草華なら大丈夫だ。
昨日でもう1か月か…。
私は放課後に先輩と会わなくなった。会わなくなったというより、放課後いつも会っていた教室に行かなくなった。
変われなかった自分と母の言葉から段々ともう声優を諦めるべきではないかと考え始めたからだ。そう思うと、セリフ練習に先輩を巻き込むのは申し訳なさを感じてしまう。それならいっそのこと行かないでおこう…そう思った。
しかし鉛筆で何度も円を書いたようなモヤモヤが心に残っているのもまた事実…。
はぁ…結局私は何をしたいんだろう。
喜奈の件もそのままだし…。
喜奈とはお互い伝えたいことを伝えるタイミングを探っているようなそんな微妙な雰囲気がここ1か月続いている。
『きゃー!』『え、やばい、何で!?』
『かっこいい!!』『ビジュよ!』
ん?何か廊下騒がし…
「草華いる?あ、いた!」
え…立花先輩…!?
「ちょ、立花先輩!何でそんな急に毎回…っていうか、そんな大声で呼ばないで下さいー!」(ボソッ)
「あ、わりぃー。てか別に周り気にすることないだろって。俺ら友達だし、まだ気にしてんのかー?それより今あいてる?」
「い、いや別に気にしてはないんですけど、
後でその…周りからの質問が…実を言うと面倒くさくて…。」(ボソッ)
「あ、そっちか!(笑)あ!それだけど俺があの時怒ったの広まったっぽくて多分草華には誰も手出さないと思うぞ?」
「え…あそうだったんですね…。でも、あの…廊下よりいつもの教室いきません?」
「だな(笑)よし、行こ!」
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「それで何であれから来なかったんだ。」
「すみません…。」
「まぁ、草華のことだしサボりとかじゃなくて何かあったんだろーなーとは思ってたけど。んで話してみ。」
何だろう、立花先輩といるとやっぱりどこか安心さを感じてしまう。
スルスルと絡まった糸が解けていくように…
私の不安が詰まった思いが言葉となって口から出ていく。気づけば全て話していた。
「なるほどな…。つまり、草華は今友達と家族?いや将来?について悩んでると…。」
「すみません。こんな個人的な話…。」
「いいっていいって。なんなら俺的にはごめんって言われるよりありがとうって言われた方が嬉しいんだけどなぁ。」
「うぅ…。あ、ありがとうございます。」
「よろしい(笑)そんでまぁ友達のことはちゃんと素直に聞く、よし解決!んで家族だけど…」
「ちょ、ちょっと待って下さい!は、はやすぎません!?」
「ん?だってさ友達って言っても結局は他人じゃん。他人の気持ちをいくらいつもいる仲だとしても自分が分かるわけないじゃん。まぁ草華が今後その子とどうなりたいかだけど、もし仲良くい続けたいんだったらちゃんと聞くしかない。不安を消したいなら自分からその不安に踏み込むしかない、待ってたらなんも変わらんのよ。それに友達って学園祭出来てくれた早乙女さんでしょ?あの子なら素直に聞けばちゃんと答えてくれると思うよ。」
「素直に…伝える。」
「そ。素直に聞くのが1番!まぁ実際素直になるってのが難しいんだけどね(笑)でもこの状況を変えたいなら、まず自分が変わらないといけないんよ。誰も薄雪草華のためには変わってくれない。そういうもんなんよ。」
「な、なるほど。てゆか先輩、何か過去あったんですか?」
「なんでー?(笑)」
「いや、よく思うんですけど長年生き抜いてきた老父みたいな発言するなって思って…(笑)」
「まぁ草華よりかは一個上だし?(笑)サッカーで色んな経験してきたし?(笑)ってそれよりも家族…将来?のことはどーすんだ。まぁ俺的にはその件もちゃんと素直に思いを話した方がいいんじゃないかって思うけどな。でも草華の家族についてはよぉ分からんし、友達のことと違ってあまり踏み込んで意見が言えないってのが本音だけど(苦笑)」
「そう…ですよね。じゃ、じゃあ先輩はもし何か自分の思いがあった時どう伝えてますか?意見を言い返されるとかって思ったりしないんですか?」
「ん〜。言っちゃえば基本俺も飲み込んじゃうタイプなんよな(笑)普通に親とか兄貴が言ってるのは正論だなって思うし。でも本当にやりたいこと…例えばサッカーとかゲームとか?(笑)は何言われてもやるって決めてるからそこはたまに反発したりする。」
何言われてもやる…か。
ちょっと違う例入ってたような気がするけど(苦笑)
「でもやっぱりさ、言わないと伝わらないと思うよ。言ったところで…とか思ったりすると思うけど。
でもさぶっちゃけ言い出すのに勇気っていうかエネルギーを使うだけで、言っちゃえばスラスラでてきちゃうもんだから。さっきの草華もそうだろ?まぁ家族ってだけで何でもお互いのことわかった気でいるけどそれは誤解で実際は、友達同様他人なわけさ。」
「な、なるほど…。」(ボソッ)
「草華の場合、俺的にはもったいないって思うんよな。」
「もったいない…ですか?」
「あぁ。だって夢に向かってずっと頑張ってるじゃん。あんなに放課後自分でセリフの台本作ったりして練習する人なかなかいないよ?」
「…ん、え、夢って。わ、私そんなこと言って…」
「そんなん分かるよ!声優でしょ、草華の目指してるの。暇つぶしとかでいつも誤魔化してたけど、そんな暇つぶしであんな熱心に練習しないし。それにセリフ練習で使ってるセリフ、漫画とかアニメのセリフ使ってるだろ。俺よく漫画とかみるしもうバレバレだから(笑)」
「うぅ…。」
いつも沢山質問してくるのに、将来の夢のことについては聞いてこなかった。何でだろうとは思ってたけど、その理由は興味がないからだと思っていた。
私の将来の夢を知った今、無理だろと笑うだろうか。いや気づいていても聞かなかったということは呆れられているのかもしれない。何をこいつは目指しているのだと…。
「いいんじゃない!」
「…え?」
「いや、いいんじゃないって!声優!まぁ声優ってさ俺の思う感じなりたいとか資格を取得することでできる仕事じゃないじゃん?地道に努力してやっとデビューして…努力し続ける時間と色んなことに耐える忍耐力みたいなもんが大切な仕事だと思うんよ。って考えると草華なら変わらず努力してるし、きっと叶えられると思う。それに将来のことなんだから親の思いより自分の気持ちを優先した方が絶対いい!まぁ親も自分の子どもだし不安になる部分もあるんだろうけどだからってそれで諦めて安定を選ぶ必要はないと思うよ。」
「そうです…かね。」
「一度挑戦することが大事だと思うぞ。それで失敗したなら、これが自分の運命だと思えばいい。意外とな、人ってなるようになるんだぜ!びっくりするくらいにな(笑)縁とか運命とかってやつ。俺サッカーやっててまじで思うんだわ。とにかくまずは動く!そこから運命とかは動き出す!草華の場合まずは親に自分の思いをしっかり伝えることだな。」
「…でも正直怖いです。もう何度も否定されているので。また言えば否定されるし、今まで以上に怒られるかもしれない…。」
「確かに、否定されるのは嫌だよな。でもさ、ちゃんとその時草華は自分の思いをちゃんと伝えたか?何故なりたいのか、どうなりたいのか。そして声優という仕事に対しちゃんと理解してることも。将来をどう考えているのか。」
伝える…。確かに今までは
『考えてる。』『声優さんになりたいと思ってる。』
で終わりにしていたかもしれない。
なるほど、ちゃんと伝えれば…でも…
「やっぱり怖いです。」
「まずは動くんだ。逃げるな、諦めたくないんだろ?動けば何か変わるから。俺も実はさ、サッカーより勉強中心に考えて大学決めろって言われたんだよね。」
「え、でも先輩。スポーツ推薦って…。」
「そ、推薦書出す前に親に俺はサッカーがやりたい!頭のいい兄貴とは違うんだ!って反抗したら親と喧嘩になった(笑)親も心配してくれてるってのは分かるけどだからといって俺は安定じゃなくて、好きなこと、やりたいことを選びたかったからさ。最終的には、俺の人生なのに言いすぎたって許してもらえた(笑)あんなに反対してたのに、俺がまじでキレて全部思い伝えたら許してもらえたんよ!流石に気持ちを伝える大切さを知ったわ〜。」
「気持ちを伝える大切さ…。」
「草華なら大丈夫だ。たとえ転生できたとしても草華っていう人生は一回きりしかないんだぞ。その人生を楽しんどかなくちゃな。危険な行為とかはダメだけどやりたいと思ったことは失敗恐れず挑むことが大事!…ってやば昼休み終わるやん!しかも俺、次移動教室だわ!じゃ、ごめん俺先行くわ!んじゃあ…」
挑むことが大事…あれ誰かにも昔言われたような…。
私の人生…。そうだ、私の人生だ!
「先輩!」
「お、おう。」
「わ、私言ってみます。変わります!私ずっと黙ってたけど声優さんになりたいんです。でも安定した仕事じゃないし、だからといって私の家は別に裕福じゃない。だから迷惑かけないように、姉である私が弟達を苦しめないように諦めようとしてました…。でもやっぱり憧れは消えない…なりたいんです!」
「おう!それでいい。てゆかそれ俺じゃなくてお母さん達に伝えな(笑)」
「あ、そうだった(ボソッ)はい!喜奈のことも直接聞いてみます!」
「あぁ、そうだな!あんま考えすぎんなよ、逆に口に出しにくくなるんだから。じゃ、俺は行くな〜。」
「はい、有難うございました!」
((草華なら大丈夫だ。))
立花先輩の大丈夫はどこか安心感があった。本当に大丈夫だと思ってしまうような、そんな温かさをもった言葉。
うん…私なら大丈夫。今なら分かる。どんなに母からダメだと言われてもモヤモヤしていた理由、それは本当に好きで憧れているから。これもちょっとは反抗しているといえるのかな。だとしたら声に出すという次のステップにいくだけ。今度こそ変わるんだ。
私は心の中で語りかけた。
消えろ、母の気持ちを持った私…。
そして一緒に立ち上がろう、本当の気持ちを持った私…と。




