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カスタムじじい  作者: サケ/坂石遊作
オーパーツ
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オーパーツ


 作戦終了後、エイガルたちは再び王都に戻ってきた。

 メカニックたちが研究室で装備開発に勤しむ中、エイガルたちソルジャーは訓練室で装備の使い勝手について意見を交わす。


「バブル・ショットは、決め手に欠けるのぉ」


 ガン装備であるバブル・ショットを試し撃ちしながら、エイガルは意見を述べる。泡状の弾がぷくぷくと生まれ、前方の壁に当たって破裂した。


「代わりに、戦闘そのものを引き延ばすことには向いていますね。泡を展開して盾代わりにもできます」


「ああ、やっておったのぉ。……敢えて視認させる地雷か、牽制には向いておるな」


 ただし、泡が周囲を漂っている間は、自分も身動きできない。そういう意味でも決め手に欠けている武器……というのがエイガルの評価だ。

 この武器は単体では輝きにくい。決め手を持つ味方が必要だ。


「エイガル、フォートレスを貸してください」


 アリエがエイガルに近づいて言う。

 アリエは既にコングスーツを装備していた。やる気に満ち溢れているのは認めるが……。


「お主の背丈じゃと、コングスーツを装備しても使いにくいと思うぞ?」


「……それを決めるのは私です」


 まあ、それはそうだ。

 エイガルはコングスーツを起動し、フォートレスをそっとアリエに手渡した。


「く……っ!!」


 アリエはフォートレスを持ち上げられず、すぐ床に下ろした。前傾姿勢のまましばらく硬直したアリエは、やがて気合と共にフォートレスを持ち上げようとするが、ビクともしない。

 静かに、アリエは諦念の息を吐く。


「……まあ、薄々分かっていました」


 アリエは思ったよりも悔しくなさそうだった。


 多分……戦っているのだろう。これまでのコンプレックスと。

 非力な自分を克服することが、アリエにとっての戦いだった。しかしエイガルとの出会いが、彼女に新たな可能性を与えた。


 決心の付け所を探している。

 そのように見えた。


「色々使ってみたが、やはり儂のイチオシはストーム・バスターじゃのう。今回の作戦でも使いたかったんじゃが……」


「エイガル様が無茶な使い方をしなければ、今回も使えましたよ?」


 いつの間にか背後に立っていたマーセリアから、淡々とした口調で言われる。

 エイガルは冷や汗を垂らしながら振り返った。


「……怒っとるか?」


「ご想像にお任せします」


 怒っとる……。

 エイガルは申し訳なさそうな表情を浮かべた。


 ストーム・バスターはガン装備だ。近距離での運用は想定されていない。

 だがエイガルはこれをゼロ距離で使用した。その分の反動が、ストーム・バスターの砲身を傷つけてしまったらしい。


「すまん……反省しておる」


「……構いません。私にも反省すべき点はあります。エイガル様の個性より、埃を被っていた浪漫兵器のテストを優先してしまいました」


 もうはっきりと言ったな、浪漫兵器と。

 この王女、もしかして浪漫しか考えてないのではないか……?

 三人のソルジャーの心情が一致する。


「ストームシリーズのクロス装備は七割がた完成しています。次の作戦には間に合わせますから、ご期待ください」


「うむ、楽しみにしておる」


 じじいと少女が微笑み合う。

 その時、廊下の方からドタドタと騒がしい足音が聞こえた。


「なんじゃ?」


 エイガルが首を傾げていると、メカニックたちが慌てて訓練室にやって来た。日頃からキュイーーン!! ドガガガガ!! ブォォォ~~ン!! などなど、喧しい音を立てている彼らだが、当人たちが走っている姿を見るのは珍しい。


「殿下!!」


「ここでは主任と呼びなさい」


「す、すみません、主任!!」


 思ったよりも部下には厳しいマーセリアだった。

 そのくらい厳しくしなければ、王族に対する色眼鏡を壊せなかったのだろう。決して無意味な厳しさではない。


「何がありました?」


「そ、それがですね!! 遂に出たんですよ!!」


 メカニックが興奮した様子で伝える。


「タイタンが!!」




 ◆




「オーパーツ?」


「平たく言えば、古代の遺物です」


 駆けつけたメカニックたちには、いったん一人を残して退出してもらった。

 詳細を聞きたがったエイガルに、マーセリアが説明を始める。


「発端は今から三十二年前、大陸西部で発掘された巨大な像です。それは人間の腕のような形をしていて……」


「ちょい待て。三十二年前となると、儂が現役だった勇者と魔王の時代じゃな。しかし儂はそんな話を耳にしたことないぞ」


 これでも現役の頃は、国の中枢と少なからず関わった身である。山ほどの武功を立てたエイガルは、度々お偉方に招待された。


「秘匿されていました。オーパーツは、その性質ゆえに新たな争いを生みかねませんから。……もっとも、既に争っている今となっては秘匿も無意味です」


 情報は解禁されつつあるらしい。

 だからこうしてマーセリアは説明している。


「大陸西部で発見されたのは、巨大な腕の像でした。当初はただの石像だと判断されましたが、研究の末、その腕は動くことが明らかになりました」


「動く……?」


「エネルギーを通す回路が内部に組み込まれていたのです。更にその回路には、他のユニットと接続していた痕跡もありました。……恐らく、接続先は胴体ユニット。となれば、足や頭もあるはず……」


 腕があり、胴体があり、足があり、頭がある。

 ならそれは……。


「つまりそれは、巨人型の兵器でした。私たちはこれをタイタンと呼んでいます」


 オーパーツ。古代の遺物。

 巨人型の兵器。タイタン。

 エイガルの知らないところで、それらは密かに胎動していた。


「タイタンは全部で四機あると予想されています」


「その根拠は?」


「二十二年前、共和国で胴体ユニットが発見された際、一瞬だけタイタンが起動しました。その時、他のタイタンの情報が三つ表示されたそうです。もっとも、位置は不明でしたし、他の三機が今も稼働する保証はどこにもありませんが……」


 マーセリアの表情が険しくなる。


「帝国が、そのうちの一機を入手しました。丁度、二十年前のことです」


「……なんと」


 魔王が討伐され、あらゆる国の人々が歓喜していた間に、帝国は出し抜いたというのか。


 ウルゼイルの形相を思い出す。

 この憤怒を何百回と経験すれば、誰でもああなってしまうだろう。


「一度だけ、帝国にタイタンを実戦投入されたことがあります。タイタンの存在は一部の者しか知らないため、表向きは帝国の新兵器とされていますが……」


 マーセリアは悔しそうに語った。


「……あれは、現代の技術力では決して再現できない、極めて高度な殺戮兵器です」


 あのマーセリアがそこまで評価したことに、エイガルは絶句した。

 ウルゼイルが言うには、マーセリアは唯一無二の天才技術者である。そんな彼女が再現不可と言うなら、他の者たちには理解すらできない夢幻だろう。


 再現できないなら、実物を手に入れるしかない。

 他国の技術者たちもそう思ったはずだ。


「秘匿されていた理由は、奪い合いを避けるためか」


「はい。タイタンを手にすれば、大陸の支配者になることも可能でしょう」


 そこまで脅威的か――。

 だが、それならそれで疑問が生まれる。


「つまり考えるべきは、何故、儂ら王国がまだ無事なのかという点じゃな」


「そうなります」


 話が早くて助かると言わんばかりに、マーセリアは深く頷いた。


「帝国がタイタンを実戦投入したのは一度きりです。恐らく、実用するには乗り越えねばならない壁が幾つかあるのでしょう。それがある限り、私たちにもまだ猶予があります」


「ふぅむ……もうちょい事例があれば予想も立てやすいんじゃがな。タイタンを動かせたのは帝国だけなのか?」


「もう一件だけタイタンの目撃情報はあります。しかしそちらは情報が少なく、調査しても手がかりは得られませんでした。……目撃者によると、付近に大量の魔獣がいたそうですが、関係は不明です」


「魔獣か……」


 大量の魔獣……もしや、統率されているのか?

 だとしたら全滅したとされている魔族の生き残りがいたことを証明する情報だが、それ含めて手がかりはナシなのだろう。


 謎が呼んだ謎までは、今は処理しきれない。

 エイガルは両隣にいるアリエとドーズをそれぞれ一瞥した。


「お主らも、初めて聞く話じゃったのか?」


「……はい。正直、まだ理解が追いついていませんが」


「……普通に会話できてるエイガルが異常です」


 二人のソルジャーが、深刻な面持ちで言う。

 時代の激動に何度か揉まれたことのあるエイガルは、今回の話を聞いて、驚きこそすれど動揺は少なかった。なにせ魔王誕生から戦争終結までをこの目で見ているのだ。伊達に長生きしていない。


「それで、タイタンがいたとはどういうことですか?」


「は、はい!!」


 マーセリアが、待たせていたメカニックの部下に尋ねる。

 ようやく話が本題に入った。


「正確には、タイタンの足跡が見つかりました」



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