特機武装隊
エイガルは、険悪な雰囲気を纏うアリエとドーズを見て、静かに笑みを浮かべた。
(――よい)
ぽっと出のじじいに役目を奪われようとして、不満すら抱かぬほど腑抜けた奴らではないらしい。流石は王女直属の部隊。正しいプライドを宿している。
「今回のカスタムは、このようになります」
どこからか取り出したホワイトボードに、マーセリアはシュバババッ!! と文字を書く。
ソルジャー:エイガル=クラウス
センサー:ウィーク・サーチャー
アーマー:汎用バランサー
クロス:スラスター・ブレードⅢ式
ガン:
シューズ:
「装備しながら説明しましょう。まずはこちらの汎用バランサーです」
そう言ってマーセリアがエイガルに渡したのは、手足のプロテクターと一体化した防具だった。エイガルは指示に従ってまず防具を背中に装着し、次に二の腕と太腿にプロテクターを通す。プロテクター自体は硬くて頑丈だが、背中の防具とはゴムのような素材で繋がっており、可動域に支障はない。
「汎用バランサーの役割は姿勢制御になります。スラスター・ブレードなど、大きな反動や動きを伴う武器と併せて装備することで、モーション間の隙を軽減します。具体的にはジャイロセンサーによって角速度を計算し――」
「これこれ、老いぼれに専門的な話をするでない」
エイガルは、早口に説明するマーセリアを制止した。
現代の難しい理屈には、とてもついていけそうにない。
「要するに儂は、与えられた装備を使いこなせばいいんじゃろう? なら概要さえ教えてくれれば、あとは自分でなんとかしてみるわい」
「……分かりました。では、ウィーク・サーチャーの使い方はお二人に聞いてください。私は開発者ですから、説明するとつい熱が入ってしまいます」
「開発者……? ちょい待て、まさかお主が開発したのか?」
エイガルが驚きながら訊くと、マーセリアはきょとんと首を傾げた。
「当然です。私がメカニックの主任なんですから」
それだけ言って、マーセリアは一歩退いて説明を部下二人に任せた。
情熱と実績。それらを瞬く間に示した彼女を、エイガルは「ふむ」と見つめる。
(お飾りではなさそうじゃのう)
どうやら本当に、この部隊のトップはマーセリア第二王女のようだ。
機械弄りを職掌とする王族なんて聞いたこともないが……頭のネジの外れ具合を見るに、本人も好きでやっている。渋々戦争に参加している悲劇の令嬢というわけではないらしい。
「では、自分がウィーク・サーチャーの使い方を説明します」
ドーズと呼ばれた褐色肌の青年が、エイガルにゴーグルを渡した。
エイガルがゴーグルを装着すると、ドーズは説明を始める。
「ウィーク・サーチャーは障害物の強度を明らかにする装備です。物体の厚さを計算し、薄いものほど赤色に表示されます」
「赤く表示されている部分が弱点というわけじゃな。……視界が狭くなるのは嫌じゃなぁ」
「ですが、その価値はあります。破壊力を重視したスラスター・ブレードとの相性も抜群です」
むぅん、とエイガルは納得する。つまりこのカスタムは調和しているわけだ。スラスター・ブレードで破壊力を用意し、ウィーク・サーチャーで力の使いどころを見極め、汎用バランサーで隙を消す。
エイガルは最後にスラスター・ブレードⅢ式を受け取る。こちらは以前使ったものと同じ、片側の刃が火を噴く吸盤になっている剣だ。
「スラスター・ブレードは一度だけ使ったことあるが、念のためこれも説明してもらってもよいかのう?」
「分かりました。スラスター・ブレードは自分よりアリエの方が使いこなしているので、彼女に説明してもらいましょう」
ドーズと共に、エイガルは黒髪の女を見る。
アリエと呼ばれた女は、エイガルを睨みながら口を開いた。
「私は、貴方のことを認めていません」
放たれたのは説明ではなく宣戦布告だった。
だが、いつ爆発してもおかしくない空気だったので、エイガルは驚かない。ドーズもアリエの発言を咎めなかった。内心では彼も同じことを思っているからだ。
マーセリアだけ驚いていた。
何故……!? と言いたげな顔をしている。テクノロジーだけでなくもうちょっと人間も見てほしい。
アリエは続ける。
「殿下が貴方を信用しているのは知っています。昔、ご活躍されたとか。……しかし時代は絶えず変化していくものです。貴方のような旧文明の戦士に、出る幕はないと思います」
アリエはエイガルの全身をざっと見て言った。
戦士は身体を張るのが仕事だ。老いさらばえた四肢で、もぎ取れるものなど何もない。……アリエの言いたいことは充分伝わってくる。
「儂も、そう思っていた」
エイガルは、アリエの目を見て言う。
若い光だ。その眩しさに、後を託そうとエイガルも思っていた。
「だが、この国はそれどころではないと殿下に言われたばかりでな。……試すことにしたんじゃ」
「試す? 何を……?」
エイガルは不適に笑った。
「儂が、まだやれるかどうかじゃ」
エイガルはマーセリアの方を振り向く。
「殿下、実戦形式でどうじゃ? 長く戦場にいたからのぉ……その方が身につきやすいんじゃよ」
「……アリエが問題ないなら構いませんよ」
この場にいる全員が、アリエに視線を注いだ。
「いいですよ。怪我しても知りませんからね」
「ほっほっほ……お手柔らかに頼むぞ」




