第61話 神器 - 最強の装備・ファントム -
凶悪なレイドボスだった魔王は、今度こそ確実に倒した。その確信を得るのには、そう時間は掛からなかった。
何故なら――
「よくやりましたね、サトル殿。魔王は完全消滅しましたよ」
神王のお墨付きだったからだ。
「まじか」
さすがに、あんなド派手に戦闘していりゃー、気づくわな。
「それと、ご依頼の『ファントム』も完成しております。こちらです。――ちなみに、この『ファントム』の効果ですが……」
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アクセサリー:【ファントム】 DEF:0
効果:HP + 10% SP + 10%
装備者は任意で [インビジブル] 状態になれる。
レイドボスを含む全てのモンスター/ 種族から姿を隠せる。
スキル [サーモグラフィー] で捉えることは絶対に出来ない。
物理・魔法攻撃可能。ただし、SP消費量 + 25%アップする。
装備解除時、HP及びSPを50%消費する。
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神王……いや、今は鍛冶屋か――によれば、そんな効果らしい。ふむふむ…………
ふむッ!?
「え……『インビジブル』って、透明人間ってヤツですか!?」
「はい、その通りです。これは神器にも等しいアクセサリーアイテム。いや、もう『神器』といっても過言ではないでしょう。これは、その昔は『光学迷彩』とも呼ばれていたようですね」
「こ、光学迷彩……SFかよ。あー、それであの『ファントムドラゴン』ちょっとサイボーグ化されてたんだ? 知らんけど」
俺は完成した『ファントム』を受けとった。
形は、ただのシリコンバンド的な感じで、腕に通せばイイらしい。これなら、邪魔にならないな。快適。
「どれどれっと……ん? 変わらないな」
「サトル殿、バンドをタップするのですよ」
「ああ、タップね」
すると、
俺の姿が…………自分じゃ分からん。
「こちら、鏡です」
気が利く神王様だ。
へえ! 本当に消えてらあ。こりゃスゴイ!
俺の姿が何も見えない。
――ん、まてよ。
これを利用すれば……『風呂も覗き放題』では!?
確か、魔王とエンカウントする前、メサイア達は『温泉』へ行くとか何とか言っていた。だから、まだそのつもりはあるはずだ。
し・か・も!!
しかもだ、
温泉は『混浴』とも言っていた。
大切な事なのでもう一度言う!!
『混浴』だ!!
「神王様、ありがとう。これで俺は更に最強になった……! とりあえず、風呂……って、あれ『混浴』だし、覗く意味ないな……。あ、そうか。メサイアたち以外に使えばいいのか!」
「いえいえ、夜は混浴ではなくなりますので、意味は大いにありますよ」
「おお! なるほど! って、夜は『混浴』じゃないんですね」
「はい、あの温泉――銭湯『バーバ・ヤーガ』は、昼は混浴、夜は女性限定なのです。というか、基本的に女性限定ですけれどね。混浴は月一のイベントだったのですよ」
!!
そんな貴重なイベントを逃したのか俺!
しかも、女性限定……だと。楽園か!!
「ありがとう、神王様。助かりました。俺はちょっとメサイア達を温泉へ行かせて、そう、俺はちょっと野暮用で都の平和を守ってきます。あー、ほら、魔王軍の残党とかいるかもしれないですしね」
「いえいえ、こちらこそ礼を言いたい。魔王討伐で花の都の平和は保たれたのですからね。幸い、被害も少なかった。建物の修理は私がしますのでお任せを。
ふむ――そうですか、それでは残党狩りを……女体をお楽しみ下さい」
最後なにかボソッと聞こえた気がするが。
うん、気のせいだ!!
◆
【 銭湯 - バーバ・ヤーガ 】
広大な都の中心部『シンビジウム』にその温泉はあった。
「へえ、ここが『バーバ・ヤーガ』! 大きな銭湯ね。でも、サトル。もう混浴は無理みたいね。あれってイベント限定だったみたい。あんたはどうするの?」
「あー、俺の事は気にすんな。魔王の残党がいないかパトロールしているさ。神王にも頼まれているしよ。みんなで楽しんでこいよ」
「え~! サトルさんも一緒に行きましょうよ~」
「そうですよ、兄様ぁ~」
リースとフォルが俺の腕を引っ張る。
無理だっつーの!!
尚、混浴が決して許されない『男子禁制状態』のこの今、男が銭湯に侵入しようとすると、番台の魔女婆さんが悪鬼羅刹の如し形相で襲い掛かってくるらしく、剥かれて、色んな意味で食べられちゃうんだとか。
想像しただけで恐ろしい。がくぶる……!
「理くん。わたしが一緒に残ろうか? 温泉なら、都の外にある穴場を知っているんだ。一緒に入ってあげるよ」
――と、ベルが尻尾で俺の腰辺りを突いてくる。
「ばっ……!」
「従妹なんだし、いいよ?」
「そーゆー問題か! 年頃の娘さんと入る趣味は……入りたい」
「あはは。ごめん、からかっちゃった。また今度ね」
「今度ならいいのかよ。そうか、期待しておくよ。アグニとスイカは?」
「うん、アタシらもお邪魔するよー」
「ドラゴンも魔王も倒して、残すは死女神だけですから、その前に英気を養わないと、です」
よし。
アグニもスイカも温泉に入る、っと。
「死神三人衆は?」
「オルクス、プルート、モルスは、神王様に挨拶したいからって」
「ああ、そうなのか、メサイア」
姿が見えないと思ったら、行っちゃったのね。
残念だが、仕方ない。
「よし、じゃ、みんな! ちゃんとゆっくり湯に浸かるんだぞ。いいな! 一時間と言わず、三時間くらいいなさい。俺との約束だぞ!!」
「「「「「「はーーーーーーい!!」」」」」」
みんな素直に返事をしてくれる。
みんなええ娘たち~……。
さあ、
さあ……!
風呂覗きのはじまりだ!!!!!!
◆
当面の間は時間を潰すため、一応、念のために魔王軍の残党がいないか、裏路地や別の怪しい通りや、商店街などを回った。
歩いていると【ペトルス】が勝手に発動『火による試練』が現れては【聖槍・アンティオキア】が射出され、魔王軍の残党を一掃した。
そこに現れるのは『幻影』とかいう、影モンスターばかり。おかげで手応えこそないが、そいつらを確実に仕留めてはいた。
「ふむ……」
意外や、この都には魔王軍が侵入していたようだ。
いや……
これは本当に魔王軍なのか?
この無機質な感じ。虚無しかない中身のない空っぽなモンスター。これは本当に魔王軍なのだろうか。
俺は思う、これは残党ではなく、
もしかすると……
『冥界の死女神・アルラトゥ』の仕業ではないか――と。
まさかな?
ま、そんなことより……カーニバルじゃぁぁぁあああああ!!
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