第95話 女神を守りきれ - 5人 vs 10万のモンスター -
アルラトゥ曰く、あのモンスターは分裂の『失敗作』だという。実験をしすぎた結果、あの膨大な数を抱える羽目にはなったが、こうして僕として利用することにしたようだ。
なんてヤツだ……!
もう悠長に語り合っている暇はない。
周囲には『10万』ものモンスター。完全に取り囲まれている。
――いや、アレがモンスターなのかさえ分からない。
そんな物体を相手にしなければならない。
「くっそ……いくらなんでも多すぎる!!」
敵の数が多すぎるが、こんなところで諦めるワケにはいかない。
「俺は【オートスキル】で全ての敵を迎撃する……! が……多分、あの数だからいくつかは突破してくるだろう。フォル、ベル、リース……頼むぞ」
みんなは黙って頷いた。
やるしかない……。
かなり絶望的な状況ではあるけれど、それでも俺は……
絶対に諦めない……!!
「全部倒してやらああああああああああ!!」
全ての敵――『10万』のモンスターが雪崩となって流れてくる。
それに反応して【オートスキル】が発動し、こちらへやってくるモンスターを一匹漏らさず倒していった。
「よし……。なんとか食い止められているぞ。これなら……」
次々に爆ぜては塵となって消えゆくモンスター。
そんな攻防を無限かのように繰り返した。
くそっ、次から次へとモンスターはやってきやがる。
「この黒い塊……! あと何万体いるんだ……!」
「兄様! わたくしも!」
「ああ、頼む。同時に発動しすぎて、そろそろ俺の【オートスキル】でも限界だ……!」
「はいっ! 背後はお任せください!」
この数だ、さすがに限界がある。
後ろはフォルに任せるしかない。
『秘奥義!! 覇王轟翔波――――――!!』
背後で『秘奥義』が放たれた。
その聖なる光を帯びた波動が敵を一瞬で蹴散らし、蒸発させていく。
おかげで、かなりの数を減らしていったが……!
やはり、数が多すぎる。
最初こそフォルは余裕を見せたが……あのスキルは『秘奥義』だけあり、SPを超大量に消費するスキル。いつまでも発動しておけない。そのせいか、フォルの表情は苦痛に歪む。
「くっ……。もう限界が……! SPが尽きそうです……」
「任せて!」
メサイアが唐突にスキルを発動した。
『エリニュス!!』
それがフォルに向けられた。アレは……?
「このスキルは、SPを他人に分け与えることができるの。今、私が出来る事といえばこれくらいだから……遠慮なく全部使って!」
「姉様……ありがとうございます!! これで、秘奥義をもう暫く維持できます!!」
へえ……!
メサイアのヤツ、今まで一度も使用したことがなかった新スキルを使ったのか。そんな便利な効果だったとはな!
メサイアが『エリニュス』で自身の『全SP』をフォルに全て託すと、火力を徐々に失っていた『覇王轟翔波』が再び猛烈なパワーを放ち、モンスターを撃破していった。
「よし!! ナイスだ、フォルとメサイア!」
「メサイアさん、フォルちゃん凄い連携プレーです!」
「おぉ、SP譲渡スキルとはね。シア……グッジョブ!」
リース、ベルも俺と同じように驚嘆していた。
「その間、私はSP回復に努めるわ。また必要なら言って」
「はいっ!」
メサイアはSP回復に、フォルは戦闘へ戻った。
「これならいける……いけるぞ! 10万のモンスターを倒せる!」
やっと半分だろうか。
あとざっと『5万ほど』……半分を倒せたんだ。いけるだろ!!
「理くん。そろそろわたしも攻撃態勢に入る。フォルちゃんが限界だ」
「……そうだな。よし、ベル交代してくれ。フォルは、メサイアを守るんだ」
「わ、分かりました……兄様」
フォルはSPを使い果たし、体力も無くなったようだ。
息が荒い……まずいな。
「それじゃ、わたしも本気で行かなきゃね」
ベルはボキボキと指を鳴らし、ウォーミングアップすると……
「じゃ――最初から全力全開でいくよ!!
っりゃああああ――『ホーリーシールド』、『グレイスシールド』、『ロイヤルシールド』、『エレメントシールド』、『ヴィーナスシールド』、『ルーンシールド』、『エグゼキューションシールド』、『オーディンシールド』、『アポカリプスシールド』、『グロムシールド』、『グノーシスシールド』、『ヒーリングシールド』、『ネメシスシールド』、『アークシールド』ぉぉぉ!!!」
ベルもまた、ほぼ全てのスキルを発動――モンスター共に、鬼の鉄槌を下した。
途方もない力がモンスターを消滅させていた。それどころか、大地さえも破壊し、地面を真っ二つに割った。
なんちゅー威力だ……!
モンスターのいた場所に大きな地割れが発生し、その中に大半を落とした。
「す、すげえなオイ」
「それほどでも。ていうか、最初からこうすればよかったね」
あはは~と冷静に笑うベル。
いや、普通『盾』で大地が割れるとは思わん……。
しかし助かった。
あのシールドスキルの数々、その猛威。地割れによりモンスターの半数が死滅した。残りはもう10000ほど。埋め尽くされて見えなかった『アルラトゥ』の姿も遠くに見えている。
「あと少し……この10000体を倒せば終わりだ」
「うん……。ところで、理くん。こんな時だからこそ……聞いて欲しいんだ」
「どうした? 俺は【オートスキル】の調整で忙しんだ。手短に頼むぞ」
「手は煩わせないよ」
と、ベルが近づいて来るなり、背中がピタっとくっついた。
背と背がくっついている。
「そのまま聞いて」
「お、おう……」
「わたしの本当の名前は――」
まじか……。
なんて綺麗で、耳心地の良い名前なんだろう。
俺はその名前を聞かされ、やっと思い出した。
「そっか、でも、ありがとう。でもその苗字は珍しいな……。俺と結婚したら『彼岸花』になっちまうけど」
「そっちの方がカッコいいよ。だってほら、ヒガンバナって『転生』とか『再会』、『思うはあなた一人』なんて素敵な花言葉があるんだよ。わたしのハーデンベルギアもね、『過去の愛』とか『奇跡的な再会』なんて意味があるんだ。だから、きっとキミとの再会は運命だったんだ」
意外なことに、彼女の本名もそれと同等の意味だから驚いた。
「それじゃ、これが終わったら結婚すっか」
「うん、いいよ」
そんなアッサリと!
ていうか、そろそろ話している場合じゃない。
「その話はまた今度だ! 残りの敵が攻めてくるぞ!!」
「そうだ。そうだったね……! こっちは任せて! 旦那様!」
「ちょ……!」
ベルは戦闘に戻った。
く~~…不意を突かれたなぁ。
けど、あと少しだ! あとちょっとで全て倒せる!
敵の数はどんどん減少している。
完全撃破も目前――いける! いけるぞ!
1000、500、100と確実に数を減らしていた。
最後だ……!
「これで、終わりだあああああああああああああああ!!!」
残りはダブル『聖槍』を投げ飛ばし、複数の敵をまとめて貫き、排除した。
「…………」
……終わった。
アルラトゥ以外の殲滅を完了した。
「…………はぁ、はぁ……」
さすがに息が上がった。
俺だけじゃない。
珍しくベルすらも、疲れが顔に滲み出ている。
「いや~~…さすがに10万体のモンスター相手は汗くらいは掻いちゃうね」
汗を垂らすベル。息もそこそこ乱れている。
「あ……あぁ、だけどこれで残るはアルラトゥだけだ」
「そうだね……あとはヤツさせ倒せれば……」
体力は何とか残っている。
ギリギリかもしれないが、その限界さえも超える勢いで、俺は何としてでもアルラトゥを……!
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