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霜月さんはモブが好き  作者: 八神鏡@幼女書籍化&『霜月さんはモブが好き』5巻
第二部

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第九十八話 踊るコマ

 ショッピングモールを出て、外の空気を吸い込むと……なんだかイヤな味がした。生臭いそれは、血の味だった。


 どうやら、無意識に唇を噛みきっていたらしい。

 それだけ、キラリに対する怒りが強かったということか。


「はぁ……」


 心に泥が溜まっているような。

 へどろを踏んだ時みたいな気持ち悪さを全身に感じて、ふと足を止める。


 なんとなく振り返ったけど、もうそこにキラリの姿はない。

 あんなに俺に好き勝手言われたのに、結局何一つ反論してくれなかった。


 中学時代のキラリなら、もっとハッキリと言ってくれたはずなのに。

 ……あそこまで一方的だと、余計に嫌な気持ちになってしまう。


 別に、傷つけたかったわけじゃない。

 元親友だけど、今では他人だ。お互いに別の人生を歩めれば、それでよかった。


 だけど、キラリが変に介入してこようとしたから、思わず言ってしまった。

 そのことを、すごく後悔している。


 もっと別の選択はなかったのだろうか。

 お茶を濁して、場をやり過ごせば、あるいは穏便に済ませることもできたのではないか――と、後悔が頭の中をぐるぐると回っている。


 そんな時に、今度は彼女の顔を見てしまったから、もう気分は最悪だった。


「にひひっ。ご機嫌そうで何よりだよ」


「斜めに歪んでるけどな」


 金髪碧眼の女の子が、そこにはいた。

 キラリのようなまがい物ではない。

 本物の、洋風の美女である。


「どうしてここにいる? ストーカーでもしてたのか?」


 メアリーさんはまるで待ち構えていたかのように、街灯にもたれかかってこちらを見ていた。


「うん。だって、今日はキラリが単独行動をしてたでしょ? ワタシがリョウマの気持ちを独占したから、寂しそうだったでしょ? そういう時って、弱みが出やすいんだよねぇ……たとえば、元親友と復縁しようとしたりするかも――って、思ってたから」


 ……なるほど。

 どうやら俺もキラリも、メアリーさんの掌で踊っていたらしい。


「軽いコマはよく回る。くるくるくるくる、気持ち良いくらいに……ね? でも、軽いから長続きはしない。すぐに力尽きて、倒れちゃう。そしてワタシに握りつぶされちゃう」


 ギュッと、メアリーさんは手を握る。

 まるで、俺とキラリを握りつぶすかのように。


「ほら? ワタシのシナリオ通りだよ? サブヒロインも、主人公も、その敵役も、いい感じにこじれてきた」


 得意げな顔で語るメアリーさんは、まさしくクリエイターらしい顔つきをしていた。作品のことになると途端に饒舌になるのは、クリエイターの性なのだろう。


「キラリはもう、ワタシの思い通りになっちゃうねぇ? リョウマにそっぽを向かれて、すがりつく相手がコウタロウしかいなくなった。アナタは意地を張れるほど自分を保てる人間ではないから、結局は彼女を受け入れちゃうだろうね? にひひっ、そうなった時、コウタロウはどうするんだろう?」


 ……悔しいが、メアリーさんは俺をしっかりと見抜いている。

 自分に自信を持てないせいで、主体性の弱い俺は……はたして、キラリを拒絶し続けることができるのだろうか。


「何が『思い通りにいくと思うなよ?』なの? 結局、ワタシの思いのまま、物語は進んでるよ?」


 勝ち誇ったような顔で俺を嘲笑うメアリーさん。

 その言葉に対して、俺は何も言えなかった。


(くそっ)


 心の中で毒づく。

 結局、竜崎もキラリも、俺が思ったほど大したキャラクターではなかったのだろうか。


 メアリーさん程度にいいようにされて、このまま物語は進行するのだろうか――

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― 新着の感想 ―
[一言] やりたい放題のメアリー様。実際、この時点ではほぼ全てが彼女の掌の上。傲慢なだけとも言えません。 ただ、幸太郎とキラリへの悪意の向けかたには微妙に違いがある気もします。前者は思いどおりにならな…
[気になる点] メアリーさんって主人公とキアリちゃんの関係知ってたのか…。 リムジンで拉致った時に「つまらないモブね。」的なこと言ってませんでしたっけ? ぶっちゃけモテモテ状態からの寝取られ人生転落……
[一言] とりあえずキラリが竜崎を好きになった理由がわからん。まあ幼馴染もだが。今後出てくるだろうけど正直容姿以外に良い点がなく持て男要素が全くない。妹はその容姿が実兄に似てるってことがクリティカルヒ…
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