特別話 人生楽しんだもん勝ち
学園祭が終わり、毎日は流石に迷惑だから週に2、3回お昼休みに蒼乃先輩がいるクラスに行っている。
【ピョコッ】
「蒼乃先輩こんにちは!」
「やっほ、喜奈。」
蒼乃先輩の席は廊下側の一番後ろで話しかけやすい。
廊下に出て色んなことを話すけど、恋バナが中心。
タイプとかを聞いて、蒼乃先輩の好きな人を追い越そうと頑張ってるつもりだけどやっぱり難しい。特に最近は勉強を夜も眠気を我慢して頑張ってるんだけどな…。
「…なんですよ!それで好きな人と蒼乃先輩は結構仲いいんですか?」
「うーん、そうだと俺は思ってる(笑)幼稚園の頃にはもう出会ってたし。でも好きになったのは全然後だよ。」
幼稚園…!?結構早い出会いだな…。
【キーンコーンカーンコーン…】
「あ、えっと今日も有難うございました!楽しかったです!それじゃあ私教室戻ります!」
「うん、こちらこそ有難う。気をつけてね。」
「はい!」
今日も話せたことの幸せとやっぱり私は蒼乃先輩の好きな人に勝てないのかもしれないという落ち込みでやばい。ちょんとつっつけばすぐに倒れる積み木のように、今にも悔しさと悲しさのこもった涙が出てきそう。
学園祭のあの日恋愛という大きな賭けをした以上、失恋とかかれた目も出てくることは当然予想ができてたはずなのに…。考えるのと実際経験するのとじゃ当たり前だけど全然心の痛みが違うな…。
学園祭が終わり、蒼乃先輩とお昼休みに話すようになって明日で1カ月。私にとって蒼乃先輩との幸せだったあの時間。だけどそろそろふたをしなきゃいけないのかもしれない。蒼乃先輩に迷惑をかけちゃいけない。
次で…終わりにしよう。
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蒼乃先輩とお昼休みに話すようになって今日で1カ月と1日が経った。流石に1カ月ぴったりでいくのをやめるのはどこか嫌だな…なんて思ってしまい、とりあえず24時間は遅らせようと決めたのだ。
「喜奈、おはよ!」
「あ、草華!おっはぁー。」
何故か草華ともここ1カ月あまり話せていない。多分原因は私。変な空気出しちゃってるんだろうな…。草華の性格上、多分何があったのかを聞きたくてもどう聞き出すかに悩んでるはず。それに気づいていながら、なかなか蒼乃先輩のことを話せない私に、最悪さを感じる。ただの恋愛相談として話せばいいだけなのに…。
でもそれとはまた別に草華も悩んでることがあるんだと思う。最近目が輝いていないというか、暗いというか。とにかく何かあったことには間違いない。
相手を辛くさせたくない、そんな変な思いやりの壁が邪魔をして…お互い相談ができない。そんなの嫌なのに。話を聞きたいし、話したいのに。壁が厚く固くなかなか前へ踏み出せない。
はぁ…なんだかんだでもうお昼休みになっちゃった。
今日で最後。辛いけど、最後なんだし楽しまなきゃ。
「蒼乃せん…ってあれ、いない。」
「あれ、よく湊っちと喋ってる子じゃん!どしたー?」
あ、えっと…そうだ、学園祭で蒼乃先輩と立花先輩たちと一緒に来てた人だ!
「こ、こんにちは!突然すみません。あの…蒼乃先輩っていらっしゃいますか?」
「湊っちなら今、委員会の集まり行っちゃってるんよ。何か伝える?」
「そうだったんですね!あ、いや大丈夫です!すみません、有難うございます!」
そっか、委員会…。正直ホッとした自分がいる。このモヤモヤした状況を変えたいのか、変えたくないのか…結局どっちを求めてるのかよく分からなくなってきたな。
あぁ…私何したいんだろう。
「お、やっほ!早乙女さん!」
「あ、立花先輩!こんにちは!」
「大丈夫?何か暗くない?」
「え、いや全然大丈夫です!どこか行ってたんですか?」
「んーまぁちょっとね(笑)あ、そだ。何かあるんだったらちゃんと素直に伝えることが大事だぞ。周りに伝えられる人がいる何かを共有できる相手が近くにいること自体すごい事だと俺は思う。でもそういう人がいるのにそのすごさが分からない、むしろあえてそのすごさを分かろうとしないなんて勿体ない。…ってことだけ伝えとく(笑)急にごめんな、んじゃ。」
「は、はい…。」
廊下走るスピードめっちゃ速いな…。流石スポーツ人。
立花先輩が来た方向から予測すると…うん(笑)絶対立花先輩、草華と会ってたんだろうな(笑)
素直に伝える…か。確かに、それは分かる。でもそれが一番難しいんです、立花先輩。草華に対しても、蒼乃先輩に対してもお互い私にとって大切な人。だからこそ、この関係を続けていきたい、守っていきたい。だからちょっとしたことで関係が崩れるなんて想像もしたくないほどに嫌なんです…。
あれ、まだ草華帰ってきてない。
立花先輩のあの言葉はきっと草華と何か話しての言葉だったんだろう。素直…か。
((周りに伝えられる人がいる何かを共有できる相手が近くにいること自体すごい事だと俺は思う。でもそういう人がいるのに、そのすごさが分からない、あえて手に取らないなんて勿体ない。))
すごい事…。確かに私と草華が仲良くなれたのもすごい事だ。奇跡だ。
真面目な見た目の草華とギャルな見た目の私。
初めて話した時は確か1年生なりたて。お互い友達も出来ず授業のペア活動で無理矢理組まされた私たち。普段からパワフル寄りの私。普段から冷静で静か寄りの草華。組まされた時は絶対に仲良くなれるわけがないと思っていた。改めて考えると本当すごい(笑)
そんな私達が相談するだけで、関係が崩れる?
そうなったら今までの仲は上部だけになる。
そんなわけが無い…!そうだよ!
「草華!」「喜奈!」
「「あっ。…ッフ」」
なんだ、簡単じゃん!一緒に笑えてるじゃん!
今まで何を気にしていたんだろう。
「よかったね、5時間目自習だって!話そ?じゃあまず喜奈から!私話結構長くなる自信しかないし。」
「本当?じゃあお言葉に甘えて…。えーっと、私好きな人ができたの!」
「え!?まじ!?やったじゃん!」
「あ、でもねその人には好きな人がいて。あ、でまずその私の好きな人が…」
「蒼乃先輩でしょ?」(ボソッ)
「え?」
「喜奈、バレバレ(笑)だってあの学園祭後から様子おかしかったもん。」
「う…まじか。まぁバレてるかなぁとは思ってたけど。流石ですわ(笑)」
「でも珍しいじゃん!とりあえず進めー!みたいな猪突猛進系の喜奈が、オドオド系になるなんて。」
「なんだその表現(笑)いや、もう、だって…。
あーもー聞いてー!」
すくった砂が勢いよく手からこぼれ落ちるかのように、今まで起きた事、溜まった思いを草華に話した。
「あー、スッキリした!ねぇもうやばくない?好きって自覚したその日に失恋。どんなドラマよ!」
「確かに。それはきつい。でもだからって諦める理由にはならなくない?そもそも伝えたの?気持ち。」
「だって…言ったってもう無理だもん…。」
「ほんっと、喜奈らしくない!ちゃんと言葉にして伝えなきゃ相手はずっと分からないままだよ?蒼乃先輩にとったら、今まで普通に話してたのに急に迷惑かけるし来なくなりました!?ってえ、なんで?どゆこと?今まで来てたじゃん!ってなると思うよ。それに話聞く感じだと、好きって伝えて嫌な気持ちにさせる関係じゃなさそうだし。むしろ何も気持ちを伝えず行かなくなる方がよくないと思う。」
「うぅ、確かに。」
確かに草華の言う通りだ。これじゃまるで本当に自分勝手な人だ。個人的な理由で忙しい中お昼休みに付き合ってもらって、また個人的な理由で行かなくなる。しかもその理由をあたかも相手のためだと、私は相手を思っての行動をしたのだと言おうと思っていたなんて。最悪だ。
「分かった。伝える。」
「うん!それが1番。嘘をついて離れるのが1番喜奈にとっても辛いと思うもん。」
「草華〜、有難う!」
【ぎゅー】
草華は、どこか変わった。何というか、前よりも自分から足を踏み入れようとする気持ちが出てきた感じ。
自信?うーんなんていうんだろう。でもどこか強くなった気がする。ッフフ、これは多分立花先輩の影響なんだろうな(笑)さっき立花先輩が言ってた事と似たような事言ってたし!(ニヤニヤ)
私の話が終わり、草華の話を聞いた。草華は将来のこと、お母さんのことだった。前から草華のお母さんが厳しめな人とは聞いてたけど…一緒に学校生活を過ごし、色々な草華を知っているからこそ正直もっと草華の話も聞いてあげてほしいなとは思う。まぁ草華ももっと日常のこと家族に話せばいいのにとは思うけど…。
そこは家族の問題、私は踏み込んじゃいけなさそうな問題だからいくら草華には正直に話すと決めている私でもあまりズバズバとは言えない。
ん…どうすれば…。…あ!
「何か言われるのが嫌なら、先に何も言わないで話聞いてって言ってみるのもありかも。」
「た、確かに…。」
「でしょ?その方が普段草華そういう事言わなそうだし、草華のお母さんも驚いて何だろう、聞かなきゃってなるんじゃない!?」
「めっちゃいいアイデア!そうしてみる。」
とは言ったものの、多分草華は色んな事を考えちゃうんだろうな。それが家族だったら尚更…草華の優しさが邪魔をするのか何なのか、相手を思いすぎて自分の素直な気持ちにすぐ蓋をしてしてしまう。
「草華?」
「ん?」
「やりたいと思うなら、何があっても自分の気持ちを曲げちゃダメ。大切にするの、自分の気持ちを。それが家族であっても!草華の人生は草華の人生。お母さんや家族のためのものじゃない。確かに草華のお母さん達に恩を返すことも大事。私だってそうしたいもん!でもまず自分が幸せでなきゃ。それに恩送りっていうのも大事っていうしね!小さな繋がりにばかりとどまるんじゃなくシェアをもっと広げて羽ばたいていくのもいいんじゃない!人生楽しんだもん勝ちだもん!あ、これ私の座右の銘ね(笑)」
「あ、有難う…。何か喜奈、立花先輩みたい(笑)」
「え、まじか!(笑)」
本当そうだ。人生楽しんだもん勝ち!
挑戦してそれがダメでもいいじゃん!私らしくない!何より挑戦することが大事なんだから!それで死んじゃうわけでもないし。何ずっとクヨクヨしてたんだろ。
「草華、私放課後伝えてくる!」
「うん!頑張れ!私も今日帰ったらお母さんと話す。じゃあお互い明日報告になるね(笑)」
「だねだね!あー、緊張するけどはやく伝えたーい!それにしても幼稚園からの付き合いで頭良くて、年上って誰なんだろ。そんな近い人いるのに反則ー!」
「年上でそんなに長い付き合いで、頭がめっちゃいい…ってあれもしかして…。」(ボソッ)




