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第十一話 ログアウト

 

「――貴方様は?」


 メニューを閉じると、荷台に隠れていた若い御者の男が近寄ってくる。


「たまたま、この場に居合わせた通りすがりの召喚士官です」

「そういえば、シェルンで顔を見た覚えが……」

「……進行方向が同じだったのですよ。いやぁ、全く偶然でした」


 じっと目を向けられる。

 しかし相手がNPCだとしても〝経験値稼ぎのため、貴方を囮にしていました〟なんて言える筈もない。


「――そうですか、ともあれ助かった事実は変わりません」


 ぺこりと頭を下げる馬車の御者。


「ありがとうございました」

「……人として当然の行いをしただけです」


 こうして目の前で頭を下げられると、心にくるものがある。

 気まずい空気から逃れるように話を移した。


「それで一つ訊きたいのですが……この場所では頻繁に盗賊が現れるのですか?」

「ええ、近くの森にアジトを作っているようでして」


 経験値が目的の俺にとっては好都合な情報だが……


「それがわかっていてどうして?」

「危険ゆえ同業者も減って稼ぎを独占できると考えていました。私のような駆け出しの商人はある程度のリスクを背負うのも仕方ないものだと」

「しかし、命あっての物種では……」

「おっしゃる通りです。投資と投機は違うと言う事を今回の一件で身に染みて学ばせてもらいました」


 そう言うと、彼は自嘲の笑みを浮かべた。


(豊かな表情にこの受け答えといい、本物の人間と対話しているのかと錯覚してしまうから困りものだ)



「そういう事でして礼金を受け取って下さい」


 革袋を差し出してくる。


「いえ、お金の為にした事ではありませんので」


 言葉だけ聞くと凄くカッコイイな。


「ですが」


 尚も言い募ろうとする商人。

 それでも俺は、断固として譲らなかった。


 それは囮にしておいて、尚も礼金を受け取るのは心が痛んだ――という良心の呵責がないわけでは無かったが、それ以上に切実な事情がある。


 現段階で欲しているのは金ではなく経験値――より正確には効率よく経験値を稼ぐための狩場の確保だ


「その代わりと言っては何ですが、ここで起きたことは〝これから三日間だけ〟内緒にして頂けませんか?」


 それゆえ、ここでただ黙って金を受け取るだけでは否応なく噂は広がる。

 噂が広がれば、同じような行動に出るプレイヤーが現れるのは安易に予想できることだし、そもそも盗賊に警戒されて効率のいい経験値稼ぎにならなくなる。

 だからこそ、この約束が必要不可欠。


「……何か事情がおありで?」

「ええ」


 若い行商人は訝し気な表情を浮かべる。

 もしかしたら、追っ手にでも追われていると勘違いしているのかもしれない。


(まあ、礼金の代わりにこんなお願いされれば、誰だってそう勘ぐってしまうのだろうが)


 背後に控える護衛達二人にも視線を移す。


「護衛の方々も、戦利品は全てお譲りしますのでお願いできませんか?」

「助けてもらった恩義もあるし、そりゃかまわねえが」

「ああ、それに戦利品までくれるんだ。誰にも話さねぇよ」


(……本当か?お前たち酒場で飲んでいる時にポロっと喋りそうな印象だぞ)


 普通に偏見である。

 とはいえ恩義を覚えている内は、内緒にしてくれるかも知れないが、人間誰しも喉元過ぎれば熱さを忘れてしまうのも事実。


(まあ、彼らは本物の人間ではなくNPCだが、これほど忠実に再現されているSWOなら話は別だろう)


 だからこそ、最初から三日という明確な数字を提示した。


(三日の間ぐらいなら助けられた恩義だって忘れていないはず)


 三日間という明確で難しくない条件なら、義理も果たしてくれる……と思いたい。



 すると、考え込んでいた行商人も護衛の二人に倣い同意する。


「分かりました。この三日間、誰にも話しません」

「ありがとうございます」



 こうして御者台に乗り込んだ行商人が、別れ際もう一度だけ頭を下げる。

 俺は馬車が見えなくなるまで見送ったあと、シェルンへと踵を返した。







 レベル:25

 種族:ハーフ(人族×ドワーフ)


 HP(体力):396

 MP(魔力):10


 STR(筋力):62(+4)

 END(耐久):71(+1)

 DEX(器用):62(+8)

 MND(精神):50

 INT(知力):51


 ボーナスポイント1


 Skillスキル


 Specific Skill(固有スキル)

 種族適性(歩兵系統、銃兵系統)

 個人適性(騎兵系統)


 PassiveパッシブSkillスキル

【一刀両断Lv,1】

【縦陣Lv,1】

【奇襲Lv,3】

【挟撃Lv,3】






 あれから、同じ要領で盗賊討伐に勤しんだ。

 時間の許す限りをレベル上げに費やした結果、いつの間にかレベルは25に到達していた。

 辺りはもう薄暗い。


「……夕暮れか」


 太陽は西の空に傾き、麦畑をオレンジ色に染めている。


「SWOの世界は夜間帯もあるみたいだな……」


 メニュー画面の時計によると、時刻は午後11時。

 何度かログアウトした時、現実とゲームの時間が連動しているのは知っていたが、日没まであるのは意外だ。

 ヘルプの説明よると、午前0時から5時までの間が夜間帯になるらしい。


「日が落ちると、夜間の戦闘は昼間と比較してどうなるんだ?」


 これがゲームである以上、時間に関係なく戦闘は行えるはずだが……


(早めに起きて試してみるか)


 とりあえずレベル20を突破した時に獲得たポイントをSTR(筋力)に振ったあと、一旦シェルンの街に帰還する。


 広場を囲むように存在していた幾つもの宿屋。

 そのうちの一つに足を踏み入れ利用料を払うと、さっそく案内されたベッドに身体を横たえた。


 ログアウトした頃には、夕暮れだったゲームとは違い部屋の外は真っ暗になっている。

 時計を見ると、午後11時30分。



 そこから食事を済ませ、ベッドにもぐり込んだところで、こうして記念すべき一日目のSWOを終えたのだった。

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