の人には知られていない、私たちの秘密の道。ここなら、そして今ならずっと言いたかったことを言えるかもしれない。というかもうほとんど思ってたこと言っちゃったし、言うしかないだろう。
「あのね、喜奈。ずっと話したかったことがあって…。だから私の話聞いててほしい。」
喜奈は瞼にたまっていた涙を落しながら笑顔で分かったと言ってくれた。
そして私たちは、よく使う小さな公園のベンチに座ることにした。
もう本当のことを言って嫌われても構わない。私はひどいことを思っていたのだから。いくら過去のトラウマがあるからといって…許されることではないだろう。伝えるのが怖い。でも、喜奈の笑顔を見る度にどこか苦しさを感じてた。もうこの気持ちが心の隅で引っかかった状態で、喜奈の隣にいるのは辛い。それに喜奈に対して申し訳なさも感じる。
だから…だから言いたい。
ごめんね、喜奈、実は…
「私ね、最初は喜奈のことを友達だなんて思ってなかった。」




