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霜月さんはモブが好き  作者: 八神鏡@幼女書籍化&『霜月さんはモブが好き』5巻
第二部

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第八十四話 思い通りにいくと思うなよ?

 ひととおり、メアリーさんの妄想を聞いた後。

 俺は、思わず笑ってしまった。


「ははっ……あ、ごめん。別に、バカにしているわけじゃないんだ。ただ、ちょっとおかしくて」


 慌てて取り繕ったが、メアリーさんは途端にムッとした顔つきになる。

 自分のプロットをバカにされて、腹が立ったみたいだ。


「何? 何か文句でもあるのなら、素直に言ったら? ワタシは寛大だから、聞いてあげるよ?」


「いやいや、文句なんてないよ。好きなようにやればいい……ただ、忠告はしておこうかな」


 俺は根が『モブキャラ』なので、どう足掻いてもメインキャラクターであるメアリーさんの行動を止めることはできない。

 俺が手出しできる物語は、俺を主人公にしてくれたあの子の物語だけだ。


 でも、今回のストーリーにあの子は登場しない。だから俺は、たぶんメアリーさんの思いのままに動かされると思う。


 まさしく、掌で踊るコマのように。

 だけど、メアリーさんは勘違いしていることがあった。


 それは……竜崎龍馬という人間は、彼女が思っている以上に『主人公』だということである。

 あと、もう一つ。今回はどうも梓のやった役回りをキラリがやるようだけど、果たして彼女の思い通りに動くのかどうか、疑問だった。


 あの子は芯が強い。たとえ竜崎に振られようとも、心が折れるとは思えない。ましてや、俺を好きになるなんて……そんなの、有り得ないのだから。


「あまり、登場人物を舐めない方がいいよ。メアリーさんが思っている以上に、竜崎とキラリは手強いと思う」


 一応、忠告しておく。

 しかし、そんな俺の言葉をメアリーさんは鼻で笑った。


「HAHAHA! いやいや、あんな程度の人間を操れない程、ワタシは無能じゃないよ? あの二人の過去も調査済みだし、どんな思想を持っていて、どんな物語を繰り広げていたのかも、ワタシは知っている。だから、思い通りにならないわけがないよ」


「そうか。まぁ、メアリーさんがそう思うなら、それでいいよ。でも、なんというか……申し訳ないけど、メアリーさんのシナリオはすぐに破綻すると思うよ?」


「――なんで?」


 あ、怒った。

 いつも俺を見下していたけど、今の発言は本気で癪に障ったらしい。表情が険しかった。


 それくらい彼女は自分に自信があるんだろうけど……残念ながら、俺は確信を持っている。


 彼女はどうも、前回の俺と竜崎の繰り広げたラブコメを踏襲している。

 過程に興味がない彼女は、恐らくそこに手間をかけるほどの情熱がないのだろう。前例にならってテンプレを利用することにしたらしいけど……そこですら、上手くいくようには思えなかった。


 だって、あの時と今では、大きな違いがある。

 それは――メインヒロインの配役だ。


「メアリーさん程度のキャラクターで、メインヒロインになれるかな?」


 前回は、しほがその座にいた。

 彼女は外道ではあるが、メインヒロインとしての格は十分だった。


 でも、メアリーさんは残念ながら、その器ではないように見える。


「所詮はテコ入れで出てきただけのサブヒロインなんだから、身の程にあった幸せを望めばいいのに」


 なんていうか、滑稽だ。

 まるで、モブキャラなのに主人公だと思い込んでいた、かつての俺みたいである。


 だからさっきは笑ってしまった。

 身の程に合わない役を演じようとしているメアリーさんが、可哀想に見えたのだ。


「ふーん? 言うねぇ…‥まぁ、いいよ。見ていたら分かるだろうし、ワタシにできないことはないんだから」


「ああ、そうだな。メアリーさんをずっと見てるよ。君の掌で踊りながら、ね」


「……コウタロウは、抵抗しないんだねぇ。ワタシの思い通りに動かされることに、不満はないの?」


「ないよ。どうせ、抵抗したら今度はしほを巻き込むとか言い出すんだろ? 彼女だけはお願いだから巻き込まないでほしい。だから、俺はメアリーさんのおもちゃになるよ」


 まぁ……うん。

 俺が手を出す意味なんてないと思うし、抵抗はしない。

 だって、メアリーさんは勝手に破綻していくはずだから、それを見守っていればいいだろう。


「思い通りにいくと思うなよ? せいぜい、がんばれ」


 俺にしては荒い言葉が勝手に口から飛び出してくる。

 自分でもびっくりだった。


 ……あ、そうか。俺はもしかしたら、怒っているのかもしれない。

 だって、メアリーさんは、自分をメインヒロインと言った。


 つまり、彼女は自分がしほと同格だと思っているわけである。


 そんなの、有り得ない。

 だってしほは、メアリーさんとは比べ物にならないくらい、とっても魅力的なのだから――

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― 新着の感想 ―
[一言] 自己犠牲そんなに好き?
[気になる点] 金がある、権力がある、得体が知れない――そういう要素が強調される度にメアリーが薄っぺらく中身のないキャラだと感じられる。 喋り過ぎて逆に元親友や元幼馴染以下に落ち込んでるけど、これはそ…
[一言] 自分では何もしないのに口だけは一人前なのは相変わらずで安心した。 霜月が関わってなければいいと思っているんだろうけど,自分が関わっていると霜月の方から関わって来ることは考えてないのかなこの…
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