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カスタムじじい  作者: サケ/坂石遊作
オーパーツ
19/30

儂の身体にそれは入らぬ


 作戦まであと三日。

 エイガルたち特機武装隊のソルジャーは、訓練室で黙々と武装訓練に勤しんでいた。


「新装備も増えたのぉ」


「メカニック班が言うには、エイガルさんの使用データが活きているようです。おかげで開発のペースを上げられたとか」


 隣で汗を流していたドーズが補足してくれる。

 そんなデータを取っていたとは知らなかったが、活きているなら問題ない。どうせ儂には仕組みも分からん、とエイガルは割り切った。


「ドーズ、新装備は全て触ったか?」


「いえ……自分はエイガルさんのようにはいきませんから、一つずつ着実に習得します。個人的にはデュアルアクスが好みですね」


「そう卑下せんでもよいじゃろう。……ドーズはバランス型じゃったか。ならばガン装備は中距離に対応できるニードル・ショットがいいかもしれんな」


「自分もそう思います。戦術に幅を持たせたいです」


 エイガルは訓練室に並べられた新装備をざっと見る。

 今回も、メカニックたちは面白いものを用意してくれた。


 デュアルアクス。

 クロス装備。携帯性に長けた二本の手斧だ。その最大の特徴は、斧を振り回した時の加速度に応じて力場を生成し、見た目以上の威力を発揮するというもの。スラスターシリーズよりも繊細な力加減が必要になるが、推進装置がない分、軽くて小回りが効きやすい。


 スラスター・ダガー。

 クロス装備。グリップの底に推進装置を搭載した、スラスターシリーズの中でも最小の武器だ。グリップにはワイヤーを取り付けることもでき、スラスターで射出したナイフをワイヤーで手元に戻せる。最大装備本数は五本、ある程度は使い捨てもできる。


 ニードル・ショット。

 ガン装備。腕の長さほどある大きな針を射出できる。他のガン装備と比べて装填数が少ないため注意しなければならないが、貫通力は随一と言える。攻めに転じたい時には持ってこいだ。またその威力を敵に示すことで、駆け引きにも持ち込める。


 ジャベリン。

 ガン装備。槍の形をした投擲するタイプの武器だ。着弾後、機構が開いて小~中規模の爆発が発生する。投げる直前にトリガーを引き続けることで、爆発の威力を溜められる。投擲した後は自力で回収する必要がある。


 エーテルガン。

 ガン装備。トリガーを引くことで銃口から魔力の弾丸が射出される。弾丸は生身の肉体なら貫通するし、鎧の上からでもパンチ一発程度の衝撃は与えられる。帝国が使っていたものとほぼ同じ性能とのこと。


 ミラージュスーツ。

 アーマー装備。起動することで全身を透明にできる。衝撃を受けた時や激しく動いた時は、一時的に機能が不十分になることもある。帝国が使っていたものとほぼ同じ性能とのこと。


 サイレンサー。

 シューズ装備。起動することで特殊な音波を放ち、周辺の音を相殺できる靴。足音を消すことを目的としており、隠密行動に向いている。音は消せても衝撃までは相殺できないので注意が必要。


「センサー装備も追加されるとのことですが、まだ来ませんね」


 ドーズが新しい装備をざっと見ながら言う。

 そういえば、形状を一新すると言っていたセンサー装備がまだ届けられていない。


「慣らしが必要ならそろそろ触っておくべきじゃな。……メカニック班に聞いてこよう」


「自分が行きましょうか?」


「気遣いは嬉しいが、偶にはメカニックとも交流しておかんとな。お主は訓練に集中するといい」


 ドーズが「では、そうさせていただきます」と頷いた後、エイガルはメカニックたちが篭っている研究室へと向かった。


 エイガルが研究室のドアを開くと、偶々近くを通りがかったメカニックに気づかれる。


「エイガル様、どうしました?」


「センサーの新装備がいつできるのか、確認しにきたんじゃ」


「丁度、主任が最終チェックをしています。お待たせして申し訳ありません」


 特機武装隊の若者は礼儀正しい者ばかりだった。

 ところで……。


「なんでお主らまで儂を様付けで呼ぶんじゃ?」


「いやぁ、主任の口調がうつっちゃいまして」


「……今更じゃが、そもそも殿下が儂のことを様付けする理由も分からんな」


「あれ、知らないんですか? 主任、子供の頃からずっとエイガル様のファンだったみたいですよ」


 初耳だ。

 確かに幼い頃からマーセリアはエイガルのことをキラキラした瞳で見つめていたが、あれは年上に他する敬意とか、それに準ずるものだとばかり思っていた。


「五年くらい前だったかな……主任が学生だった頃、勇者よりエイガル様の方が凄いって論文を提出して、騒ぎになったことが――」


「――仕事中の私語は慎むように」


 マーセリアの鋭い声に、エイガルとメカニックは肩を跳ね上げる。

 逃げるように仕事に戻ったメカニックを尻目に、エイガルはゆっくり背後を振り返った。


 マーセリアが、頬を赤く染めながら立っている。


「……………………装備の調子はどうですか?」


「う、うむ。悪くないぞ」


 気まずい。

 七十年生きてきたエイガルでも、滅多にない気まずさだった。


 しばらく沈黙が続いた後、マーセリアが掌に載せた小さな箱をエイガルに見せた。


「……指輪か?」


「ちがっ……違います」


「冗談じゃ」


 流石に分かっている。

 からかわれたことを自覚したマーセリアは、ぷくーっと頬を膨らませてエイガルを睨んだ。


「……センサー装備が完成しましたので、お渡しします」


 マーセリアはぶすっとした顔のまま箱の蓋を開ける。

 中には半透明の円盤が二枚入っていた。


「ナイトアイ。暗闇の中でも視界を確保できる装備です」


「……これが装備なのか? 小さい上、こう、ぷにぷにしておるが」


「角膜に装着する、レンズ型の装備となります」


 以前、ウィーク・サーチャーを装備した際は、外れてしまいそうという不安が課題だった。それを解消したのが今回の形らしい。


「付け方にコツがありますので、最初は私が手伝います。……まずはこちらの椅子に座ってください」


「う、うむ、分かった」


「瞼を開きます。エイガル様は目だけで上を見てください。そのままじっとしてもらい…………では、入れますね」


「ちょ、ちょっと待て!! まさか、それを儂に入れるというのか!?」


「はい」


「待て!! 無理じゃ!! それは身体に入れていいものではない!!」


「大丈夫ですよ。力を抜いてください」


「嘘じゃ!! お主、さては儂に意趣返しを――」


 ヌポッ。


「アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ――――ッ!!!!!!!」




 ◆




「………………性能は認めよう」


「光の量に合わせてオン・オフは自動で切り替わります。作戦当日はナイトアイを常時装着しておいてください」


 レンズ型のセンサー装備は、一度付けてさえしまえば非常に快適だった。なにせ目に直接装着しているのだから、そう簡単には外れない。


「しかし、選べる装備も増えてきたのぅ」


「そうですね。次の作戦は重要ですから、腕によりをかけてカスタムします」


 むん、とマーセリアが力こぶを作って言った。微塵も盛り上がっていないが、やる気だけは伝わってくる。

 エイガルは装備の候補を頭で思い浮かべた。


 センサー装備は二つ。

 ウィーク・サーチャー、ナイトアイ。


 アーマー装備は三つ。

 汎用バランサー、コングスーツ、ミラージュスーツ。


 クロス装備は五つ。

 スラスター・ブレードⅢ式、スラスター・ランス、スラスター・ナイフ、フォートレス、デュアルアクス。


 ガン装備は四つ。

 バブル・ショット、ニードル・ショット、ジャベリン、ストーム・バスター。


 シューズ装備は二つ。

 スラスター・シューズ、サイレンサー。


(組み合わせ次第で、いかようにも化けられるな……)


 ゴリゴリの接近戦は勿論、味方の補助に回るスタイルにも、隠密行動に特化したスタイルにも、自由自在になれそうだ。


「かすたむの魅力、少し分かってきたわい」


「でしょう?? でしょう???? でしょう??????」


 マーセリアが異様な興奮を見せた。

 確かにカスタムの魅力は分かったが、このマーセリアに肩を組まれたくはない。


 とはいえ、ここまで装備の選択肢が増えてくると、()()()()()()()()が必要に感じる。

 マーセリアはそれをやっているのだ。ただの酔狂な趣味かと思いきや、存外、合理的な働きかもしれない。……いや、九割九分は趣味な気もするが。


「クロス装備のストームシリーズも完成間近です。かなり面白い性能なので、ご期待ください」


「ほほぉ、楽しみにしておるぞ」


 ストームシリーズは今のところ、エイガル専用の装備となっている。

 専用装備……なかなか惹かれる言葉だが、またマーセリアに同類扱いされても困るので口には出さないでおいた。


「アリエとドーズにも、ナイトアイを渡してきます」


「儂も一緒に行こう。面白いものが見られそうじゃ」


 二人は新装備を入れた箱を持って、訓練室へ向かう。

 特機武装隊の基地に、二つの絶叫が響いた。



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