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霜月さんはモブが好き  作者: 八神鏡@幼女書籍化&『霜月さんはモブが好き』5巻
第三部

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第百七十九話 残り二日


 梓のスマホに、しほからメッセージが届いたようだ。

 久しぶりの連絡である。インフルエンザにかかって以来だ。


 病気の直後には俺からも連絡を入れていたのだが、すぐにスマホを取り上げられてしまったので、結局返信がきたのかどうかも分からない。


 一応、梓から『俺のスマホが取り上げられた』ことなどの説明をメッセージアプリでしてもらっているので、事情は分かってくれていると思うのだが。


 ともあれ、今はどんな状態なのだろうか。

 それが気になって、梓の方に歩み寄る。


「しほはなんて言ってるんだ?」


「…………」


 ただ、梓は画面を見て硬直してしまっていて、すぐに返事をしてくれなかった。


「えぇ……おにーちゃん、やっぱりこの人、おかしいと思う」


 なんというか、ドン引きしていた。

 目を丸くして、何度もメッセージを確認している。

 どうやら、よっぽど変なことが書かれているらしい。


「おかしいって……あ、本当だ」


 待ちきれなくなって、スマホの画面を覗いてみた。

 そして書かれていた文字に、俺も目を丸くしてしまうのだった。




『幸太郎くん、私……妊娠しちゃってた!』




 ……正気か?

 脈絡のない一言を、何度も何度も確認する。

 でもやっぱりその一文は現実だった。


「おにーちゃん、もしかして……?」


「いやいやいや。身に覚えがないよ……」


 疑わしそうな梓の視線に肩をすくめて、息をつく。


「ど、どうしよう……梓、叔母さんになっちゃうの!? ま、まだ早いよぉ」


「落ち着け。たぶん、しほの勘違いだから」


 勘違いで妊娠するのはなんだかおかしいけれど。


「ま、まだ心の準備がっ……うぅ、とうとう来ちゃったの? あの人がおねーちゃんになっちゃったの? 梓にあの人の妹は荷が重いのに……」


 不思議なことに、俺よりも梓の方が取り乱していた。

 予兆も伏線も前兆も脈絡もない突発的な発言で、突拍子がなさすぎてかなりびっくりしているのかもしれない。


「大丈夫だよ。たぶん、しほの寝言だから」


 あやすように、義妹の背中をさすってあげる。

 俺の代わりと言わんばかりに梓が混乱しているので、逆にこっちは冷静になれた。


 そんな時に、またしてもしほからメッセージが届く。


「……あ、またきたっ」


「今度はなんて?」


「うん。えっと……『気のせいだった』って!」


 なるほど。何があって、何を勘違いをして、何が気になって妊娠したと思ったのかは分からないけど、とにかく梓が安心してくれたので良かった。


「良かったぁ……おにーちゃん、お願いっ。あのね、もうちょっとだけ待ってほしいの……梓ね、あの人をおねーちゃんにする覚悟がまだできてないからっ」


「そっちも覚悟が必要なんだな」


 笑い、梓の頭をポンポンと叩く。

 もちろん、焦るつもりはない。そもそも、俺は積極的な人間でもないので、仮に子供を授かりたいと考えても、それは近い将来の話ではないだろう。


 もっとゆっくりでいい。

 そうだ、焦る必要なんてない。


 しほからのメッセージは、とてもユニークで不思議だったけれど……その言葉は、俺を安心させてくれた。


 彼女はやっぱり『特別』である。


(早く、会いたいなぁ)


 それから、強く感じた。

 直接顔を合わせて、話がしたかった。

 今の俺は、どうしようもなく状態が悪いけれど……しほと会い、話し、触れ合うことができたら、きっと元に戻れる気がしたのだ。


 胡桃沢さんとの契約が終わるのは、残り二日である。

 それさえ乗り切れば、またいつもの日常に戻ることができる。


 その頃にはたぶん、しほも元気になってくれているはずだ。

 だから、その時まで頑張ろうと、そう思うのだった――

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― 新着の感想 ―
[一言] うん、連絡はしていたのか。ならいいけど… しかし、何を思ってそんな連絡をしたのやら。そして、そこまで義妹を恐れさせるとは、ぱない。
[一言] 餌付けで懐柔されてるやつが何か言ってら
[一言] 更新お疲れ様です。 しほちゃん、してないと出来ないんだよwww
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