第59話 聖女の究極奥義 - 覇王龍星拳 -
ホテルの手前でそれは起きた。
フォルの足が止まるや、俺も異常な気配を感じとった。もう、寝てるフリをしている場合じゃなさそうだな、この気配――
レイドボス発見
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「こんなところに……レイドボス。おい、フォル、俺の後ろにいろ」
「……あ、兄様、動けたのですか!?」
「あたりまえだろ。倒れたのはワザとだ! ちょっと期待してたんだ。すまんな」
「そ、そんなぁ……でも安心しました。アレをひとりで相手は、ちょっと厳しいかもでしたから」
「だろうな。おい、出て来いよレイドボス……いや――『魔王・ゾルタクスゼイアン』さんよ」
闇からソイツは顔を出した。
こんなところに現れるだなんてな、予想外すぎるぜ。
「久しいな、サトル」
「あんたそれ、本物か?」
以前は『影』とかいって、ニセモノだった。今度も偽物だろうか。
「ああ、今回は本物さ。ここにいる私は、本物の魔王・ゾルタクスゼイアンで相違いない。なぜ現れたか、それはだな――」
「面倒だが……さっそくぶちのめしてやらァ!!」
理由なんて聞いてやるか!!
俺は【ダークニトロ】を両腕に付与して、そのまま突進した。
「やれやれ。話を聞かんヤツは嫌いだ。ダークインセプション!!」
なっ……!
赤い闇……!?
魔王の放った闇は赤かった。どういう事だ!?
「兄様、肩をお借りします!!」
フォルが俺の肩に足をかけると、バネとなって飛んだ。
(気のせいか、縞パンが見えたような!)
そこから奥義を――いや、新奥義か!
「究・極・奥・義! 覇王龍星拳――――ッ!!」
ズドドドドドドドドドドド~~~~~~~~~~~ン!!!
って、究極奥義ィ!?
遥か上空彼方から『星』が落ちまくった。その流星は、魔王目掛けて全て命中し、ヤツは『赤い闇』で防御が精一杯な様子。
まったく止まる気配のない流星。
おいおい……むちゃくちゃだな。
だが、魔王が怯んだ! チャンスだ!!
「隙あり!! 今度こそ葬ってやる!! 【ダークニトロ】を再付与し、パニッシャートライデント乱れ撃ち!!」
俺は、槍を投げて投げまくった。
フォルと同様に止むことのない攻撃を続けまくる。
「おらおらおらおら、っらぁぁぁぁあああああああ!!」
「ぐぅ、おのれぇ……! こうなったら已むを得ん……不本意ながら、自爆するしかないようだな……! この花の都を道連れにしてな!!!」
「て、てめぇ!! そんなセコイ真似を!!」
「なんとでも言え!! 何故なら私は魔王だからな!! いくぞ……『3』、『2』、『1』…………」
「させるかぁぁぁぁぁあぁああぁああああああああああ!!!!!!」
魔王が自爆する前に、ヤツの足元に『ラヴァトラップLv.MAX』を発動した。
ドロドロの【熔岩】がヤツの足元に設置されるや――
ドッボ~~~~ン!
魔王がグツグツと煮え滾る【熔岩】に落ち、断末魔を上げることもなく沈んでいった。
「勝った……今度こそ勝ったぞ」
通常、あの程度で倒せる相手ではないが、フォルがヤツのHPを大幅に削っていてくれていたこと、足止めしてくれていたという条件が重なったおかげだ。まあ、やっぱりというか何というか……超ラッキーを発動してくれる『フォーチュン』が偉大すぎるな。
「よし、フォル。帰――――」
帰ろうとした時だった。
【熔岩】の中から、魔王が這い出てきやがった!!
「まさか!!」
「兄様、アレ! 魔王まだ生きてます!!」
チクショウ。
そう簡単にはくたばらねーか。
『おのおのおのれぇ……よくも!! ……まあいい、私の魂のストックはあと2つあるのだ』
そうか、ヤロウ!
だから平然と『自爆』だなんて!!
ヤツには『魂のストック』があったんだ。あの偽魔王でさえ。
「だったら、もう一度!!」
「二度も同じ手を食らうか!! このスキルを使うことになろうとはな……『ダークスピリチュアル』!!」
その『ダークスピリチュアル』から現れたのは【死神】だった。なんだ、あの三人。まるで操られているかのような……。
「まさか……!!」
「そうさ、コイツ等は『オルクス』『プルート』『モルス』。今は我が純朴な僕。我が操り人形というワケさ。この死神共は、メサイアの為にとっておこうと思ったのだがな、致し方あるまい……さあ、ゆけ! 我が力によって強化された……最強の死神達よ!!」
『オルクス』が【オーバードライブ】なるものを発動して、紫色のオーラを纏い始めた。それにより、死神全員の全ステータスを100%上昇させたようだ。なんつー…!!
「フォル、下がれ! 撤退だ! あの死神三人はヤバすぎる!!」
「は、はいっ!」
――が、死神の鎌を持った『オルクス』が既に俺の目の前に!!
「は、はええ……つーか、まずい!!」
「お任せください!! 【トランセンデンス】発動! エレメンタルフォース!!」
「アタシも加勢するよ!! 【トランセンデンス】発動! ボルケーノ!!」
何処からか、四色レーザーと憤激の塊が降ってきた。
「こ、これは……スイカとアグニか!」
『エレメンタルフォース』と『ボルケーノ』が死神達を飲み込み、逃がすまいとダメージを与え続けている。
「す、すごいな二人とも! ていうか、なんでココに!」
「久しぶり、サトル。ん、ああ~、ウチらもうドラゴンは倒しちゃったんだよね~。でさ、花の都に戻って来たんだけど、でも、スイカが魔王の気配を感じるじゃん? で、辿ってきたワケ」
「はい……とてもイヤな不穏分子の気配を感じました。もう片方、暖かなサトルさんの気配もあったから、もしかしたらと」
「そ、そか。俺はその辺り鈍いからな。つーか、ドラゴンをもう倒したのかよ!?」
「そ。あとで詳しく話すよ。ていうか、聖女様が!」
「んなに!? フォル!!」
フォルは奥義のフルコンボで『魔王』を撃っていた。
激しい、激しすぎる攻撃の嵐。
『覇王天翔拳!! 覇王爆砕拳!! 冥王風神拳!! 冥王雷神拳!! 覇王龍星拳――――ッ!!』
「アグニ、スイカ! 死神三人は任せたぞ!!」
「あいよ。あれくらいなら余裕さ」
「お任せください~。それと、サトルさん……聖者専用スキル【トランセンデンス】を取得された方がいいですよ。忘れていますよね。本当の『聖なる力』を行使できますよ」
――と、スイカが詳しく説明してくれる。
「……え?」
なにそれ……。
知らなかったああああああああああ!!
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