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カスタムじじい  作者: サケ/坂石遊作
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18/30

作戦会議


 エイガルたちが、タイタンという兵器を知った四日後。

 マーセリアが訓練室にやって来た。


「次の作戦が決まりました」


 三人のソルジャーは、訓練を中断して傾聴する。

 早い。前回の作戦から十日も経っていない。何か急がねばならない理由があるのだろう。


「作戦について話す前に、背景を説明します」


 マーセリアは語り出す。


「先日発見されたタイタンの痕跡ですが、調査の結果、帝国が所有しているタイタンのものと判明しました」


「ん? 帝国のタイタンは動けないという予想ではなかったか?」


「実戦投入できないだけで、動かすこと自体はできたのかもしれません」


 ふむ、とエイガルは相槌を打つ。


「知っての通り、帝国軍は既に我が国の領土を侵しています。しかし実は一つだけ、不自然な侵略行為を確認していました」


 不自然? と疑問に思うエイガルの目を見て、マーセリアは続けた。


「ルーベ地方。……帝国は二年前にこの土地を侵略し、砦を構えました。ですが、彼らがこの土地を狙った戦略的意図を掴めずにいます」


「ふむ……確かに、あの辺りを獲る理由は思いつかんな。包囲網を敷くにしても遠すぎる」


 ルーベ地方は帝国との国境沿いにある土地だが、王国の最西端に位置している。どちらの国の中心地からも離れており、地政学的な価値があるようには思えない。


 何故、帝国はあの土地を狙ったのか。

 ずっとその疑問が残ったままだったようだが――。


「タイタンの痕跡は、このルーベ地方を偵察中に発見されました」


「……なるほどのぅ。つまり帝国軍の不可思議な侵略の裏には、タイタンが関係していたのではないかと踏んどるわけか」


 そうなります、とマーセリアは首肯する。


「よって我々はルーベ地方を調査し、帝国軍のタイタンの状態を確認します。理想はタイタンの拿捕。もしくは破壊。そうでなくても何かしらの情報は持ち帰りたいところです」


 作戦の全容が見えてきた。

 タイタンは極めて強力な兵器だ。ゆえに、その情報を得られる可能性が僅かでもあるなら、決死の覚悟で拾いに行くべきである。次に実戦投入された時が、王国の終わりかもしれないのだから。


「ルーベ地方に構えられた砦は堅牢です。これも不自然でしたが、タイタンを守るためなら納得できます」


 疑問が氷解したことで、少なからず興奮しているのだろう。マーセリアの語気には多少の熱が含まれていた。


「この砦を正面から攻略するのは厳しいため、我々は潜入班と陽動班の二手に分かれることになりました。特機武装隊は潜入班になります」


 アリエとドーズの顔が強張った。

 この作戦、つまり囮部隊と本命部隊で行われることになる。本命はエイガルたち潜入班だ。


「お察しの通り、非常に重要な役割です。失敗は許されません」


 作戦に失敗すれば、帝国軍の警戒心は高まってしまう。

 命を削る陽動部隊のためにも、エイガルたちは確実に成果を持ち帰らねばならない。そのプレッシャーに、アリエたちは生唾を飲み込んだ。

 だがエイガルは、不敵に笑う。


「二人とも何を怯えておる。ここは喜ぶところじゃぞ?」


 二人のソルジャーにそう言ったエイガルは、マーセリアを見た。


「責任重大ということは、儂らの活躍が軍に認められた証。……そう考えていいんじゃな?」


「仰る通りです」


 こちらがタイタンの手がかりを見つけたことを、帝国は察しているかもしれない。つまりこれは急を要する任務だ。都合よく動ける部隊が特機隊だけだった可能性も大いにあるが、それでも少し前ならこの采配はなかっただろう。ギュスター大佐の働きかけもある気がする。


「この作戦が成功すれば、特機武装隊は軍全体から信頼を注がれるでしょう。そうなれば、いよいよ装備の普及も始められるかもしれません」


「装備の普及か。……一個中隊の歩兵がスラスター・シューズで移動している景色は、さぞ壮観じゃろうなぁ」


「その未来をなんとしても手繰り寄せます」


 ふふふ、とマーセリアの瞳が怪しく光る。

 全兵士カスタム計画の始まりは近い。


「私たちが日の目を見る機会……」


「……一層、活躍してみせます」


 気後れしていたアリエとドーズも、前のめりなエイガルとマーセリアを見て、やる気を漲らせた。


 ここ最近、特機武装隊の活躍は目覚ましい。二人ともそれなりに自信を身につけたのだろう。士気の上がった二人は、歴戦の猛者の如き貫禄を醸し出していた。


「敵もそろそろエイガル様の復帰に気づいていそうですから、今回はそれを逆手に取ります。エイガル様が現役だった頃は、常に最前線でご活躍していたようなので……」


「敢えて儂を主戦場から離すことで、儂を警戒している連中に肩透かしを食らわせる寸法か」


 目立ち、警戒させたところで、敢えて潜む。

 いい使い方をしてくれるな、とエイガルは思った。自身を上手く運用されることは、兵士にとっての誉れだ。


「作戦の概要は以上となります。……本作戦のために新装備を幾つか解禁する予定です。各自、四日後までに武装訓練を終わらせてください」


「承知した」


 エイガルは清々しい気持ちで首を縦に振る。

 すぐにアリエとドーズも深く頷いた。


(若いのぅ……)


 エイガルは上機嫌に髭を撫でながら、王国の未来たちを見つめる。彼らの向上心を近くで感じていると、かつて己の中でも同じものが燃えていたことを思い出せた。


 失敗が許されない作戦まで、あと四日。

 エイガルたちは、並々ならぬ熱量で戦いに備える――。



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