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第十五話 ユニークスキル

 

 買い物を終えたあと、俺とユイナさんの二人は城門前に集合していた。


「マップを見るかぎり、ポイント地点は【グロート大森林】という場所ですね」

「【グロート大森林】といえば、此処から西に歩いて一時間ほどの距離だな。途中に遭遇する山賊や盗賊といった存在を考慮すればもっと時間は掛かるのだろうが」

「途中の賊は、レベリングも兼ねて全部倒す方針でかまいませんか?」


 ユイナさんは同意する。

 そして【グロート大森林】に向かおうと足を動かした。

 その間際――


「そうだ」


 突如として思い出したような声を上げた。


「……出発する前にお互いのステータスを確認しないかい?」


 此方を伺うような視線。


「お互いのステータスは把握していた方がやり易いだろうし」

「ええ、そうですね」


 首を縦に振る。

 俺も彼女のステータスは気になっていたところだ。

 お互い相手に視線を集中した。




 名前:ユイナ

 所属:シェンケル辺境連隊 爵位:士爵 軍事階級:軍曹

 召喚士階級:伍長

 レベル:30

 種族:人族


 HP(体力):356

 MP(魔力):10


 STR(筋力):81(+24)

 END(耐久):55

 DEX(器用):42

 MND(精神):48

 INT(知力):52



 Skillスキル


 Specific Skill(固有スキル)

 種族適性(歩兵系統)

 個人適性(騎兵系統)


 Passiveパッシブ Skillスキル

【一刀両断Lv,5】

【奇襲Lv,2】

【鼓舞Lv,3】

【二刀流Lv,6】

【夜目Lv,5】

【夜襲Lv,5】


 UniqueユニークSkillスキル

【夜叉姫Lv,1】





 絵に描いたようなSTR(筋力)への極振り。

 だが、それ以上に特筆すべきは――


「……UniqueユニークSkillスキル

「ん……ああ、これかい」

「……どういう効果なのですか?」


 ユイナさんを見つめる。


「えっと【夜叉姫Lv,1】の効果は〝夜戦時におけるプレイヤーと召喚兵士の全ステータス上昇〟というものだよ」

「……全ステータスの上昇」


 唖然とした。

 特定のステータスだけでなく、それもデメリットなしに召喚兵士を含めた全ステータスの上昇ともなると、戦闘に与える影響力は計り知れない。

 他のゲームでもUniqueユニークSkillスキルは強力な物が多いが、SWOもその例に洩れず相当強力な設定らしい。


(と、なると当然気になるのは、その入手方法だが……)


「……どうすれば手に入ったのか聞いてもいいですか?」


 不躾な質問。

 ユイナさんは困った表情を見せる。


「教えてあげたいのだけど、正直私にも詳しい事は分らないんだ。夜戦を繰り返していたら勝手に手に入ったから」


 彼女のスキル構成とそのレベルからも読み取れたことだが、まだサービス開始間もないのに相当数の夜戦をこなしていることが理解できる。

 初対面の時から予想は付いていたが、ブッケル曹長が話していた拠点荒らしの来訪者とは彼女のことを言っていたのだろう。


「確証はないけど、一晩で百人ぐらいの敵を討ち倒すことが、【夜叉姫】発現の条件なのじゃないかな?」

「ひゃ、百人……」


 簡単にいうが、この人は自分の言っている意味を理解しているのか?


(このマゾ仕様のSWOで百人の敵を倒すだけでも大変なのに――それを視界の悪い夜戦と一晩という制限付きの中で成し遂げるのだぞ!?)


 大したレベル差もなしに、という条件も付け加えればその難易度は想像を絶する。

 そんな芸当が可能なのは、このSWOに何人いるのか……

 いや、ゲームに慣れていないだろうサービス二日目であることを顧みれば、彼女にしか無理なのじゃないか?

 例え他に居たとしても、それが数人ほどであることは疑いようがない。


(……なるほど、それでUniqueユニークSkillスキルか)


 誰も成し遂げられない偉業を成し遂げた――不可能を可能にした唯一の者。


(それに唯一、というだけあって、先着順なのだろうな)


【夜叉姫】というスキルは既に所得不可能とみるのが妥当か。

 とはいえ、UniqueユニークSkillスキルそのものは他にもある筈。

 まあ、どれも難しい条件であることだけは間違いないだろうが。

 想像を膨らましていると、ユイナさんが声をかけてきた。


「私も一つ、聞きたいことがあるのだが……」

「何でしょう?」


「カイくんのステータスが同レベルの私より高いのはどうしてなんだい?」


 初期ステータスの合計値は250だと言っていた気がするんだが、と困惑した様子で彼女は付け足す。


「それは俺がハーフ種ですからね。ハーフの初期ステは全体的に一割増になる、と聞いています」

「ハーフ種?……そんな種族は選択画面になかったと思うけど」

「ランダムを選択すると低確率で所得できるみたいです」

「すると、種族適性が二つあるのも?」

「ええ、ハーフであるためですね」


 その返答に、彼女は唸るように呟く。


「……ハーフとはとんでもない種族だな」

「ステータスを上げにくいSWOで一割増ですから」

「いや、ステータスもそうだが、それ以上に種族適性が二つあるのが反則だよ」

「銃兵に関しては未だ召喚出来ないので実感はありませんが……」


 ただ、ユイナさんが言いたいことは理解できる。

 SWOをプレイしているうちに、ハーフにとってハイスペックな初期ステータスなどおまけでしかなく、本質は二つの種族適性にあるということは何となく察せられた。


「とはいえ、使い手に影響されるところが大きいみたいだけどね」


 全くその通りだ。

 二つの種族適性のおかげで、選択肢が増えるのは間違いない。

 だが、選択肢が増えるということは、他の種族以上にプレイヤーの技量に左右されるという事でもある。


 ステータスの割り振りがまさにそうだ。


 様々な兵科を上手く扱える技量も無いのに、適性が多いからという理由でポイントを等分に振っていると、何もかもが中途半端な結果になり、ハーフ本来の真価を発揮できないというのは十分に考えられる。


 ハーフ種という恵まれた立場に胡坐をかいているようでは、一般のプレイヤーはともかくトッププレイヤー達の戦略眼や用兵、兵科の運用法にはとても太刀打ちできなくなるだろう。


 ユイナさんが視線をわずかに流す。


「その点、カイくんは今のところ上手く扱っているようだけど」

「……二日目で上手く扱うも何もないでしょう」


 言われてみればそれもそうだな、と笑って、この話を終わらせる。



「じゃあ、出発するとしよう」

「ええ」



 パーティーとしての初クエストに挑むため、二人で城門を潜り抜けた。

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