高校入学式 2
みんなトイレに行ったら、大ホールみたいな建物に案内された。
なんて言ったらいいんだろう?とにかく大きくて広くて劇場みたいで、備え付けの椅子がある。2階席や3階席もあって、ただただ圧倒される。場違いな場所に来ちゃったんじゃないかって。
椅子も座り心地がいいし、どれだけお金がかかってるのか怖いくらいだ。
ぽそっ「誠くん、なんか凄いね」
ぽそっ「うん、高校って凄いね」
女子生徒がどんどんと入って来て椅子を埋めていくけれど、私達男子の周りにはガードウーマン達が固めてて女子生徒が近づけないようになっている。男性が貴重なのは分かるけど凄い警戒だな。
誠くんの顔色が悪くなってきた。
「誠くん、大丈夫?気分悪い?」
「女性の匂いに酔っちゃっただけだよ。まだ大丈夫」
女性の匂い?そんなのするかな?ここはいい匂いだけど。誠くんは繊細なんだな。いや、一緒に来た他の男子4人も表情が固い。緊張してるのかな?
しばらくすると空席がほとんどなくなって、2年生や3年生も出席している。3階席には保護者がいるようだ。
空調が強くなったように感じたら、舞台に次々と先生や役員だろう人達が上がって挨拶をする。
なんだか、堅苦しくるしくて退屈だ。ボーっと舞台を見て挨拶を聞いていると眠くなってくる。ふぁっとあくびが出た。
誠くんは体調が悪いのか、寝ているのか目を閉じている。私も寝たい。
1時間ほどしたら入学式が終わって、クラスまで移動だそうだ。ガードウーマンに「1番最後に出ます」と言われたので、ゆっくりする。
その間に誠くんを起こす。寝ていたみたいだ。繊細なのか大胆なのかよくわからない子だ。
女性が全員外に出たら、ガードウーマンと男子生徒が動きだす。2年生と3年生もだ。
誘導されて校舎の中に入る。うわー、金がかかってるって感じ。綺麗に清掃されていて、色褪せなんか無い近代的な内装だ。
階段を上がって2階に行き、2年生3年生と別れるが、彼等も2階にクラスがあるようだ。なんか不思議。
教室に入ると、雑談していた女子生徒がぴたりと話すのをやめて、姿勢を正してこちらを見てくる。凄い連帯感だな。男子がそれだけ珍しいのだろう。これくらいなら、さくら時代にも注目された事があるので慣れっこだ。
あれ?男子達が視線を避けるように歩いてる。なんじゃこら。あ、私の影に隠れるな!
窓ぎわの1列目と2列目に3人ずつ分かれて座る。一列目が人気だな。2列目だと女子が近くにいるからか?
ガードウーマンは私達を送り届けると、廊下に出て行った。窓に影が見えるから入り口に待機しているようだ。あの人達、学校が雇ってるのかな?
「誠くん、大丈夫?」
「うん、よくなってきたよ」
「誠って呼び捨てにしてもいい?なんかくんをつけるのが面倒くさくなってきた」
「いいよ。じゃあ僕も悠真って呼ぶね」
「いいよ」
それにしてもクラスがシンとしてる。誰も無駄口叩かんな。居心地が悪い。
「はーい、みんな揃ってる?大丈夫ね?自己紹介するよー。担任の峯川静子です。一年よろしく。何かあったら相談してねー。1番端の女子から自己紹介していってちょうだい」
先生が来たらいきなり賑やかになった。中年の先生だ。50歳ぐらいかな?ベテラン教師って感じがする。
女子の自己紹介を身体を捻って確認する。おい、男子。前向いてないでクラスの女子を見ろよ!なんか積極性が無いな。
それにしても、女子の顔面偏差値が高い!顔が整っている子しかいない。この世界ってそうなの?
悠真は勘違いしているが、男女共学校のこの学校は受験の成績と面接で合格者が決まっている。男子は無試験で入学出来るが、女子は約86倍もの難関を潜り抜けて来た猛者達だ。すなわち凄く品行方正で頭が良い。男子と同じクラスの女子はその中でもトップから順に決められている。テスト100点満点なんて朝飯前だ。ただ、男子と一緒にいたいが為に。勉強も自分磨きも頑張っちゃう心に肉食獣を飼うスーパー女子の集まりなのだ。ついでに言うと、近所に家が無い場合は寮があるのでそこに入居している。
それを知らずに悠真の自己紹介になる。悠真は立ち上がって話した。
「青葉悠真です。中学の時に記憶障害になっているので、一般常識も勉強も危ういですが、おかしな所があれば教えてくれると嬉しいな。しばらくは制服が無いので保健室登校になりますが、よろしくお願いします」
悠真が自己紹介をすると、クラスが騒ついた。悠真は身長が高くイケメンだ。普段着だけで目立っているのに「おかしな所があれば教えてくれ」と「よろしくお願いします」と積極的だ。女子の目がぎらつく。「これはいけるんじゃないか?」と希望を持ってしまったのだ。
他の男子は名前を言うだけで席に座ってしまう。消極的なのだ。その中で悠真は目立っていた。
「はーい、自己紹介終わりましたね。仲良くするように。自分が不快な事を相手にしないようにね!
男子は何かあったら、警護員か先生に相談するように!」
それから簡単な授業日程や準備、年間イベントや部活動の紹介などがあった。
悠真は部活動に入りたくてソワソワしている。男の身体は女の身体より動く。身体能力を確かめたくてしかたがないのだ。
だが、それは今日じゃない。今日は待っているだろう母親と合流する必要がある。
ガードウーマン・警護員達に守られて、真っ先に教室を男子達が後にする。それをじーっと眺める女子達。名残惜しそうだ。
悠真は教室を出て、男子には自由が無いなとちょっと窮屈な思いをしていた。この世界で生きるには慣れないといけないのだろうけど。
広い敷地を歩いて、朝、バスが止まった辺りまで行くと母親を見つけた。他にも保護者達がいるようだ。
「ママ!」
1人の男子が保護者の中につっこんでいった。他の男子達の保護者か。さっきの子マザコンそうだな。
「ゆうちゃん大丈夫だった?」
「大丈夫だよ。入学式がちょっと退屈だっただけで」
「ならいいけど。一緒に写真を撮りましょう?」
「いいよ」
いつもよりおめかしした母さんと一緒に警護員さんに写真を撮ってもらった。サービスいいな。
帰りは母親が乗って来た自家用車に乗って家まで帰った。
女の子と交流が出来なかったなぁ。残念。
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