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霜月さんはモブが好き  作者: 八神鏡@幼女書籍化&『霜月さんはモブが好き』5巻
大学生編

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後日談その12 二十歳になっても、しほちゃんはおこちゃま

 ――大学二年生の夏休み真っ只中。

 幸太郎としほは、とある飲食店にいた。


「わぁ……! 幸太郎くん、すごいわっ。ここが『大人』の世界なのね!」


 周囲を見渡しながらしほは目を輝かせている。

 普段なら、無邪気にはしゃぐしほを見て幸太郎は笑っているところが……しかし今は、彼もしほと同じように周囲を見渡していた。


「うん。初めて来たよ……居酒屋って、やっぱりお酒の匂いがするなぁ」


 そう。二人は今、居酒屋に来ている。

 どこにでもある大衆店の一席。すぐ近くでは、仕事終わりと思わしきサラリーマンたちがいる。お酒を飲みながら楽しそうに会話している大人たちを見て、幸太郎は感慨にふけっていた。


「俺も、ニ十歳になったんだ」


「ええ。わたしたち、これで本当に『大人』だわ」


 この前、しほと幸太郎は誕生日を迎えた。

 晴れて二人ともニ十歳。合法的にお酒を飲める年齢になっている。その記念に、二人は居酒屋に来たというわけだ。


「まずは注文すればいいのかな? しぃちゃんは何にする?」


「――とりあえず『生』で」


「お。なんか大人みたいでかっこいいね」


「えへへ~。ずっと言いたかったセリフなの」


 そんなやり取りを交わした後、幸太郎が店員に声をかける。

 すぐに呼びかけに応じて、女性の店員が二人のもとに来てくれたのだが……しかし彼女は、怪訝そうな表情でしほを見ていた。


「あの、お客様……身分証を見せていただいてもよろしいですか?」


「お、おおおおとなでしゅっ」


「しぃちゃん、落ち着いて。動揺しすぎて逆に嘘みたいになってるから」


 正直なところ、幸太郎はこうなることをなんとなく予見していた。しほは美人だが、見た目が大人っぽいとは決して言い難い。顔立ちとしてはまだ幼さが残るので、店員も勘違いしたようだ。


「これ! ど、どうぞ」


「……失礼しました。生二つでよろしいですね? すぐにお持ちします」


 店員も身分証を確認して安心したようだ。笑顔で軽く頭を下げて、二人から離れていく。その後ろ姿を眺めて、しほは少しご立腹だった。


「むぅ。わたしからは『大人』のオーラがあふれているはずなのに……!」


「まぁまぁ、落ち着いて」


 ほっぺたを膨らませているその仕草がもう子供っぽいのだが。しかし幸太郎は優しいのでそれは指摘せず、しばらくなだめていると……ようやく、注文していた生ビールが来た。


「お待たせしました。こちら、注文のビールです。あと、先ほどは疑ってごめんなさい……これ、サービスで食べてください」


 女性の店員さんは、申し訳なさそうに冷ややっこをしほと幸太郎の前においてくれた。

 そしてしほは、食欲に忠実な女の子なわけで。


「い、いえっ。全然、大丈夫です……やったぁ♪」


 やや人見知りを発動させながらも、無邪気に喜んでいた。女性の店員さんはそんなしほに微笑んでから、再び自分の仕事へと戻っていく。その後ろ姿を見送って、二人はジョッキを持ち上げた。


「じゃあ、二人のニ十歳を祝して……乾杯」


「かんぱーい!」


 見よう見まねで、二人ともジョッキをぶつけてビールを一気にあおる。

 琥珀色の液体を口に含んだ瞬間、二人の表情が変わった。


「あ。意外と美味しいかも」


 まず、幸太郎はその味に舌鼓を売っていた。甘い食べ物が苦手な彼の舌には、苦みのあるビールのクセが合っていたのである。

 そんな彼に対して、大の甘党であるしほと言えば。


「に、にがっ……!?」


 記号でたとえると『(><)』こうだった。


「あはは。しぃちゃんには早かったのかな」


「早くないもん! わたしは大人なはずなのに……うぅ~」


 唸りながら、もう一口チャレンジするしほ。

 だが、苦みはやっぱり消えないわけで、彼女はすごく辛そうにビールをちびちびと舐めていた。


 ニ十歳になっても、しほはまだまだお子様舌である。

 そんな彼女を見て、幸太郎はやっぱり笑ってしまうのだった――。





 ……二人の人生は、こうして続いている。

 物語は終わり、登場人物としての役割も持たず、語られる媒体も今は存在しない。

 しかし、それでも二人の幸せは、永遠に続いていた――。

お読みくださりありがとうございます!

久しぶりの更新となります。小説の方は5巻で完結していますが、漫画の方が最終話に入っております。そろそろ「霜月さんはモブが好き」のすべてが、終わりとなりそうです。

ここまで応援くださり、本当にありがとうございました。

漫画の方も、何卒よろしくお願いいたしますm(__)m

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― 新着の感想 ―
バカめ! 真の大人は30歳過ぎてからだ!
久々の更新でビックリ! 大人になってもしぃちゃんは可愛いままで安心です。 コミック版は原作1巻分ということでしょうか。 ちょっと残念ですね。 web版、書籍版、コミック版を比較すると web版が…
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