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霜月さんはモブが好き  作者: 八神鏡@幼女書籍化&『霜月さんはモブが好き』5巻
第三部

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第百五十四話 『家族』だから

 ようやく家に到着した。

 タバコの臭いで気分が悪かったので、助かった……いや、気分が悪かったのは、タバコのせいだけではないか。


 久しぶりに母から連絡があったかと思ったら、気分が悪くなるようなお小言をいただいたのだ。

 気分が悪くならないわけがない。


「まぁ、そういうことだから勉強くらいしておけ。私もお前の成績を確認したが、酷いものだったからな……結局、結果を出せたら文句なんて言われん。お前ももう少し有能であれば、母親に愛されていたかもしれないのにな」


 めんどくさそうな態度で、叔母さんは去り際の俺にそんなことを言う。今度は電子タバコではなく、紙巻タバコを吸っていた。


 やっぱりこっちの方が臭いがきつい。

 俺は鼻を押さえてその場を立ち去ろうとする。しかし不意に足が止まって、思わずもう一度叔母さんの方に意識を向けてしまった。


「ん? どうした?」


 再び振り返った俺に、叔母さんは首を傾げている。

 そんな彼女に、俺は思わずこんなことを聞いてしまった。


「どうして俺は、あんな人を母親だと思ってるんでしょうか?」


「……それは、子供だからだろ? 花が咲く場所を選べないように、子供だって生む親を選べない。まぁ、お前は運が悪かったんだ」


「運が悪かった……ですか。でも、戸籍上は親でも、あんな人間を普通は親だとは思えないですよね」


「……私なら、そうだっただろうな。だからお前が従順なのが不思議ではある。あんな人間を母親だと慕っているお前が理解不能だよ」


「――ふざけるな。今更、母親面するな。あなたが俺に何をしてくれた? あなたが俺に何を求める権利がある? 俺はあなたのおもちゃでも、道具でも、所有物でもない。あなたの思い通りになるなんて、思うなよ」


 不意に零れた感情に、叔母さんはニヤリと笑った。

 この人は良くも悪くも、俺たち家族のことについて他人事である。

 さすがは母の妹だ。冷血で、情に薄く、いつも物事を客観的に見ている。

 そういうところが、苦手だった。母も似たような人間なので、叔母さんを見ていると、どうしても母の姿を重ねてしまう。


 だから俺は、思わず本音をぶつけてしまったのだ。


 でもそれは、俺が理想に描いている人物なら、言わない発言である。

 だからグッとこらえて、悪い感情を引っ込めた。


 脳裏には、しほの顔が思い浮かんでいる。

 きっと、こんなに悪い言葉を使ってしまったら……あの子が心配するから。


 俺まで、母や叔母さんのような人間になる必要はないのである。


「――なんて、言うつもりはありません」


 だから、否定した。

 思ってはいても、口には出さないと、己に誓う。


「あんな人間でも、生んでくれた母親なんです。どんな扱いを受けようと、愛情を抱かれていなくても、関係ありません。俺は、子供としての筋を通します。あんな母親でも、愛してみせますよ」


 どんな人間だろうと、関係ない。

 だってあの人は、


「『家族』ですから……母親を否定するということは、自分に流れる半分の血を否定することになります。俺はもう、これ以上自分を嫌いになりたくないんです。だから、あの人が親としての責務を果たさなくても、俺は子供としての義理を通します。だから、安心してください……言われた通りに、がんばりますから」


 言い切って、少しだけ気分がスッキリしたような気がした。

 悪い感情に支配されるより、やっぱり前向きな感情を抱いていた方が、心地良い。


 それをしほが教えてくれた。

 あの子がいたから、俺はこうやって前向きになれたのだ。


「ふむ……お前も、なかなかの綺麗事を言うじゃないか」


 そんな俺の言葉に、叔母さんは何か含みを持たせたような笑みを浮かべていた。


「でも、一つだけ忠告しておこう。家族という絆ほど、浅ましいものはない……みんながみんな、お前みたいな人間なら幸せなんだろうけどな。世の中では、そうでない人間の方が多いんだ」


 珍しく、タバコの火を消した叔母さんは、俺を追い払うように手を払った。


「お前の母親は、その最たる人間だよ。拒絶するのも、一つの手だとは思うのだが……まぁ、あれでも私の姉で、雇用主だからな。私から言えることはもう何もない。ほら、帰れ……私は忙しいんだ。小僧のお花畑理論に付き合っているほど暇じゃない」


 まるで、何かを匂わせるように。

 叔母さんは苦笑しながら、シートベルトを着けなおした。もうこれ以上、話すつもりはないのだろう。


 俺が扉を閉めると、すぐに車は走り去っていった――


見徒さん


レビューありがとうございます!

ギャルゲ転生という表現は、すごくしっくりきますね!

確かにそんなイメージで作品を書いているかもしれません・・・もっと実量があれば、表現できることが増えると思うのですが、未熟さを嘆いたところで仕方ないです。

期待してくださって、すごく嬉しいです!

ありがとうございます、がんばりますm(__)m

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― 新着の感想 ―
[一言] 幸太郎の、相手の求めに応えようとする性質自体は生来のものかと思っていましたが、それにしても人格の表面がフラット過ぎる印象でした。 ご丁寧に研磨していたのが母親とは、つくづく救いのない。 モブ…
[良い点]  幸太郎、あんた聖人だよ。まあ理想論的ではあるにしても。  そういう風に考えることが出来るように成ったのは「霜月しほ」のお陰かも知らんが、成長が感じられるのがいいですね。 [気になる点] …
[良い点] 叔母さんが一番リアリストで作品の良心かもわからない。 [気になる点] 結局、モブモブ考えだしたのは両親が再婚してからなのか、それとも高校に入ってからなのか、どっちなんだろ? この辺りは物語…
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