第561話 イカダでサバイバル! 目指せナーストレンド
女神スキルのホワイトが使えない以上、この即席イカダで過ごすしかない。
「こうなったらイカダを増築するわ」
「メサイア、そんな材料がまだ残っているのか?」
「うーん、結構ギリギリだけどね」
イカダの面積を増やす分と小屋くらいは作れる在庫があるようだ。そりゃいい。むしろ、十分すぎるほどだ。
建築はメサイアに任せた。
「メサイアさん、がんばって!」
「ありがとう、リース。じゃ、まずはイカダを広くするわ」
気合を入れ直すメサイアは、建築スキルを発動。すると、地面が“パァァ……”っと閃光を帯びていく。瞬間でイカダが増築され、十畳ほどのスペースを確保。
こりゃいい!
さっきまで二畳分あるかどうかのレベルだった。
俺含め、ギリギリの空間だったからな。
「おぉ! さすが姉様です! やはり、女神のスキルは万能ですねっ」
「褒めてくれて嬉しいわ」
照れながらもメサイアは、更に建築スキルで『小屋』を設置。結構狭いが、雨は凌げる。それに、思ったよりも広い。
「へえ、なかなか立派じゃないか」
「でもイカダだから速度は出ないわよ」
「オートスキルでも?」
「うん。たぶん」
一応、前進はするらしいが……時間は掛かる模様。こればかりは仕方ないか。なんとか生活ができるだけマシと思っておこう。
それからメサイアは更に椅子や机を追加。ソファまで設置してくれた。なかなかサービスがいいのだが――そこで木材が尽きたようだ。
「メサイアさん! あたし、本棚が欲しいです」
そう瞳を輝かせるリースだったが、メサイアは首を横に振った。そう、材料がないのだ。ここまでだ。
「ごめん、リース。もうアイテムがないわ」
「そんなー…」
こんな海では木材を集めるクエストもダンジョンもないしなぁ。流木じゃ、たかが知れている。というか、木が浮かんでもない。
「しかし、風呂もトイレもなしか……」
「さすがに不便すぎるわね」
さすがのメサイアも困っていた。
くそう、ホワイトの中の【花の邸宅】なら不便なく生活できるんだがなぁ……。爆発しちゃったんだから仕方ないけどさ。
「困りましたね、兄様。わたくし……せめてお風呂は入りたいです」
「それは俺も同じさ。って、フォル。トイレはいいのか?」
「えっ! 聖女はトイレいきませんからっ!」
嘘つけ!!
いや、まて……ちょっと既視感があるぞ、これ。気のせいかもしれないけど。
「あ、あの~、あたしもお風呂は欲しいです」
リースも手を挙げるのだが、木材がないんだよねぇ。
「メサイア、なんとかならないのか?」
「うーん。ソファを解体するしかないわね」
「なるほど、解体すれば木材に戻るのか」
「ええ。ちょっと惜しいけど削るしかないわ」
ソファは……無くても大丈夫だろう。別に困るものでもあるまい。
「じゃ、風呂を頼む」
「了解」
なんとかお風呂は作れるらしい。ギリギリ生活はできそうだが……って、トイレは!?
「な、なあ……リース」
「えっ」
「トイレ欲しいよな?」
「あ、あたしもトイレはいきませんよぉ!?」
顔を赤くして慌てるリース。
……君もそっちかよ。フォルと同類じゃねえかっ!
いやけどまぁ……女の子だからなぁ。デリケートな問題だよな、うん。
「一応聞いておくけど、掃除スキルにトイレ関係があるのかい?」
「実は……あるんです!」
と、妙に真剣な眼差しで耳打ちしてくるリース。天然ASMRに俺は背筋がゾクゾクした。……声が可愛すぎるぜ。
――って、そんな便利なスキルがあるのかよ。
もしかして、フォルやリースの言っていることは、あながちウソではないのか。
「じゃあ、排泄の必要がなくなるとか?」
「恥ずかしいですけど……その通りです。あたしやフォルちゃん、メサイアさんは使ってますよ」
「マジか。俺は知らなかったんだがっ」
「そ、それは……だって、ほら。言い辛いじゃないですか」
確かに。そういえば、トイレの頻度がまったくないなと思ったが、そういうことか! 俺はそこらでしてるのに……! そんなカラクリだったとは、今日一番に衝撃を受けた。 てか、それいいな。
俺も付与して欲しいわ。
「リース、俺にもそれを頼む」
「はい。食べたものは全部、魔力に変換されるんで便利ですよっ」
最高じゃねえか!!
リースの掃除スキルって実は、かなり凄いのでは。
【トイレキャンセラー】
【詳細】
食べたものはすべて魔力に変換される。
この効果により、トイレへ行く必要がなくなる。
このスキルは三日間有効である。
自分あるいは対象に付与できる。
「こんな超絶便利スキルがあったとはな」
「今まで黙っていてごめんなさい」
「いや、いいさ。おかげで助かったよ」
そうこうしている間にも『風呂』完成!
これで無事に生活可能になった。
「ふぅ。これでイカダ拠点の建築は完了よ」
「お疲れさん、メサイア。休んでくれ」
「うん。でも、まだまだ問題はあるわ」
「たとえば?」
「食料とか。あんまりないし」
「釣りでもするか。釣り竿くらいは作れるだろ?」
「それくらいなら可能よ。二本は生成できると思う」
少し余力があるらしい。よし、食料の確保が俺がする。
今はこのイカダ号でサバイバルしながらナーストレンドを目指すしかない。
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