後日談その13 酔っ払いしほちゃん
――まずい。
幸太郎はお酒を飲んでいるしほを見て、冷や汗を流していた。
「し、しぃちゃん? そんな飲み方はしない方が……」
「……うるしゃーい! おかわりっ」
20歳になって、二人で初めて居酒屋に来た。
しほはビールの味が合わなかったようで、一口飲むたびに顔を『(><)』しかめているのだが、しかし彼女は飲み続けている。
最初のビールはまだ良かった。味が合わなかったようで、ペースも遅かった。
しかし、甘めのカクテルやチューハイに目をつけてしまい……止まらなくなったのだ。
「一応、お酒だからほどほどにしとかない?」
「やだっ。これはジュースらもん……おいしーもん!」
現在、三杯目だ。既にしほはできあがっていて、顔を真っ赤にしていた。
アルコールが回っているのだろう。呂律もゆるい。思考もゆるゆるで、会話も若干成り立っていない。
居酒屋に来てわずか一時間。
ペースも早いが、酔いが回るのも早い。しほはどうやらアルコールに弱い体質のようで、完全に酔っぱらっていた。
「……こーたろーきゅんものんでっ」
「飲んでるよ」
「しょれ、にゃに?」
「焼酎だけど」
「しょーちゅー! アハハハハハ!」
「……あはは」
しほは爆笑している。
幸太郎は彼女がなんでそんなに笑っているのか分からなくて、思わず苦笑してしまった。しほはいわゆる、笑い上戸らしい。さっきから変なことでこうやって笑い続けている。
「おしゃけ、たのしーね!」
「楽しいの? それはいいことだけど」
「うん! こーたろーきゅんもいるし、ちょーたのしー!」
そう言って、更に一口。
オレンジチューハイを飲むしほは、心から楽しそうだ。
普段から難しいことは考えないタイプなのだが、お酒を飲むとなおさらそうらしい。
世の中の出来事とか、人生のこととか、そういったものとは無縁。ただ、大好きな人と飲むお酒が楽しくて、幸せで仕方ない――そう言わんばかりのしほにつられて、幸太郎もなんだか楽しい気分になっていた。
「……まぁいっか。今日はたくさん飲もう」
「うん! いっぱいのむー! かんぱーい!!」
二人でもう一度グラスを重ねて、お酒を飲み進める。
明日のことなんて考えずに、自由に飲んだ。幸太郎はアルコールに強い体質なせいか、ほろ酔い程度ですんだが……しほはほとんど泥酔にまで達したようで。
――二時間後
居酒屋に入って、三時間が経過したタイミングで……しほが限界を迎えた。
「……むにゃむにゃ」
彼女は今、机に突っ伏して寝ていた。
酔いが限界にくると眠るタイプなんだな、と幸太郎は理解して……残っていた焼酎を、飲み干した。
「しぃちゃん、そろそろ帰ろう」
「んにゃ……ぐごっ」
あ、ダメだ。
いびきをかき始めているしほを見て、幸太郎は首を横に振る。
いつもは可愛らしい寝息を立てるだけなのに、泥酔するとやはり気道も緩むらしい。乙女らしからぬ音が漏れて、幸太郎は即座に立ち上がった。会計を済ませて、タクシーを読んでから、しほを担ぎ上げる。
もちろん、寝ている彼女に変なイタズラはしない。
実家にちゃんと送り届けてから、彼もこの日はすぐに帰宅したのだ。
そして、翌日。
お酒を飲んだ影響か、若干の頭の重さを感じながら幸太郎が目を覚ますと……スマホにしほから、こんなメッセージが届いていた。
『もうおさけはのまない。あたまいたい。やばい』
「……ははっ。しぃちゃんは、本当に面白いなぁ」
二日酔いの苦しみに悶えるしほの一文に、幸太郎はついつい笑ってしまった。
初めてのお酒は、少しトラブルもあったが……なんだかんだ、楽しかった。
良い思い出になったな、と幸太郎は思うのだった――。
お読みくださりありがとうございます!
このたび、新作の投稿を開始しました。
『異世界に行くより、私とラブコメしよ? ~幼馴染が可愛すぎて転生できない~』
という作品です。霜月さんと似たような、メタ構造の作品となっております!
異世界転生を阻止して、ひたすらラブコメするお話です。
ぜひぜひ、こちらの作品もよろしくお願いしますm(__)m




