表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/29

これがデジャヴというやつです

濃いエピソードが生まれてしまいました。


「シランちゃん、それはダメよ。絶対に」

「……どいて」

「あうっ、いつも以上に冷たいジト目…!」

「じー……」

「こ、こほん……とにかく、さすがに黙って行かせるわけにはいかないわ」


 扉の前に立って、僕の行く手を遮っているのは、ルームメイトのリリー。

 一体どうしてこんな状況になっているかというと、それは――。





 マグノリアさんからアドバイスをもらったボクは、さっそくアイリスのもとへ突撃するため、学院に帰ってきた。

 ボクとアイリスは同じ取り巻き同士。きちんと腹を割って話し合えば、どうしてボクから距離を取っているのか事情を話してくれるはずだ。

 なのにボクまで消極的になって、この微妙な距離感を放置し続けてきたわけで……情けないね。

 そのことに気づかせてくれたマグノリアさんは、やっぱり優秀なメイドさんだ。流石。


 思い立ったが吉日。鉄は熱いうちに打て。そんな言葉があるように、何かやるべきことがあるならば、それはすぐさま行動に移すべきだ。

 だからボクは、アイリスとキャメリアのいる寮室へ直行した。そして勢いよく寮室の扉を開き……たかったのに、扉の前にはそれを遮る人物がいた。

 

「シランちゃん、アイリスに何か用事でもあるの?」


 いや、まあ用事はあるんだけどさ。そもそも、ボクがアイリスたちの寮室を訪れるのは、日常茶飯事じゃないか。今回に限って、何故リリーが……


「リリーこそ、どうしてここに?」

「……なんとなくね、嫌な予感がしたからよ」


 うひゃー。どうなってるんだ、この百合ゲー主人公。もしかして、第六感とかそういうやつ?

 正直に言って、ルームメイトながら少し怖くなってきたよ……いや、それは今更だね。

 とりあえず、今回の件はリリーには関係のないことだ。事実を伝えてさっさとどいてもらおう。


「大したことじゃない、よ? ちょっとアイリスに迫ってみようかなって、そう思っただけ」

「……はいぃ!?」

「な、なに……?」

「えーっと……正気なの、シランちゃん?」

 

 リリーってば、何を大袈裟な。アイリスとは親友の間柄なんだから、ときには積極的に向き合うべき場面もあるでしょ……

 怪訝な表情を浮かべて首を傾げるボクに対し、リリーは呆れたような表情を浮かべている。この変態に呆れられるのは、とっても心外なんだけど。


「シランちゃんは、何にも分かっていないのね。もしそんなことをしたら、あのむっつりがどうなることか……想像に難くないわ」


 うーん、一体なにを言っているんだろうか?

 たぶん何かを勘違いしているんだろうけど、面倒だから、もう強行突破してしまおうかな。早くアイリスに迫らないと。


「シランちゃん、それはダメよ。絶対に」

「……どいて」


 こうして、ボクとリリーによる、扉の前での一進一退の攻防が幕を開けた。





「シランちゃんって、思いのほか分からず屋さんなのね……」

「リリーこそ、分からず屋。しつこい……」


 いつまで経ってもどいてくれないリリーに対し、ボクも大概イライラしてきた。


「そもそも、リリーは『押してダメなら引いてみろ大作戦』だっけ? それの最中なんじゃ……」

「あわわ……どうしてそのことを!?」


 どうしてもこうしても、ボクの視界にそのメモを放置しておいたのは、リリー自身じゃないか。あれで隠しているつもりだったんだろうか?


「よく考えたら、それは愚策だってことに気づいたのよ。シランちゃんは、押して押して押しまくらないと振り向いてくれない、鈍感系ヒロインなんだから」


 いや、ボクはヒロインじゃなくて、ただの取り巻きだからね? 

 というか、またゲームみたいなこと言ってるよ。この世界にも、そういう概念あるんだっけ。


「そうだわ、シランちゃん!」


 な、なんでしょうか? 急に、何か思い出したような表情を浮かべるリリー。嫌な予感しかしないので、できれば返事をしたくない……


「確かこの前、同意を取ればシランちゃんを襲ってもいいって言ってたわよね?」

「そんなこと、言ってない……」


 いやいや、そんなことボクが言うわけないだろう!?

 あー、たぶん、この前アイリスに仕返しで言った内容を指しているんだろうけど、そんなの冗談に決まっているじゃないか。それ以前に、リリーに対して言ってないし。


「いいえ、たしかに言ったわ。シランちゃん、よーく覚えておいて。一度口にしたことは、そう簡単には消えないのよ?」

「ちょっ……リリー、顔近いって」


 気がつけば、ボクと鼻がぶつかりそうな距離まで、リリーの顔が迫ってきていた。

 おかしい、ボクはアイリスへ迫りに来たはずなのに、どうしてリリーに迫られているんだろう。


「それじゃあ……シランちゃんの唇、わたしが貰うわ。もちろん良いわよね?」


 そんな突然、百合ゲー主人公みたいな積極性を発揮されても……いや、この人リアルに主人公だったね、そういえば。

 やばいやばい。まさか、このボク(モブ)を本気で攻略する気でありんすか、貴女。脳内の口調がおかしくなるくらいには動転している。冷汗が止まらない。


「ダメに決まってる……」

「良いわよね?」

「ダメだってば……」

()()()()()()

「だから、ダメだt……ふぐぅううう!?」


 ボクの拒絶を遮るかのように、リリーの柔らかい唇が押し付けられる。いや、同意してないよ!?

 あぁ、ボクのファーストキスが……


 すっかり脱力してしまい、リリーを押し返すことすらも叶わない。それを察したリリーが、静かに微笑む。

 そして、さらに口内へと潜入すべく、リリーの舌がボクの唇をこじ開けようとする。

 抵抗する術を失ったボクは、このままリリー(主人公)に攻略されてしまうのだろうか……




「えっと、これはどういう状況なのかしら? リリーさん」


 余裕を失い蕩けていたボクと、そんなボクに夢中になっていたリリーは、いつの間にか寮室の扉が開いていたことにすら、気がついていなかった。


「……どうしてキャメリア様がいるのよ!?」

「どうしてですって? 少し冷静になりなさい、ここはわたくしの寮室の前ですわよ」

「っ……不覚だったわ」


 たしかに、言われてみればその通りだ。いくら防音がしっかりしているとは言え、扉の前で騒がしくしていればこうなるのも当然だろう。


「リリーさん、人の寮室の前で発情しないでいただきたいですわ。というか、激しくデジャヴを感じるのですけれど……」


 デジャヴか。たぶん、以前アイリスに襲われたときのことを言っているんだろう。あのときも、キャメリアのおかげで、ボクは危機から救われた。感謝するしかない。

 それにしても、面倒ごとに巻き込まれすぎだね、お互い……


 ただし、キャメリアひとりが現場を目撃した以前とは、少しばかり状況が異なるようだ。

 なにせ、ここは人目につきすぎる。


「あたしが言えた立場じゃないけどさ。シランに何してくれてるんだよ、リリー」

「まさか寮の廊下で堂々と襲うだなんて……学園の風紀を守る生徒会長として、さすがに見逃すわけにはいきませんわね」

「シラン様は、わたしが守る……」


 キャメリアの隣に、同室のアイリス。廊下の先には、仁王立ちのマーガレット会長。物陰からヌッと姿を現したのは、アネモネ。

 あーあ、この混沌と表現するにふさわしい事態、一体どうするつもりなのさ。ボクは知らないよ。

 そう言って、ボクはリリーを冷やかした。


 ごめんなさい、最後に嘘をつきました。そんな軽口をたたく余裕、未だ蕩け続けているボクには一切ありませんでした。はい。

 皆が集まり最悪な空気の中、ひとり唇に指を当てて、ペタンとしゃがみ込んでいました。あぁあ、穴があったら入りたい……


何気に前科者が多すぎますね。


お気に入り登録やコメント、評価なんかをいただけると大変喜びます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 百合ハーを順調(?)に形成中。 しかしその状況を知らんのは、当人であるシランばかりなり。 なぜ気づかんのか? 知らん。 ……じゃねーやな。 ゲームでの配役に縛られ過ぎてるから。 しかない…
[一言] 堕ちたな(ゲス顔
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ